TRAVEL あの町で。
建築やアートを巡る旅。石川・金沢で出合った23のスポット。中編July 22, 2026
情緒ある城下町として人気の高い金沢は、ぶらりと街歩きするだけで伝統的な町家からモダン建築、そして現代アートにまで出合える稀有な街でもある。そこで〝本を片手に建築とアートを巡る〞旅を、小さな不動産会社『ことのは不動産』を営む松本有未さんが案内。歴史ある街特有の奥深さへと誘う。&Premium152号(2026年8月号)「旅と、本と」より、旅の途中で出合った23のスポットを写真とともに紹介。
〝今〞を感じることのできる、唯一無二のスポットが点在。
『金沢21世紀美術館』や『鈴木大拙館』の開館に尽力した一人が、1990年から2010年まで金沢市長を務めた山出保だ。
「その経緯は彼の著書『金沢を歩く』にも詳しく書かれています。他にも暗渠になっていた用水の蓋を撤去して、水の流れやせせらぎの音を街なかに取り戻したのも彼の功績。そういった今の金沢を形作った、街づくりへの取り組みがわかる本なので、これを片手に散歩するのも楽しいのでは」
もう一つターニングポイントとなったのが、2015年の北陸新幹線の開通。それまで東京からは行きにくい街だったが、2時間30分ほどで訪れられるようになった。
「それにより、移住者や東京との二拠点で暮らす方も増えました。そういう方の店も含めて、個性的なショップやギャラリーが次々とオープン。しかも、どこも唯一無二の考え方や品揃えをしているので、そういった独立系の活動をしているところを巡ると、より〝今〞を感じられるはずです」
中心地から少し離れているが、丸窓が印象的な『金沢海みらい図書館』は、建築好きのみならず地元の人にも親しまれている場所。
「人口45万人に対して市立図書館が4つ、県立図書館が1つと、比較的、充実しています。その上、谷口吉郎さん、吉生さん設計の『金沢市立玉川図書館』(休館中)をはじめ、どこも建築的に見応えがあるんです」
建築としては、旧陸軍第九師団の兵器庫だった赤レンガの建物を改装した『石川県立歴史博物館』もお薦め。
「3棟あるのですが、補強の工法がそれぞれの棟ごとに異なるんです。内部に入ると、その違いがわかる場所もある。他ではあまり見られない建築ではないでしょうか」
そして、大正期の油問屋の建物を改装したのが、台湾料理店『四知堂kanazawa』。大きく手を加えることなく、もともとの良さを生かした内装になっているそう。
「床にこぼれた漆のあとがそのまま残っているなど、抜群に雰囲気がいいんです。朝のお粥やランチを食べによく行きます」
本屋も紹介しきれないほど充実。
「『書架の周辺』は古書ギャラリー。長年パリでルリユール作家をしていたオーナーの審美眼を通した古書と、書斎にあってほしい小物が置かれています。『IACK』は写真家である店主による、大手の流通にはのりにくい写真集を中心としたアートブックを集めたギャラリー併設の店。1970年竣工の山岸薬局ビルヂングに入っている小さな書店『if you』は店主の思想が反映された芯のあるセレクトが魅力的です。『6号室』では、いろいろな人が選書した本を手に取れます」
さらに、日常とアートの垣根を取り払っているのが、生活道具店の傍らにひっそりと佇む『Keijiban』だ。その名の通り、掲示板のように現代アートが展示され、24時間いつでも鑑賞することができる。15日ごとに作品が替わり、誰もが通りすがりにアートに触れられるスポットになっている。同じオーナーによるギャラリー『秋霖館』では、半年間一つの展示が続くので、じっくりと何度も観に行きたいという人を惹きつけている。
「多くの住人が、お茶やお花を嗜んでいるなど、ふとしたところに文化の奥深さを感じます。また、緑がたくさんあり、犀川を中心に水もほうぼうに流れている。街なのに自然が豊かで、体にフィットする感覚があって落ち着きます。たくさんの文化が凝縮しているので、知れば知るほど引き込まれ、何度訪れても新しい発見がある街だと思います」

加賀百万石と謳われた北陸の城下町。街の中心を挟むように犀川と浅野川が流れる。街なかの移動は頑張れば徒歩で回れ、路地を入ったところに個人店があるなど意外な出合いがあるので、ぜひ街歩きするのをお勧め。他に路線バスや主要観光地を循環する「城下まち金沢周遊バス」、レンタサイクルもあるので移動手段には事欠かない。2009年にユネスコ創造都市(クラフト部門)に認定。東京から北陸新幹線で約2時間30分。

松本有未『ことのは不動産』代表
石川県生まれ。金沢大学卒業後、出版社や金沢R不動産を経て、2014年『ことのは不動産』を設立。中古住宅や古い物件の魅力を丁寧に掘り起こし、それぞれの人に合う不動産仲介を行う他、空き家を地域に開くNPOを運営。
photo : Masanori Kaneshita illustration : naohiga edit & text : Wakako Miyake




















































































