&EYES あの人が見つけたモノ、コト、ヒト。
31文字で感情を詠む。日本の美しいことば。写真と文:カン・ハンナ(タレント・歌人)#2July 17, 2026
日本の美しいことばについて連載を書くことになった際に私の頭に一番初めに浮かんできたのはやっぱり短歌でした。1300年以上の歴史を持つと言われている日本の伝統文学である短歌。ご存知の通り、五・七・五・七・七という31文字しかない定型詩なのですが、不思議なことに、たった31文字しかない短歌には人間の喜びや悲しみ、悔しさや寂しさという様々な感情が詠まれていて、読み手としても何度涙したのか数え切れないほどです。私は短歌が見せてくれる日本語の世界を「美しい引き算の文学」とよく言いますが、それというのも文字数が制約されているなかでここまで作者の気持ちが伝わるものは世界のどこにもないと思うからです。

手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が 河野裕子
こちらの歌は歌人の河野裕子が乳がんの闘病中、亡くなる前日に夫である永田和宏に口述筆記で伝えた、非常に切なく有名な辞世の短歌です。息も絶え絶えな極限状態のなかで、それでも愛する「あなた」に触れたいと願う、夫への深い愛がまっすぐ伝わります。想像をするだけでも切ない気持ちになりますが、この歌が100年、200年以上残るものとなり、お二人の愛も永く永く記録されていくと思うと、死ぬ直前までことばと向き合った彼女の人生はとても素敵だったなと強く思います。
ところで、私は母国語じゃない日本語で毎日歌を詠んでいます。今は母国語の韓国語よりも自分の気持ちを一番に表現してくれる言葉が日本語となっており、1300年以上の歴史を持つと言われている短歌の世界で、外国人歌人として日本語をとことん愛する人でいたいと思っています。時々韓国にいる母が日本語の短歌を読めたらいいなと思う時もありますが、離れて暮らす最愛の母のことを歌にする人生は私にとってかけがえのない幸せなのです。

寂しくて雲散しつつ消えそうな母を抱き込む強く抱き込む カン・ハンナ『カジョクのうた:韓国から来て、日本で暮らす私が見つけた家族の形』
タレント・歌人 カン・ハンナ































