MUSIC 心地よい音楽を。
ミュージシャン 原田郁子さんが選ぶ土曜の朝と日曜の夜の音楽。vol.3July 17, 2026
July.17– July.23
Saturday Morning

アフリカのKora(コラ)という楽器の音がとても好きだ。コラは、ボディがひょうたんで作られた楽器で、たくさん張ってある弦を指で弾くと、共鳴しながら、プリミティヴで、夢のような音を奏でる(ハープやギターの原型とも言われているんだそう)。2011年、震災のあと、音楽を聴くのがしばらくしんどかったときに、唯一、心に入ってきたのがコラの音だった。Will Newsomeというミュージシャンが、吉祥寺にある『キチム』(私の妹がオーナーのカフェとイベントスペースです)で演奏していて、生まれて初めて生で聴いた、コラの音に感動して、「一緒に演奏しませんか?」と声をかけた。Willは、帰国する予定だった飛行機を変更してくれて、福岡の「circle」というフェスやイベントのステージで共演することができた。一緒に音を鳴らしてみて、楽器の音もさることながら、Willの心が美しいんだなぁ、、とわかる。彼は、イギリス・ブリストル在住で、アフリカに修行に行って、独自の音楽を探求していて、帰国後に、私のソロの楽曲「青い闇をまっさかさまにおちてゆく流れ星を知っている」をカヴァー、レコーディングしてくれた。日本語を話さない人が日本語の歌を歌うと、意味から解放されて、響きだけになる。それがとても嬉しかった。Willとは、コロナ禍にもやりとりしていたのだけど、急逝してしまい、もう会うことは叶わない。時々、無性にコラの音が聴きたくなることがあって、その響きの中には、いつもWillがいます。—— コラ奏者が2人でつくった、デュオのアルバムが素晴らしい。1曲目、左の方から(おそらく)トゥマニ・ジャバテのコラが鳴りはじめて、右の方から(おそらく)バラケ・シソコのコラが重なってくる。ふわぁ、、、なんて気持ちいいんだろう! コラの音色は、文字を持たない人々が口伝えで、村やその家の歴史やニュース、物語を語り、歌い、演奏する「グリオ」という大切な役割を担ってきた。トゥマニは、代々グリオの家系に生まれて、71代目のコラ奏者なのだそう。ヘッドフォンで聴くと、2人の細やかなニュアンス、倍音の広がりを感じられておすすめです。アフリカの陽射しと風に包まれて、今日もよい1日を。
アルバム『New Ancient Strings』収録。
アルバム『New Ancient Strings』収録。
Sunday Night

「いくこー、女の人の声だけでライブしたいんだ。一緒にどお?」OLAibi(オライビ)のアイちゃんがある日、連絡をくれた。おもしろそう! エゴラッピンのよっちゃん、あふりらんぽのONI、コムアイ、アイちゃん、私の5人が集まって、料理家・野村友里さんのグローサリーショップ『eatrip soil』主催のイベントでライブすることになった。それぞれのソロ、そこに1人重なってセッション、次の人がソロ、そこに1人重なってセッションと、繋がったりほどけたりしながら、シームレスにライブしていって、、、さいごに、ステージの真ん中で料理をつくっている、ゆりっぺ(友里さんの愛称)を囲むようにして、私たちは歌とリズムだけで歌った。その時のモチーフがZAP MAMAの「Abadou」だった。遠い昔、古代の人たちが火を囲んで、踊ったり、歌ったり、祈ったりした、ように? 声と声が重なったときのあの感覚を、うまく言葉にできないけれど、それぞれがそっと抱えてきた、これまでのこと、哀しみや喜びが、ぐわわわわっと渦を巻いて、空に放たれていくようだった。—— 2023年の秋、アイちゃんは銀河へと旅立ち、自然界へと還っていった。時々、彼女の気配を感じることがある。あの日のライブを思い出すことも。アイちゃんが教えてくれたZAP MAMAのアルバム、めちゃくちゃかっこよくて愛聴しているよ。女の人が5人、集まって、声とリズムだけで、共鳴しあっている。生き物たちがおしゃべりしてるみたい。目の裏に空と大地が広がる。ふあーーーー、、、気持ちいい。リーダーで作曲家のマリー・ドルヌは、ベルギーとザイール(現コンゴ民主共和国)をルーツに持ち、幼少期にアフリカ先住民族と暮らした経験があるそう。ヨーデルのような裏声にひっくりかえす歌唱法、ポリフォニー(多声音楽)を習得して、音楽の学校で教えていたこともあるんだそう。彼女の生い立ち、苦難の時をくぐりぬけて、生み出した音楽には「調和」が溢れています。なんて、かっこいいんだろう。プリミティヴ、パンク、ニューウェイブが混在しながら、自然と呼吸しながら、奏でる。 オライビの音楽と通じるところがあるかもしれないな。日が暮れても、暑さが残る夜に、ZAP MAMAを鳴らしてみるのはいかがでしょう。どうぞよい夜を!
アルバム『ZAP MAMA』収録。
アルバム『ZAP MAMA』収録。
edit : Seika Yajima
ミュージシャン 原田郁子

1975年福岡生まれ。1995年にミト、伊藤大助と3ピースバンド「クラムボン」を結成。歌と鍵盤を担当。バンド活動と並行して、ソロ活動、さまざまなミュージシャンとの共演、共作、舞台音楽、執筆、ドローイングなど活動は多岐に渡る。吉祥寺『キチム』の立ち上げに関わる。これまでにソロアルバム『ピアノ』『気配と余韻』『ケモノと魔法』『銀河』、2023年に詩人・谷川俊太郎との共作曲「いまここ」、アルバム『いま』を発表。2026年、二階堂和美のニューアルバム『潮汐』にプロデュースで参加。クラムボンのカヴァーアルバム『LOVER ALBUM』『LOVER ALBUM2』がアナログ盤となって発売された。































