FOOD 食の楽しみ。
夏ですしね。 鎌倉あたりで、こんな麺はいかが。July 13, 2026
夏だ、海だ、鎌倉だ。なんて方も多いでしょうが、私ことフードライター・P(ぴい)はもちろん、もっぱら食い気に走っております。そんな鎌倉麺部の活動も、夏ともなれば、ますます盛んに。ピカイチの2軒へ大急ぎで突入します。
今回のテーマは麺。麺といっても広うござんす。何に絞るか悩んだ末に、夏だから暑い国の麺は外せないと、まずフォーをチョイス。そして、季節を問わず大好きな蕎麦は、ほんとうにおいしい店をご紹介したく。
汗をかきかきフォー。 夏はいいと思える麺。
鎌倉好きなら、もうすっかりおなじみであろう『フォー・ラスカル』。大磯にあった、夏の家みたいな『アジア食堂ラスカル』が、鎌倉にスタイルを変えて移転してきたのだ。鎌倉のファンたちからは、移転「してきてくれた」と喜ばれたが、大磯や二宮のファンはふくれっ面になったと聞いた。
あっかるいガラス張りの店舗は見るからに気持ちがいい。昼どきは行列必至。強い日差しにもめげず、表に並んだ椅子に座って待つ人、立って待つ人ももちろんいる。大磯では夜ラスカルもあったが、こちらは昼から夕方までの営業。夜はなし。麺メニューはフォーが3種にカオソーイ(ラオス・スタイル)。フォーはチキンとベジタブルは定番で、もう1種がトマトとカニだったり、あさりとゴマやお魚だったり。それにサイドメニューが5種というラインナップだ。
注文したチキンのフォーが来た。クリアでピュアなスープにチキンがたっぷり。半透明のフォーが美しい。まずはスープを一口。むふふ、これこれ、この味だ。それから、丼の底に箸をつっ込んで、ぐるんとひっくり返す感じで、下に入っているモヤシを上に出してくる。そして、麺と一緒に口に入れる。つるりん。やっぱりいいもんだ。
大きめに裂いたチキンがたっぷり。若者にはいいだろうが、私には量が多いというと、店主・新井秀明さんが「うちは出汁もチキンでとってるから、いっぱいあるんです。とっといても、ね」と、控えめにおっしゃる。鶏肉でとっているんだ。丸鶏かと。「丸鶏だと骨を捨てなきゃいけないですから」。なるほど、合理的だし、さっぱり仕上がりそうだ。シンプルなだけに、ごまかしがきかない味作りである。
サイドメニューがまた魅力的だ。季節によって、またその日の材料によって替わっていくのだが、いつも5種類。本日は、焼きナスとオクラのヤム、ヤムウンセン、エビ・豚・コリアンダーの春巻き、煮玉子とコリアンダー、ベトナムなます(辛)。ビールか酎ハイ、あるいは自家製ジンジャーエールを飲みながら、ちょいとつまんでフォーを待つのが正しい使い方。新井さんはずっと後ろを向いて、ちょっと腰をかがめてフォーを茹で続ける。
「ラーメン屋のつもりで始めたんです」。開いてみて驚いた。毎日、大変な行列。開店当初、鎌倉の友人は、「しばらくしてからでないと、行けないわねぇ」とぼやいていた。いまだ、行列は続く。ことに週末は、東京や他県から来る人たちで大賑わいだ。行列がないと見たら、ぜひ、飛び込むべし。私も、鎌倉に行くたびに、あの後ろ姿に会いたくて、ついつい寄ってしまう。

フォー・ラスカル
DATA 神奈川県鎌倉市小町1‒15‒5 ☎0467‒25‒1238 11:00~17:00(スープがなくなり次第終了) 日月休 ミニごはんも一緒に、ね。
氷で締めた蕎麦を ジントニックと。
大の蕎麦好きである。だから、旨いと聞けば、どこまででも行ってしまう。鎌倉は近いほうだ。
長谷のあたりは、平日でも大変な人だ。雑踏のような往来が続く。その人波をかき分けかき分け、どんどん進むと、階段の下にまるで隠れるように小さな行灯が見える。『波と風』。店舗は2階にある。店名は鎌倉だからじゃなくて、この店の店主夫妻に由来する。店主は『銀座 矢部』で和食と蕎麦をみっちり修めた柴山風さん。その「風」ですね。それから、銀座『モンド・バー』などで、これまたみっちりキャリアを積んだ妻・波瑠奈さんの「波」を合体させたものだ。波瑠奈さんは、PBO全国カクテルコンペティションで優勝という輝かしい経歴を持つ。つまり、プロフェッショナル同士の結婚で誕生した、最強の店だといえよう。
以来、地元客を中心に、週末は東京から足を運ぶ人も多い、人気店になっている。何と、子連れもOKだそうだ。昼は¥6,600のおまかせコースが中心だが、席が空いていれば単品注文も可。夜は¥11,000からのおまかせを。このおまかせが素晴らしいから、できれば夜もぜひ楽しんでいただきたい。夜ならゆっくり飲めますしね。鎌倉の店といえば、鎌倉野菜や地元の魚をウリにする店が多いが、この『波と風』はひと味違う。銀座時代からおつき合いのある生産者や仲買から、間違いのないものを仕入れているのだ。魚介は豊洲と明石から、野菜は京都と北海道から。せっかく鎌倉に来たのだからと思う方もいるだろうが、ここは店主に身を任せ、大きな安心に包まれよう。料理一つ一つにほーっと唸る。清楚で美しいし、当然ながらしみじみ旨い。そして、〆の蕎麦は、常陸秋蕎麦をごーろごろ石臼でひいた十割蕎麦である。うんうん、香り高い。もちろん、つゆも旨い。蕎麦湯はとろとろ系だ。
オープンキッチンの奥の方が、店主の風さん担当。〆の蕎麦用の大きな釜もある。手前が波瑠奈さんが活躍するコンパクトなバーになっている。背中側にはグラスやボトルがずらり。この波瑠奈さんのカッコよさね。ビールを注ぐ姿、シェイカーを振る姿、グラスを磨く姿、どこからどう撮っても絵になるのだ。プロフェッショナルってこういうことなんだなと思う。「波瑠奈さんが入れてくれる生ビールは、味が違うんです」と、常連客は言う。私もそう思う。要望があれば、日本酒を含め、ペアリングも可能である。蕎麦にはジントニックを合わせてくれる。これがまた、いいんだなぁ。ジントニックもやっぱり違う。ご夫婦のコンビネーションも、いかにもプロフェッショナル同士という感じで、キリッとビシッと気持ちいい。
平日は夜のみ。土日だけ昼も営業する。昼もコースが基本だが、席が空いていれば、蕎麦単品でもいただける。大人の休日におすすめしたい。これからの季節、蕎麦でつるりと涼やかに。
波と風
DATA 神奈川県鎌倉市長谷1‒16‒21 新倭人館2F ☎0467‒95‒1988 12:00~14:00(土日のみ) 17:30~21:00LO 月休ほか連休あり
Photo : Keisuke Fukamizu text : P
ライター 渡辺 紀子

















































