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建築やアートを巡る旅。石川・金沢。前編July 22, 2026

情緒ある城下町として人気の高い金沢は、ぶらりと街歩きするだけで伝統的な町家からモダン建築、そして現代アートにまで出合える稀有な街でもある。そこで〝本を片手に建築とアートを巡る〞旅を、小さな不動産会社『ことのは不動産』を営む松本有未さんが案内。歴史ある街特有の奥深さへと誘う。&Premium152号(2026年8月号)「旅と、本と」より、「建築やアートを巡る旅。石川・金沢」を紹介します。

この記事は前編です。中編はこちらから。後編はこちらから。

建築やアートを巡る旅。石川・金沢。前編 金沢海みらい図書館 金沢市西部地区に2011年に開館した『金沢海みらい図書館』(金沢市寺中町イ1‒1)。設計したのは工藤和美+堀場弘/シーラカンスK&H。真っ白な壁に連なる3種類の大きさの丸窓が特徴的で、曇りの日でも天井高12mの吹き抜け空間に柔らかい光をもたらしている。約37万冊の蔵書のなかでも、北前船が往来していた日本海や、醤油をはじめとしたものづくりに関する資料が豊富に収集されている。金沢駅からバスで20分ほど。
金沢海みらい図書館 金沢市西部地区に2011年に開館した『金沢海みらい図書館』(金沢市寺中町イ1‒1)。設計したのは工藤和美+堀場弘/シーラカンスK&H。真っ白な壁に連なる3種類の大きさの丸窓が特徴的で、曇りの日でも天井高12mの吹き抜け空間に柔らかい光をもたらしている。約37万冊の蔵書のなかでも、北前船が往来していた日本海や、醤油をはじめとしたものづくりに関する資料が豊富に収集されている。金沢駅からバスで20分ほど。

4世紀半の歴史が織りなす、 文化が凝縮した城下町。

 文学、伝統工芸、現代アート、建築……。石川・金沢は、いくつものカルチャーが重なりあう、重層的な街である。なかでも特筆すべきは《ふるさとは遠きにありて思ふもの/そして悲しくうたふもの》(抄出「小景異情その二」『室生犀星詩集』より)と、室生犀星がうたい、徳田秋聲、泉鏡花といった、金沢をふるさととする近代文学の文豪らが眺め、愛した風景が、今も変わらずに残っているところ。その理由を、出版社を経て、今は不動産会社『ことのは不動産』を営む今回の旅の案内人である松本有未さんが教えてくれた。
「もっとも大きな理由は、第二次世界大戦の戦火にあわなかったことです。建物が焼けることなく、地形も江戸時代そのままに残っています。それが現代にまで繋がり、古いものと新しいものが層になっているのが一番の魅力ではないでしょうか。今回、飲食店にしろ書店にしろ、建築的にも見どころのあるスポットを案内させてもらいましたが、歩いて回れるくらいコンパクトな街なので、ただ散策しているだけでも面白いと思います」
 また、エリアによって少しずつ様相が異なるのも城下町ならではの特徴。中心部の東側にある尾張町は尾張商人が住んでいた地域で、金澤町家が多く残っていることで知られる。そこから北東に進んで浅野川を渡ると、ひがし茶屋街になる。かつての花街であり、建物の1階には木虫籠(きむすこ)と呼ばれる出格子が連なり、周辺は国の重要伝統的建造物群保存地区になっている。『ことのは不動産』のある大手町は、金沢城の大手門があったことが地名の由来。裁判所が近く、昔から弁護士や医師の住居が集まっていたことから、欧州帰りの知識人が建てた和洋折衷の洋館が並ぶ。
 ただ、こういった建物も住民の高齢化に伴い、だんだんと減少していっているのも事実。そういった空き家を活用して、藩政期に足軽の居住エリアだった菊川にある5軒の木造住宅を会場に、10組のアーティストが作品を展示する展覧会『消えつつ 生まれつつ あるところ』が、2024年秋に開催。そのカタログは『金沢21世紀美術館』のミュージアムショップでも購入可能。建物内部の写真も豊富で、市井の人々が営んでいた暮らしの痕跡とアートの共鳴が読み取れる。
 そして、金沢がアートの街と称されるきっかけとなったのが2004年にオープンした『金沢21世紀美術館』の存在だ。
「この美術館ができる前は、良くも悪くも地味というか、伝統工芸一色の街だった気がします。ここを目当てに若い人が県外からやってくるようになったし、現代アートのギャラリーも増えた印象。いろいろなメディアに取り上げられたことで、一度は都会に出た人が、金沢でも何かできそうだとUターンして新しいことを始める要因にもなっています。近くには仏教哲学者・鈴木大拙の世界観を伝える文化施設『鈴木大拙館』もあります。私は年間パスを持っていて、水鏡の庭を眺めながらぼうっとする、情報を抜きに行く場所にしています。この2つは定番なのであえてピックアップしませんでしたが、時間があればぜひ行ってみてください」
 円形平屋建ての『金沢21世紀美術館』の設計は、妹島和世と西沢立衛によるSANAAが担当。有料の展覧会ゾーンと誰もが無料で入れる交流ゾーンからなり、のんびり散歩する市民の姿も見られる。『鈴木大拙館』は金沢出身の建築家・谷口吉郎を父に持つ、谷口吉生が設計。3つの庭と、回廊で結ばれた展示空間、学習空間、思索空間の3つの空間で構成され、禅への思索を巡らすことができる。

 
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加賀百万石と謳われた北陸の城下町。街の中心を挟むように犀川と浅野川が流れる。街なかの移動は頑張れば徒歩で回れ、路地を入ったところに個人店があるなど意外な出合いがあるので、ぜひ街歩きするのをお勧め。他に路線バスや主要観光地を循環する「城下まち金沢周遊バス」、レンタサイクルもあるので移動手段には事欠かない。2009年にユネスコ創造都市(クラフト部門)に認定。東京から北陸新幹線で約2時間30分。

建築やアートを巡る旅。石川・金沢 松本有未 『ことのは不動産』代表

松本有未『ことのは不動産』代表

石川県生まれ。金沢大学卒業後、出版社や金沢R不動産を経て、2014年『ことのは不動産』を設立。中古住宅や古い物件の魅力を丁寧に掘り起こし、それぞれの人に合う不動産仲介を行う他、空き家を地域に開くNPOを運営。

photo : Masanori Kaneshita illustration : naohiga edit & text : Wakako Miyake

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