FOOD 食の楽しみ。

奇跡のかき氷に出合える、街の小さな喫茶店。『喫茶ベレー』。July 20, 2026

見たこともない、食べたこともないものに出合うってこと、なかなかないですよね? たいていのことでは驚かない。ところが、『喫茶ベレー』のかき氷にはびっくりさせられることばかり。おもしろくておいしい、かき氷の新世界へ。

奇跡のかき氷に出合える、街の小さな喫茶店。『喫茶ベレー』。A定食¥1,900。かき氷に杏シロップをたらり、杏仁豆腐はつるり、楽しい。 | A定食¥1,900。かき氷に杏シロップをたらり、杏仁豆腐はつるり、楽しい。
A定食¥1,900。かき氷に杏シロップをたらり、杏仁豆腐はつるり、楽しい。
奇跡のかき氷に出合える、街の小さな喫茶店。『喫茶ベレー』。氷クリームソーダ¥1,700。メロンシロップと炭酸を合わせ、追い炭酸を。食べながらチューチュー吸う。マンゴー入り。 | 氷クリームソーダ¥1,700。メロンシロップと炭酸を合わせ、追い炭酸を。食べながらチューチュー吸う。マンゴー入り。
氷クリームソーダ¥1,700。メロンシロップと炭酸を合わせ、追い炭酸を。食べながらチューチュー吸う。マンゴー入り。

氷の楽しさが凝縮。 天才の技に酔う。

 暑い、暑い、毎日暑い。ひんやり涼しくなりたいとき、あなたならどうする? やっぱり、かき氷?
 ゴーラーではないので、最新のかき氷事情にはついていけていないのだが、ある日突然、とんでもないかき氷というか、天才かき氷クリエイターと出会ってしまった。『喫茶ベレー』店主の秋山さんがその人。そもそもは、わらび餅「でろん」が始まりだった。1本流しの大胆さもさることながら、きなこが濃厚でおいしすぎた。
 お取り寄せだったので、お店を調べたところ、お客さまからの投稿にぶっ飛んだ。え、髷(まげ)ミルク? 何ですと。おかっぱサンデー? もう、名前だけで食べてみたくなるが、写真を見てさらに驚いた。ここにも、でろ〜んとようかん状のものがのっている。確かに髷にもおかっぱにも見える。楽しすぎるんですけど。ただ、これらは冬メニューなんだとか。かき氷は夏だけのものではないのだ。
 『喫茶ベレー』は、戸越銀座の住宅街の中にポツンとあった。駅から近くはない。猛暑の中、日陰がない道を汗だくで歩く。ありがたいことに、2024年から予約制(ひとり1杯のみ)になっているのだが、それでも歩く。大きなガラス窓の白い愛らしい建物がゴールだ。ワクワク。期待度マックス。そして、その期待以上のかき氷との出合いが待っている。

奇跡のかき氷に出合える、街の小さな喫茶店。『喫茶ベレー』。これが、わらび餅「でろん」。冷凍テイクアウト1350円。きなこは二度焙煎しているので、香り高く、味わい深い。通販あり。
これが、わらび餅「でろん」。冷凍テイクアウト1350円。きなこは二度焙煎しているので、香り高く、味わい深い。通販あり。

 待ちに待った「冷や玉ぜんざい」がやってきた。何と木製の2段重。玉手箱を開ける気持ちで一番上の蓋を開ける。おーっ、小さな白玉がたっくさん生姜蜜の中に浮いている。そして、それをそっと蓋の上にのせて2段目を見ると、ぴたっと平らに整えられたこしあんが。あれ、氷は?と思ったら、そのあんこの下が真っ白なかき氷だった。まずはあんことかき氷をすくってパクリ。うほーっ、何ておいしいの。あんこのおいしさが際立っている。氷のほうには何の味もついていない。食べ方は自由で、あんこと氷をすくったままで、そっと白玉の入っているシロップに浸してパクリ、もいい。白玉をあんこにのっけて、上からきなこをふってあんこ、白玉、きなこのハーモニーも楽しめる。氷は1回お代わり可能で、生姜蜜かミルクシロップがつく。ともかく、至れり尽くせり。食べ手の心情をよくおわかりで。

