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書くことは、自分を知ること。写真と文:黒川隆介(詩人)#4September 30, 2026

そんなに酒飲んでてなぜ太らないんですかと聞かれることがある。自分では二日酔いによって翌日の食事が一食になりがちだからだと思っていたが、どうやらオートファジーというものらしい。一日のうち8時間以内に食事を済ませ、次の食事まで16時間空けると古い細胞が分解されていくのだとか。

二日酔いは別として、そもそも空腹である時間が嫌いではない。食後の漫然とした感覚で書くことよりも、何も胃に含まず書くソリッドな状態が好きだ。その為、16時間は耐えている時間でもなく、仕事をしっかりしているときほど"オートオートファジー”になっている。

一方、冷凍していたステーキ肉の調理に失敗し、肉が硬くなってしまったときにはそれを食べ終えたままスーパーへ新たにステーキ肉を買いに行き、丁寧にレアで焼き直して満腹の状態から食べるほどに美味しいものを美味しく食べることにこだわりもある。かといって20代半ばにはところてんしか食べない、もやししか食べない、という時期もあった。

一人の人間の移り変わりとは思えないほど食だけでも様変わりしていることに書いていて気がつき、育成ゲームで言ったら六角形のバランスを取らずに偏って育てた強打者みたいだよねと言われたことを思い出す。「何も胃に含まず書くソリッドな状態が好き」などと書いてはみたが、ウォッカをラッパ飲みしながら潰れるまで詩を書く毎日を若い時分に長くやっていた草創期もまた書きながら思い出す。

どうすれば納得いく詩が書けるかと気が狂いかけ、気がつくと台所で書いていた。
どうすれば納得いく詩が書けるかと気が狂いかけ、気がつくと台所で書いていた。

ところてんしか食べなかった期間は、ところてんだけを摂取していたら細長い詩を書くようになるのではないか、もやしだけを食べていた期間は、もやしだけを食べていれば薄白い透けた詩が書けるようになるのではないかとの考えが浮かび、疑うことなくやってみていた。どれも苦ではなかった。そもそも生きること自体が苦であったことも思い出せそうではあるが、やめておく。

空腹で今いることも、酒浸りでいたことも、もやしかところてんに絞っていたことも、どれも行き先は詩に向かっていた。いま知った。書くことは気づくこと、書くことは自分を知ること、私は恥や詩を書きながらこれからも詩に向かっていく。

「オリンパスEcru」のセルフタイマーで撮った自分。
「オリンパスEcru」のセルフタイマーで撮った自分。

詩人 黒川 隆介

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1988年神奈川県生まれ。16歳から詩を書き始め、文芸誌への寄稿や雑誌連載の傍ら、全国各地を詩作・朗読しながら巡っている。趣味はイカを捌くこと。近著に『生まれ変わるのが死んでからでは遅すぎる』(実業之日本社)。

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