MUSIC 心地よい音楽を。

ミュージシャン 原田郁子さんが選ぶ土曜の朝と日曜の夜の音楽。vol.4July 24, 2026

July.24 – July.30

Saturday Morning

Title.
Henry the Great
Artist.
Jackie Mittoo
 かつて、インターネットラジオで「胡麻みそズイ」という番組をやっていた。いつでもどこからでもアクセスすれば聞けます、というポッドキャストの前身のような仕組みで、当時としては新しい試みだった。外苑にあったスタジオに着くと、ディレクターの松浦さんが作ってくれた台本を見ながら、「ここでこんなことを話して、ここでこの曲をかけて」と打ち合わせしていく。オープニング、トーク中、エンディングの曲も好きな曲をかけていいということだったので、初回の収録日に、このアルバムをレコードで持っていった(この頃は、ライブラリーにない音源をラジオでかけたいときは、CDやレコードを放送用に録音してもらっていました)。ジャッキー・ミットゥは、ジャマイカの鍵盤奏者で、バンド「スカタライツ」のオリジナルメンバー。レゲエ、ロックステディ、スカと呼ばれる音楽のキーボードプレイ、アプローチを生み出した1人、と言ってもいいかもしれない。レゲエビートのバンドサウンドの上で、オルガンやエレピを伸びやかに弾く。ざらっとしていて、気持ちいい。イントロを少し聴いてから、キューが出たらカフ(手元でマイクをオンオフできる装置)を上げて話し出す。次にかける曲について話したら、「それでは聴いてください、クラムボンで『Folklore』」というように曲フリをする。ヘッドフォンでじっくり聴いて、キューが出たらカフを上げて「聴いていただいたのは」ともう一度、曲紹介。少し感想を言って、次のパートへ。ジャッキーの次の曲のイントロを少し聴いてから、キューが出たらカフを上げて話し出す。「Get Up and Get It」「Reggae Rock」「Oboe」「Wall Street」など、どの曲も、聴くと一瞬でスタジオのブースにワープする。今回、土曜の朝に、おすすめしたい楽曲「Henry the Great」は、ラジオのオープニングで流れていた曲です。イントロを聴くと、自動的に「i-radioをお聞きの皆さん、こんにちは、クラムボンの原田郁子です」と言ってしまうくらい、体に染み込んでいる曲。——地面から陽炎がのぼって、少し歩くだけで汗が噴き出してくる。そんな灼熱の季節に、ジャマイカの音はよく似合います。よかったらアルバムを通して、お楽しみください。
アルバム『The Keyboard King at STUDIO ONE』収録。

Sunday Night

土曜の朝と日曜の夜の音楽。
Title.
cape
Artist.
rei harakami
 ラジオ番組「胡麻みそズイ」は、10年続けさせてもらった。バンド、ソロ、サポートしているプロジェクトについて。ライブのお知らせや、新曲を初めて聴いてもらうとき。ツアー中は、「〜〜のお店に行って〜〜が美味しかった」などローカルな話や会場で感じたこと、最近思っていること、などなど。ものすごくつたなかったと思うけど、自分の声で伝えられる場があったことは、ありがたいことだったんだなぁと思う。時々ゲストを迎えて、いろんな話をしたり聴いたりできたことも、嬉しかった。最多出演は、タブラ奏者のU-zhaan。rei harakamiさんと2人で、映画『モテキ』のアフレコ収録を終えて、ふらっと遊びに来てくれたことがあった。つっこみ役だと思っていたユザーンに、ぼそっとつっこみを入れ続けるハラカミさん。それを聞いて、嬉しそうに笑うユザーン。私もつられて笑った。笑いすぎて、収録の後半、眠たくなってきた。それが2人にバレバレで、すかさずつっこみが入って、また笑った。——というところまで書いて、ユザーンが、この日のことをツイートしていることを知りました。シンクロ、、。15年も経つんだなぁ。——続けます。「胡麻みそズイ」が終わると言われて、それはそれは寂しかった。でもどうしようもない。「これまでありがとう」を込めて、最終回を収録したけれど、なぜかオンエアされることはなかった。リスナーの皆さんにちゃんと挨拶できないまま、突然番組が終わったみたいになってしまったことが、申し訳ないなと思っていた。でもずっとモヤモヤしているのも嫌だったので、『キチム』で「復活ラジオ」というイベントをはじめることにした。公開収録のようにお客さんに集まってもらって、開演時間になると「ON AIR」の明かりをつける。ゲストにユザーンを迎えて、ジャッキー・ミットゥのイントロを少し聴いてから、松浦さんのキューが出たら話しはじめる。お互いの選曲を皆で聴いて、喋って笑って、最後にライブをする。回を重ねるごとに、ユザーンはゲストではなくレギュラーになり、カレー屋の小城くん(水道橋と神保町の間で、お昼は『インド富士子』、夜は『ムンド不二』と言う名前でお店をやっています。ぜひ食べに行ってね)に出張してもらって、全員でカレーを食べたり(美味しかったなぁぁ)、タブラの先生の神がかったライブ映像を観たり(凄すぎた、、)。『キチム』という場所の特性を活かしながら、ネガティヴを楽しみに転換することができて、嬉しかった。あるとき、ハラカミさんの話になって、ユザーンがふいに「みんな、ハラカミさんのライブ、みたことある?みたい、よね」と言った。かと思うと、凄まじい集中力で、自分のケータイから音源を見つけて、PA卓に繋いで、爆音で鳴るハラカミさんと一緒に、タブラで「cape」を演奏した。その気迫、鬼気迫る演奏、、、!!!!! まったく予定になかったことが、目の前で、ぶわあああああっと、生まれている。2人、の、再会。ただただ圧倒されて、鳥肌が立つ、、、。 終わった瞬間、聴いたことがない、地鳴りのような歓声が起きた。ユザーンは一言も何も言わずに、楽屋に戻っていった。あの渦、火柱が、天までまっすぐ立ち昇るようなエネルギーを、忘れることはできない。ーーー私が言ううまでもなく。ハラカミさんの音楽は、ハラカミさんにしか創り出すことができない音楽で、とてつもなく純度が高い。透明な粒子が飛び交って、どこか広い世界、もう一つの次元に連れ出されるような、そんな感覚にもなる。ここしばらく、好きな音楽、大事な音楽を聴き返したり、思い出したりしていました。聴いていると溢れてきて、溢れてくるからたくさん書いた。自分の内側で鳴っている音楽と記憶が、いかに深く結びついているか。音に出会う旅はつづく。またどこかで! アルバム『red curb』収録。

edit : Seika Yajima


ミュージシャン 原田郁子

原田郁子
1975年福岡生まれ。1995年にミト、伊藤大助と3ピースバンド「クラムボン」を結成。歌と鍵盤を担当。バンド活動と並行して、ソロ活動、さまざまなミュージシャンとの共演、共作、舞台音楽、執筆、ドローイングなど活動は多岐に渡る。吉祥寺『キチム』の立ち上げに関わる。これまでにソロアルバム『ピアノ』『気配と余韻』『ケモノと魔法』『銀河』、2023年に詩人・谷川俊太郎との共作曲「いまここ」、アルバム『いま』を発表。2026年、二階堂和美のニューアルバム『潮汐』にプロデュースで参加。クラムボンのカヴァーアルバム『LOVER ALBUM』『LOVER ALBUM2』がアナログ盤となって発売された。

clammbon.com/ikuko

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