MOVIE 私の好きな、あの映画。
上映作品に合わせたオリジナルマガジンやイベントを通して、映画の楽しみ方を広げる映画館。東京・菊川『Stranger』。August 15, 2026
「この街に映画文化を残したい」。純粋な思いで映画館のない街に施設を作り、コミュニティを大切にしている館長がいる。そんな人たちと語り合うのも実に楽しい時間だ。映画文化を温かく支える、シアターの作り手に話を聞いた。&Premium153号(2026年9月号)「誰かと語りたい、あの映画」より、東京・菊川の映画館『Stranger』を紹介します。

映画館で、雑誌の中で、語らいを大切にすること。
映画館がそれほど多いとはいえない東東京で『Stranger』は、新たな文化の風を届けてくれる拠りどころである。始まりは、閉塞感を感じずにはいられなかった、コロナ禍が続く2022年。当時の館長である岡村忠征さんのジャン= リュック・ゴダールへの強い愛情が起点だった。日本で上映権が切れていた作品をフランスの権利元から独自に買い付けて上映するという、シネフィル色の強さが窺えるラインナップ。
しかも、カフェとオリジナルマガジン『Stranger MAGAZINE』の発行を同時に立ち上げる熱量の大きさにも、独自のものがある。作品を編成・上映・配給するだけでなく、自分たちの言葉でその魅力を伝え、時には映画人の批評も届けている。ここで、雑誌の編集長を務め、当初から中心人物として働いているのが、鈴木里実さんだ。ほかスタッフも若いメンバーが多い。
「今はトップの体制が変わりましたが、岡村さんの志を受け継ぎ、語り合ったり、論じ合ったりする場づくりを大切にしています。マガジンは、上映の特集企画に関連した内容になっています。ちなみに、私は映画のワンシーンを刺繍にする『シネマ刺繍』の制作も行っていて、上映作品に合わせて自作を館内に飾ったりもしています。そうしたものも、映画と出合う入り口になってくれたら嬉しいなと思っています」
館内のカフェ空間は、時折、上映内容と連動したイベントスペースになることも。
「音楽家のブライアン・イーノの映画を上映したときは、DJの方を招いてイベントを開催しました。そんなふうに、さまざまな角度から映画を楽しんでいただきたいですね」

鈴木里実Satomi Suzuki
テレビ番組のスタッフを経て、映画の世界に。特集上映の企画を担当しながら『Stranger MAGAZINE』の2代目編集長を務める。映画をモチーフにした「シネマ刺繍」の作家としての顔を持つ。Instagram(@satoming_theater)では、作品を公開している。
Stranger東京・菊川
クラウドファンディングで支援を募り『Stranger』を創設。地域に映画館を根づかせることをモットーに墨田区、江東区に在住、在勤、在学の方向けに「ご近所割」を実施している。座席数は49席。都営新宿線菊川駅より徒歩約1 分。▷東京都墨田区菊川3‒7‒1 ☎080‒5295‒0597
photo : Takeshi Abe edit & text : Seika Yajima







































