FOOD 食の楽しみ。
奇跡のかき氷に出合える、街の小さな喫茶店。『喫茶ベレー』。July 20, 2026
見たこともない、食べたこともないものに出合うってこと、なかなかないですよね? たいていのことでは驚かない。ところが、『喫茶ベレー』のかき氷にはびっくりさせられることばかり。おもしろくておいしい、かき氷の新世界へ。
氷の楽しさが凝縮。 天才の技に酔う。
暑い、暑い、毎日暑い。ひんやり涼しくなりたいとき、あなたならどうする? やっぱり、かき氷?
ゴーラーではないので、最新のかき氷事情にはついていけていないのだが、ある日突然、とんでもないかき氷というか、天才かき氷クリエイターと出会ってしまった。『喫茶ベレー』店主の秋山さんがその人。そもそもは、わらび餅「でろん」が始まりだった。1本流しの大胆さもさることながら、きなこが濃厚でおいしすぎた。
お取り寄せだったので、お店を調べたところ、お客さまからの投稿にぶっ飛んだ。え、髷(まげ)ミルク? 何ですと。おかっぱサンデー? もう、名前だけで食べてみたくなるが、写真を見てさらに驚いた。ここにも、でろ〜んとようかん状のものがのっている。確かに髷にもおかっぱにも見える。楽しすぎるんですけど。ただ、これらは冬メニューなんだとか。かき氷は夏だけのものではないのだ。
『喫茶ベレー』は、戸越銀座の住宅街の中にポツンとあった。駅から近くはない。猛暑の中、日陰がない道を汗だくで歩く。ありがたいことに、2024年から予約制(ひとり1杯のみ)になっているのだが、それでも歩く。大きなガラス窓の白い愛らしい建物がゴールだ。ワクワク。期待度マックス。そして、その期待以上のかき氷との出合いが待っている。

待ちに待った「冷や玉ぜんざい」がやってきた。何と木製の2段重。玉手箱を開ける気持ちで一番上の蓋を開ける。おーっ、小さな白玉がたっくさん生姜蜜の中に浮いている。そして、それをそっと蓋の上にのせて2段目を見ると、ぴたっと平らに整えられたこしあんが。あれ、氷は?と思ったら、そのあんこの下が真っ白なかき氷だった。まずはあんことかき氷をすくってパクリ。うほーっ、何ておいしいの。あんこのおいしさが際立っている。氷のほうには何の味もついていない。食べ方は自由で、あんこと氷をすくったままで、そっと白玉の入っているシロップに浸してパクリ、もいい。白玉をあんこにのっけて、上からきなこをふってあんこ、白玉、きなこのハーモニーも楽しめる。氷は1回お代わり可能で、生姜蜜かミルクシロップがつく。ともかく、至れり尽くせり。食べ手の心情をよくおわかりで。
店主は日光出身。日光の天然氷の蔵元とのご縁で、天然氷を使った氷喫茶を東京・笹塚で始め、行列のできる大人気店に。ところが暖冬の影響で氷が高騰。子育て期間と重なったこともあって、1年ほどで閉店。6年前に武蔵小山に引っ越し、この物件を見つけた。それも、携帯電話の充電がなくなり、大崎から武蔵小山のタワーを目標に、ひたすら歩いているときだった。大きな窓が特徴の建物に心惹かれた。長く続く理容室だったそうだが、「見つけた感があった」、と店主。建物の温かい雰囲気に合わせて、’70年代のアンティークガラスをはめ込んだ。そして、2019年新たなスタートを切った(あ、ここで用いる氷は純氷である)。
ところが、すぐにコロナ禍に。テントを立てて、テイクアウトを始める。ソフトクリーム、甘すい(水ようかんと寒天、杏、豆などに蜜をかけたもの)、かき氷……。水ようかんは工夫を重ね、大人気の髷やおかっぱ(笑)にのっかっている。「水ようかんに合う小豆を探すところから始まり、極限まで寒天を減らして、とろけるような食感に仕立てています。それをミルクだけの氷にのせてみたら、髷にしか見えなくなって(笑)」、髷ミルクの誕生となった。
「A定食」も素晴らしい。こちらは店主が日本一おいしいと太鼓判の、長野の『相澤農園』の杏が主役。杏のシロップ、杏のコンポート、杏仁から作る杏仁豆腐、杏仁ミルク。ほら、頭文字は全部A。だから、A定食。氷は押さえず、ふわっふわの削り立てそのまま。もう、箸じゃなかった、スプーンが止まりません。サクサク食べてしまう。
店主の氷愛が炸裂しているのがよくわかる。おいしいかき氷のためならば、何ひとつ努力を惜しまない。器貧乏になりそうなほど、器好きでもある。器も要チェックね。そして、どうしても冬に行かねば。髷もおかっぱも「焼き林檎リング」も、制覇したいかき氷が多々。形状も組み合わせも味も唯一無二。まいりました。冬はベレー帽かぶって行こうっと。
喫茶ベレー
メニューは日によって変更あり。トッピングもいろいろ。
DATA 東京都品川区荏原1-7-12コーポサンフラワ102 12:00~16:00LO(テイクアウト〜16:30) 日休予約&キャンセルの方法はインスタグラムのピンポストで要確認。
photo : Atsushi Kondo text : P
ライター 渡辺 紀子




















































