MOVIE 私の好きな、あの映画。
写真家・若木信吾さんが薦めたい映画、薦められた映画。July 29, 2026
好きなシーンや新しい発見で盛り上がる、映画は最高のコミュニケーションツールだ。映画好きが語る「私が薦めたい映画」「誰かに薦められた映画」。&Premium153号(2026年9月号)「誰かと語りたい、あの映画」より、写真家・若木信吾さんが薦めたい映画、薦められた映画を紹介します。

次世代の作品で、みずみずしさを味わう。
私が薦めたい映画
『太陽と桃の歌』カルラ・シモン
桃農園を営む大家族が土地を明け渡すよう迫られる。家族それぞれ打開策を練るが、亀裂が入ったまま最後の収穫を迎える。各種配信サービスにて配信中。Alcarràs / 2022 / Spain, Italy / 121min.
半年ほど前にスペインでロケがあり、その流れで手に取ったのがカルラ・シモン監督の作品。カタルーニャ地方で桃農園を営む家族が、代々続く家業を続けるか、もしくはソーラーパネル事業でラクして稼ぐ生活を手に入れるか、意見の対立によって家族の絆に亀裂が生じるさまを描くヒューマンストーリー。設定自体はオーソドックスなのだけど、撮影や演出方法が巧妙ゆえ、凄みはあるのに自然体でみずみずしい。俳優陣の演技力も相まって、かつて僕ら世代が憧れたアメリカン・ニューシネマを想起させる、新しいドキュメンタリーを観ているような気分になりました。巨匠が作り出す世界観とはひと味違う、1986年生まれの女性監督だから成せる新しいスタイルの映画です。
誰かに薦められた映画
『オールド・ジョイ』ケリー・ライカート
家庭を手に入れたマークと、自由な暮らしを求めるカート。二人は温泉があるという高山へ車で向かうが……。自主映画で高評価を受ける監督による作品。Old Joy / 2006 / USA / 73min.
僕のアシスタントが映画学校出身ということもあり、一本の映画について語り合うポッドキャストを始めました。24歳の彼が「10回以上観ている」と挙げてくれたのが、ケリー・ライカートの作品。主人公は、ヒッピーのような暮らしを続けるカート(ダニエル・ロンドン)と、世間的には真っ当といわれる生活を手に入れたマーク(ウィル・オールダム)。旧友で価値観が正反対の二人がカスケード山脈へと何日かかけてキャンプ旅をするロードムービーです。初見はサスペンスかとハラハラしましたが、2、3回と観返すたびに再会の懐かしさに見え隠れする中年の友情が匂い立ってきて「僕も同じようなことして遊んだり、考えてたなぁ」とノスタルジックに。ここ数年、新作はチェックするものの、’80年代の巨匠たちの名作ほど掘り下げて鑑賞することはありませんでした。憧れた〝あの頃〞を大事にしたいからこそ躊躇してしまうし、新しさに対してすんなり受け入れるほど勇気もない。けれど、次世代の良作について若い世代と語ることで新しい発見や新鮮な意見を得られたのは、よい経験に。扉を開くきっかけになりました。

若木信吾写真家
1971年静岡県生まれ。書店、出版社を主宰する他、ポッドキャスト『若木信吾のヤングトゥリーラジオ』とYouTube『YoungtreeChannel』も配信。
photo : Shingo Wakagi illustration : Shapre text : Yukino Hirosawa edit:Wakako Miyake






























