〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、寺社仏閣の風景

平等院に寄せた「藤氷」。【〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、寺社仏閣の風景 vol.25】May 09, 2026

〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、自社仏閣の風景
〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、自社仏閣の風景
京都で和菓子を制作する〈御菓子丸〉が、四季折々の寺社仏閣の風景を、独創的な菓子と文とで表現。京都の風景に思いを馳せたくなる、美しい一皿を紹介します。
平等院に寄せた「藤氷」。【〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、寺社仏閣の風景 vol.25】
 

 宇治市にある世界遺産、平等院。その庭園では、春から初夏へとうつろう頃に、優美な藤の花が咲き誇る。しなやかに垂れ下がる藤棚はやわらかな風に吹かれ、その様をぼんやり眺めていると、極楽浄土にいるかのような心地さえ覚える。淡い紫から白へと混じり合う色彩が、春の陽気のなかキラキラと輝く。その奥には平安時代と変わらない姿を見せる阿字池。美しさに身を包まれて、極楽浄土のさらに奥へいざなわれている感覚になるのだ。
 
 山で採取した藤の花を一枚一枚摘み取り、シロップへと漬け込み、あたたかくなった気温の中に置いておくと、花の持っている酵母が発酵し始め、華やかな香りとともに酸味が出てくる。人が少し手を加えるだけで花の持っている力が開花し、おいしいものに変身する姿にうっとりとしてしまう。このシロップを凍らせ、口どけのよいシャーベットに仕立てた。
 
 光に透ける藤色の涼やかさと、発酵がもたらす奥行きのある味わい。ひと掬いのシャーベットに、平等院の庭に満ちる藤の花の風景を写した。麗かな春の味わいをお楽しみいただけますように。

藤は4月中旬〜5月初旬。
▽『平等院』宇治市宇治蓮華116 ☎0774‒21‒2861 拝観8時45分〜17時30分(17時15分受付終了) 無休 拝観料700円

photo : Yoshiko Watanabe
*『アンドプレミアム』2025年6月号より。


和菓子作家 杉山早陽子

1983年三重県生まれ。老舗和菓子店での修業を経て、2006年から和菓子ユニット〈日菓〉として活躍。2014年から〈御菓子丸〉を主宰している。

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