MOVIE 私の好きな、あの映画。
かつて幼稚園だった場所をミニシアターとしてオープン。山梨・上野原『CineYama』。August 14, 2026
「この街に映画文化を残したい」。純粋な思いで映画館のない街に施設を作り、コミュニティを大切にしている館長がいる。そんな人たちと語り合うのも実に楽しい時間だ。映画文化を温かく支える、シアターの作り手に話を聞いた。&Premium153号(2026年9月号)「誰かと語りたい、あの映画」より、山梨・上野原の映画館『CineYama』を紹介します。
映画という山を登り、新しい世界の見方を知る。
東京から1時間ちょっとの距離にある山梨県上野原市。マシュー・ケルソンさんは、山に囲まれて佇む廃園となった幼稚園を見た瞬間、ここを映画館にするイメージが溢れたという。
「丘の麓にあるトンネルをくぐり、桜並木の道を辿ると『千と千尋の神隠し』の世界から飛び出してきたような風景が広がっていました。私は映画に捧げた人生をこの場所で表現したいと思いました」。そんな思いは、ロビーのテーブルにも。20代の頃に映写を学んだ最初のリールが天板に使われている。「CineYama(シネヤマ)」というネーミングには、マシューさんなりの映画に向き合う真摯なスタンスが込められている。
「私にとって〝映画館と山〞は、どちらも自分自身と世界をより深く理解するための場所だと思っていて。山の頂上に立つと、眼下の世界が新しい光の中に見えてくる。映画は他のどんな
芸術形式にもできない方法で、地球上の誰か別の人の立場に自分を置いてくれます」
アメリカに映画館を作った経験があるマシューさんは、アメリカと日本の映画鑑賞におけるコミュニケーションの違いも興味深く感じている。
「アメリカでは上映中に観客が喜怒哀楽を表現してOKなある種の自由さがある。対して、日本は映画の感想をすぐには語らず、長い時間をかけてじっくり向き合うのが印象的です」
ロビーと園庭では、初対面の者同士が深く語り合う光景を目にすることも。
「ポップコーンがあり、おいしいコーヒーがあり、外には庭と森の音がある。かつて幼稚園だった記憶の温かさを帯びているから、安心して自然と心が開くのではないかな」

マシュー・ケルソンMatthew Kelson
アメリカ・デトロイト出身。地元にある廃校となった小学校を改装した100席規模のアートハウス映画館『バートン・シアター』を共同設立。その後、Netflixに10年以上勤務し、近年はアジア太平洋地域の上映事業を統括。妻と2人の子どもと共に山梨を拠点に活動している。
CineYama山梨・上野原
山梨県上野原市で地域の職人たちと連携し、旧・市立沢松幼稚園をDIY。2026年の春に『CineYama』をオープン。コミュニティの集いの場となるよう、座席数はあえて43席と小規模に。JR中央本線上野原駅より徒歩約20分。▷山梨県上野原市八ツ沢117‒1 ☎050‒1794‒1201
photo : Takeshi Abe edit & text : Seika Yajima













































