MUSIC 心地よい音楽を。
ミュージシャン 原田郁子さんが選ぶ土曜の朝と日曜の夜の音楽。vol.1July 03, 2026
July.3– July.9
Saturday Morning

「いっこ、午前中のない人生は短いぞー」。いつか祖父に言われたことがある。呑み助だった祖父にも夜更かしの時期があって、気がついたらあっという間に時が経っていて、はっとしたことがあったのかもしれない。その言葉には「ほんとにそう思ったんだろうな」という実感が含まれていて、聞いた瞬間ぎくっとしたし、今も時々ふっと思い出す。ようやく(と言っても遅めの)午前中に起きられるようになったけれど、世界が明けていく空気を知っている? と聞かれたら、すみません、だいたい夢の中におります。お天道さまと真逆の生活を長らく続けてきました。夜中まで作業して、鳥がちゅんちゅん鳴きはじめて、朝だ、、となることは、今もたまにあり、遮光カーテンを閉めて眠りにつきます。と答えなくてはいけないだろう。——ブレスではじまるこの曲に耳を澄ませると、次々と光景が立ち現れてくる。角銅さんの歌声の中にある透き通った空気が、朝の光を連れてくる。ドラムを叩いている石若さんがピアノも弾いていることに、いつも静かに驚く。二人の呼吸が描きだす、しなやかな世界。あーー、、、朝は、私にとって憧れみたいなものかもしれないな。おはよう、今日も二度寝しました。
アルバム『Songbook』収録。
アルバム『Songbook』収録。
Sunday Night

高橋幸宏さんがキュレーションを手がけてきたフェス『WORLD HAPPINESS』が、9年ぶりに代々木第一体育館で開催されて、細野晴臣さんのステージにバンドメンバーとしてお供させていただいた。台風が2つやってきて、去っていった日曜の夜。大きな空間に大きな音がどーーーんと響いて、たくさん人が集まっている。久しぶりのでっかさに全身の産毛がひゃっと逆立つ。しかしながら「緊張するー」などとは言っていられない。対バンのバンドがライブしている幕一枚後ろで、楽器と機材を組んでいく。こっちにこれを置くとこうだからこっち側に持ってきて、、モニタースピーカーの位置やマイクの角度など、微調整を続ける。はじまってしまうとあっという間。時間の感覚がなくなる。今日もいいライブになりますように!!! チーム全員がそう願って準備している時は、時間との戦いなのだ。——無事におわって、、なんだかずっとふわふわしている。メンバー、スタッフと声をかけあって、ビールで乾杯する。楽屋を片付けて、「おつかれさま」と手を振って、帰宅したのが0時近く。シャワーを浴びて、汗を洗い流す。はぁ、、、ハイボールを作って、ぐびぐび。レモン買っとくの忘れたな。柿ピーをほおばる。耳の奥がわんわんしている。ベースラインがループしている。今日の細野さんのライブでは、高野寛さんをゲストに迎えて全員でSKETCH SHOWのこの曲を演奏した。嬉しかったな、、。キーボードのリフを口ずさむ。アルバムをフルで聴いてみることにする。グルーヴのかっこよさ、Funkyさ、ユーモア、粋だなぁ。そうだ、SKETCH SHOWのライブを『SHIBUYA-AX』に観に行ったことあったんだ。2人が並んで踊っていた。『SHIBUYA-AX』という会場は今はもうないけれど、クラムボンで何度もライブをしたところで、隣にある代々木体育館を見ながらいつも会場入りした。記憶の断片が、ぽっ、ぽっ、と浮かんできて、星のように瞬いている。ほへーー、、、。ここだけの話、眠りについたのは、空が白々してきた頃でした。
アルバム『audio sponge』収録。
アルバム『audio sponge』収録。
edit : Seika Yajima
ミュージシャン 原田郁子

1975年福岡生まれ。1995年にミト、伊藤大助と3ピースバンド「クラムボン」を結成。歌と鍵盤を担当。バンド活動と並行して、ソロ活動、さまざまなミュージシャンとの共演、共作、舞台音楽、執筆、ドローイングなど活動は多岐に渡る。吉祥寺『キチム』の立ち上げに関わる。これまでにソロアルバム『ピアノ』『気配と余韻』『ケモノと魔法』『銀河』、2023年に詩人・谷川俊太郎との共作曲「いまここ」、アルバム『いま』を発表。2026年、二階堂和美のニューアルバム『潮汐』にプロデュースで参加。クラムボンのカヴァーアルバム『LOVER ALBUM』『LOVER ALBUM2』がアナログ盤となって発売された。



























