MOVIE 私の好きな、あの映画。

カフェ、シアター、シェアハウス。3階建ての「住める」映画館。埼玉・大宮『OttO』。August 16, 2026

「この街に映画文化を残したい」。純粋な思いで映画館のない街に施設を作り、コミュニティを大切にしている館長がいる。そんな人たちと語り合うのも実に楽しい時間だ。映画文化を温かく支える、シアターの作り手に話を聞いた。&Premium153号(2026年9月号)「誰かと語りたい、あの映画」より、埼玉・大宮の映画館『OttO』を紹介します。

カフェ、シアター、シェアハウス。3階建ての「住める」映画館。埼玉・大宮『OttO』。
1階のカフェはカウンターと半地下の落ち着いた空間。

観るだけじゃなく、「住める」ミニシアター。

「かつて大宮という街には、映画館が12館ほどあったんです。昔は芝居小屋やボウリング場と映画館が一緒になった施設があったけれど、時代とともに閉館が相次いで。『OttO(オット)』はこの街に約20年ぶりにできた映画館なんです」と館長の今井健太さん。自らミニシアターを作る勇気ある行動を起こしたのは、期せずして、街の歴史を振り返るきっかけがあったからだという。
「義父から区画整理に伴う土地活用の相談を受けて、建て替えを任されたのです。私は設備工事会社を経営していて、映画業界は門外漢でしたが、改めてこの街の失われてきた景色を思ったら、映画館が必要だと感じました。映画は時間を巻き戻してくれるものだし、現代では、社会や真実、さまざまな課題を知るための役割を担っているようにも思えるので」
 今井さんは1階に飲食を楽しめるカフェ、2階に50席のシアター、3階に25部屋のシェアハウスを作った。「住める映画館」というスタイルが、とてもユニークだ。
「映画を観に訪れて、その流れで入居を決めた人もいます。ちなみに、入居者は映画を月4回まで無料で観られます。年に1回しか映画を観なかった人が、ここで日常的に映画を楽しむようになってくれたことも嬉しいですね。私は人々のさまざまな関心や経験が、最終的に映画という表現の中に出口のように表れるように思うんです。時には、お客様ご自身が、シアターを貸し切り上映することもできます。生粋の映画ファンではなくても、ふらっと訪れた人が何かを持ち帰ることができる、万人に扉を開いている映画館でありたいです」

カフェ、シアター、シェアハウス。3階建ての「住める」映画館。埼玉・大宮『OttO』。 | 日本のオーディオブランド〈BWV〉のスピーカーを採用。正確で曇りのない音で鑑賞できる。前方席は、横になれるボックスシートも備える。
日本のオーディオブランド〈BWV〉のスピーカーを採用。正確で曇りのない音で鑑賞できる。前方席は、横になれるボックスシートも備える。
カフェ、シアター、シェアハウス。3階建ての「住める」映画館。埼玉・大宮『OttO』。 | 電気窯で焼き上げた本格ナポリピッツァなど、食べ応えのあるメニューが豊富。
電気窯で焼き上げた本格ナポリピッツァなど、食べ応えのあるメニューが豊富。
カフェ、シアター、シェアハウス。3階建ての「住める」映画館。埼玉・大宮『OttO』。 | 外にも対話できる空間が。この日はシェアハウスの居住者と歓談。
外にも対話できる空間が。この日はシェアハウスの居住者と歓談。
カフェ、シアター、シェアハウス。3階建ての「住める」映画館。埼玉・大宮『OttO』。

今井健太Kenta Imai

東京都出身。設備工事会社の代表としての活動も行う。設備工事の知識を生かし、建築家の佐々木善樹と直感的な心地よさを感じられる空間デザインを考え、映画館『OttO』を2025年にオープン。シェアハウスの大家的な仕事も担う。入居者とは、交流を楽しむことも。

OttO埼玉・大宮

『OttO(オット)』というネーミングは、今井さんの子息がふだんの父の呼び方を絡めて考案したもの。ミニシアターとしては珍しく、親子観賞室、ベビーカーのまま入れるスペースもあり、安心して鑑賞できる。大宮駅より徒歩約5分。▷さいたま市大宮区桜木町1‒345 ☎048‒871‒8286

photo : Takeshi Abe edit & text : Seika Yajima

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