〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、寺社仏閣の風景

市比賣神社に寄せた「着せ綿」。【〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、寺社仏閣の風景 vol.29】September 12, 2026

〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、自社仏閣の風景
〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、自社仏閣の風景
京都で和菓子を制作する〈御菓子丸〉が、四季折々の寺社仏閣の風景を、独創的な菓子と文とで表現。京都の風景に思いを馳せたくなる、美しい一皿を紹介します。
市比賣神社に寄せた「着せ綿」。【〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、寺社仏閣の風景 vol.29】
 

 平安京が築かれた翌年の795年、都の市場を見守る神社として市比賣神社は創建された。1591年に河原町五条に移され、現在も京都中央市場で働く人々や商人たちの守護神とされている。

 市比賣神社では9月9日、最も陽の力が強まるとされるこの日に重陽祭が行われる。神事の後、本殿前で雅楽が演奏され、巫女による「菊寿の舞」が奉納されたり、菊の花を浮かべた酒が振る舞われるなど、重陽を大切にしてきた京都の文化を感じる一日だ。

 重陽の節句では前日の夜に菊の上に綿を置き、その綿に夜露を湿らせて体にあてるという風習があり、その名残から菊の上に綿を置くしつらえがある。

 その風習に着想を得て、菊に見立てた栗のきんとんの上に、イチジクの香りを移した綿のような泡をのせ、食べられる着せ綿を作った。栗とイチジクが互いの香りを引き立て合い、秋の訪れを穏やかに感じる味わいとなった。季節の恵みを口にし、自然の力に感謝しながら健康と長寿を願う気持ちは、今も昔も変わらない。

重陽祭では菊乃御中守りが授与される。▽『市比賣神社』京都市下京区河原町五条下ル一筋目西入 ☎075‒361‒2775 拝観7時17時 無休

photo : Yoshiko Watanabe
*『アンドプレミアム』No.154(2026年10月号)より
*掲載中の菓子は、寺社での提供はありません。


和菓子作家 杉山早陽子

1983年三重県生まれ。老舗和菓子店での修業を経て、2006年から和菓子ユニット〈日菓〉として活躍。2014年から〈御菓子丸〉を主宰している。

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