奇跡のかき氷に出合える、街の小さな喫茶店。『喫茶ベレー』。冷や玉ぜんざい¥1,815。生姜蜜は素焚糖と氷砂糖のやさしい甘味。佃煮はかつお節入り辛口。 | 冷や玉ぜんざい¥1,815。生姜蜜は素焚糖と氷砂糖のやさしい甘味。佃煮はかつお節入り辛口。
冷や玉ぜんざい¥1,815。生姜蜜は素焚糖と氷砂糖のやさしい甘味。佃煮はかつお節入り辛口。
奇跡のかき氷に出合える、街の小さな喫茶店。『喫茶ベレー』。あんこの下にはかき氷。ふわふわのお代わり氷用に、あんこを残しておく上級者も。生姜蜜やミルクシロップをかけて。 | あんこの下にはかき氷。ふわふわのお代わり氷用に、あんこを残しておく上級者も。生姜蜜やミルクシロップをかけて。
あんこの下にはかき氷。ふわふわのお代わり氷用に、あんこを残しておく上級者も。生姜蜜やミルクシロップをかけて。

 店主は日光出身。日光の天然氷の蔵元とのご縁で、天然氷を使った氷喫茶を東京・笹塚で始め、行列のできる大人気店に。ところが暖冬の影響で氷が高騰。子育て期間と重なったこともあって、1年ほどで閉店。6年前に武蔵小山に引っ越し、この物件を見つけた。それも、携帯電話の充電がなくなり、大崎から武蔵小山のタワーを目標に、ひたすら歩いているときだった。大きな窓が特徴の建物に心惹かれた。長く続く理容室だったそうだが、「見つけた感があった」、と店主。建物の温かい雰囲気に合わせて、’70年代のアンティークガラスをはめ込んだ。そして、2019年新たなスタートを切った(あ、ここで用いる氷は純氷である)。
 ところが、すぐにコロナ禍に。テントを立てて、テイクアウトを始める。ソフトクリーム、甘すい(水ようかんと寒天、杏、豆などに蜜をかけたもの)、かき氷……。水ようかんは工夫を重ね、大人気の髷やおかっぱ(笑)にのっかっている。「水ようかんに合う小豆を探すところから始まり、極限まで寒天を減らして、とろけるような食感に仕立てています。それをミルクだけの氷にのせてみたら、髷にしか見えなくなって(笑)」、髷ミルクの誕生となった。
 「A定食」も素晴らしい。こちらは店主が日本一おいしいと太鼓判の、長野の『相澤農園』の杏が主役。杏のシロップ、杏のコンポート、杏仁から作る杏仁豆腐、杏仁ミルク。ほら、頭文字は全部A。だから、A定食。氷は押さえず、ふわっふわの削り立てそのまま。もう、箸じゃなかった、スプーンが止まりません。サクサク食べてしまう。
 店主の氷愛が炸裂しているのがよくわかる。おいしいかき氷のためならば、何ひとつ努力を惜しまない。器貧乏になりそうなほど、器好きでもある。器も要チェックね。そして、どうしても冬に行かねば。髷もおかっぱも「焼き林檎リング」も、制覇したいかき氷が多々。形状も組み合わせも味も唯一無二。まいりました。冬はベレー帽かぶって行こうっと。

奇跡のかき氷に出合える、街の小さな喫茶店。『喫茶ベレー』。/テイクアウトのあんことエスプレッソのソフト630円。左/ラズベリー&ブルーベリーソフト700円。あんことエスプレッソの相性のいいこと。 | 右/テイクアウトのあんことエスプレッソのソフト630円。左/ラズベリー&ブルーベリーソフト700円。あんことエスプレッソの相性のいいこと。
右/テイクアウトのあんことエスプレッソのソフト630円。左/ラズベリー&ブルーベリーソフト700円。あんことエスプレッソの相性のいいこと。
奇跡のかき氷に出合える、街の小さな喫茶店。『喫茶ベレー』。何でもない顔して、いちいち素敵な店内。店主の趣味全開。白で統一された壁面は氷が映える。トッピングをあれこれプラスしつつ、ゆっくり食べよう。 | 何でもない顔して、いちいち素敵な店内。店主の趣味全開。白で統一された壁面は氷が映える。トッピングをあれこれプラスしつつ、ゆっくり食べよう。
何でもない顔して、いちいち素敵な店内。店主の趣味全開。白で統一された壁面は氷が映える。トッピングをあれこれプラスしつつ、ゆっくり食べよう。

喫茶ベレー

メニューは日によって変更あり。トッピングもいろいろ。
DATA 東京都品川区荏原1-7-12コーポサンフラワ102 12:00~16:00LO(テイクアウト〜16:30) 日休予約&キャンセルの方法はインスタグラムのピンポストで要確認。

photo : Atsushi Kondo text : P


ライター 渡辺 紀子

Michiko Watanabe 渡辺 紀子
皆からの呼び名は、P(ぴい)。「食べるものなら、おいしくてもおいしくなくても愛おしい」を口上に、『&Premium』創刊時から食の連載「&food」を担当。

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