〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、寺社仏閣の風景

愛らしいさつきの庭を団子に。
―等持院 ながめ―〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、寺社仏閣の風景 vol.19October 04, 2023

〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、自社仏閣の風景
〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、自社仏閣の風景
京都で和菓子を制作する〈御菓子丸〉が、四季折々の寺社仏閣の風景を、独創的な菓子と文とで表現。京都の風景に思いを馳せたくなる、美しい一皿を紹介します。
等持院 ながめ 御菓子丸 2

等持院
ながめ

 

 暦応4(1341)年、室町幕府初代将軍・足利尊氏が天龍寺から夢窓疎石を迎え、京都市北西に位置する衣笠山の南麓に創建した寺院。方丈西庭には夢窓疎石の作庭とも伝わる池泉回遊式の芙蓉池庭園があり、蓮の花をかたどった池の周りを彩るのは、春先は椿、初夏はさつきやつつじ、半夏生、初秋には芙蓉などの花々。高低差のあるところにも植えられているため、立体的な景色がとても印象的だ。庭の低い位置に立つと、緑に包み込まれているような気持ちになる。
 一方、庭の一番高いところ、築山の上に立つ茶室「清漣亭」近くからは、覗くように庭を眺められる。遠くから望む、丸く整えられたさつきはとても愛らしく、自ずと団子が頭に浮かんできた。
 米粉と水をこねて団子を作り、蒸したとうもろこしの粒を入れる。甘じょっぱい醤油を塗りながら、じっくりと焼き、最後に青海苔をまぶす。そうしていくつか器に盛ると、おいしそうな庭が出来上がった。美しい庭の記憶に包まれながら、茶室でこの菓子を食べたらどんなに楽しいだろうと想像する。

達磨大師を描いた達磨図も有名。▷『等持院』京都市北区等持院北町 ☎075-461-5786 拝観9時〜16時30分(16時受付終了)無休 拝観料500円

photo : Yoshiko Watanabe
*『アンドプレミアム』2023年11月号より。


和菓子作家 杉山早陽子

1983年三重県生まれ。老舗和菓子店での修業を経て、2006年から和菓子ユニット〈日菓〉として活躍。2014年から〈御菓子丸〉を主宰。

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