&EYES あの人が見つけたモノ、コト、ヒト。
ファッションからワインの世界へ。写真と文:平澤淳一 (ワインセレクター) #1August 05, 2026
なんでこんなにもナチュラルワインに惹かれてしまったのだろう。
思い返せば十数年前、私はファッション業界で働いていた。さまざまなブランドの服やアクセサリーをセレクトショップや百貨店へ提案する仕事で、流行の少し先を追いかける毎日。
仕事は充実していたけれど、どこかで「このままでいいのだろうか」と考えるようになっていた。そんな頃、出張で訪れたパリで、食通の友人にいくつものレストランやワインバーへ連れて行ってもらうことに。
その時間が、とにかく心地よかった。
グラスにはいつもナチュラルワインが注がれていて、そこにはデザイナーやアーティストもいれば、近所に住んでいそうなおじさんもいる。肩書きなんて関係なく、それぞれが思い思いに食べて、飲んで、話している。そして、ワインが驚くほどおいしい。
「好きなものを囲むと、人はこんなにも自然に笑うんだ」
そんな景色が、今でも記憶に残っている。
もともとお酒は大好きだった。だからこそ、「ナチュラルワインをもっと知りたい」という気持ちが芽生えたのは、ごく自然な流れだったのかもしれない。
気がつけば、ファッションの仕事は当時のビジネスパートナーに託し、まったく知り合いのいないワイン業界へ飛び込んでいた。今振り返ると、よくそんな決断ができたものだと思う。
昨年までは、東京・浅草のワインインポーター『相模屋本店』で買い付けやプロモーションに携わり、今は個人で〈gubigubi〉と冠して各地で流しのワインバーを開いている。
〈gubigubi〉という名前は、世界のどこへ行っても説明しやすい。難しい意味はない。ただ、グビグビ飲みたくなるようなワインが好きだから。
この連載では、ワインの知識を紹介するというよりも、ワインを通して出会った人たちや旅先で見た景色、そして心に残った時間について綴ってみたい。
振り返ってみると、私が惹かれてきたのは、ワインそのものだけではなかった。その一本の向こうにいる人や、その土地で流れる時間だったのだと思う。
〈gubigubi〉主宰 平澤淳一





































