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「わたしの部屋ができるまで」というタイトルをめぐる、ごく個人的な話。August 20, 2026

「わたしの部屋ができるまで」というタイトルをめぐる、ごく個人的な話。&Premium編集後記松崎彬人
自邸の新築工事中に初めて付いたドア。元々別の家に取り付けられる予定だったのが、寸法が合わずに余ってしまったということで、家具職人さんの倉庫に眠っていたものを格安で譲ってもらいました。このドアをめぐる奇妙な縁についても、また別の機会に……。

2012年、僕が高校生の頃です。下宿の6畳にも満たない部屋からインターネットを通してたくさんの物事に出合っていたなかで、あるブログに夢中になりました。“Ready for the House”、直訳すると「その家のための準備」。誰かが、自分の家を作るにあたっての過程や出合ったものを載せている様子で、世界中の“独特な”家具や建具、クラフト、デザインプロダクトなどがほぼ写真のみで紹介されていました。そのブログは2014年から更新が止まったままですが、僕はその後も何回も見返しては、アアルトやイームズといったデザイナーを初めて知ることになります。インテリアへの興味の入口になった媒体で、その後の趣味や家づくりにおいてとても影響を受けました。

このブログが、アメリカ・ロサンゼルスを拠点とする彫刻家、リッキー・スワローによるものだと知るのは、「Casa BRUTUS」の2013年3月号「みんなが集まるキッチン」にリッキー邸が載っていたのを目にしたとき。浪人を経て大学生になる春でした。浪人生の間に弊社の「POPEYE」がリニューアルしたのをきっかけに、僕は雑誌をたくさん読み始め、「BRUTUS」や「Casa BRUTUS」にも手を伸ばし、大学生1年生の冬には本誌「&Premium」が創刊。当然読んでいました(その4年後に「&Premium」編集部で働くことになるとは微塵も思っていませんでした)。

余談が過ぎましたが、先述の「Casa BRUTUS」に出合って“the House”とはリッキー・スワローの家だったことを知ります。“Ready for the House”とは、リッキーが「自分の家ができるまで」を記録したものだったのです。(もしかしたらこのタイトルは元々、Jandekのアルバム「Ready For The House」から取られたものかもしれません。いつかリッキー本人に聞くことができるでしょうか)

それから僕は社会人になり、20代半ばで結婚。2019年から家探しをスタートし、結局は2021年に新築を建てることになります。せっかくなので、SNSで家造りの過程を記録することにしました。“Ready for Our House”を作ろうと思ったのです。最初の投稿は2021年9月2日。棟上げした直後、ダイニングになる予定のスペースの写真。「#僕らの家ができるまで」というハッシュタグを付けて投稿しました。

ドアノブやフック、モールディング、窓の取り方、家具のデザイン……、改めてそのハッシュタグを見返してみたら、自分の家造りが、膨大なディテールの意思決定の上に完成したことを実感します。新築での家造りはきっと、人生で最初で最後。頭のなかで更地に必死で絵を描いてから、最後の家具が搬入されるまでに5年がかかりました。そうした月日を収めた自分の投稿も、100件以上を重ねました。

自分がイチから家づくりをしたからこそ、実感したことがあります。居心地のいい住まいに暮らす人はきっと、「気持ちいい」と思える空間を何度もイメージして、空間全体からディテールにわたって、納得できるまで部屋づくりをしたのだと思います。その判断や過程のひとつひとつを住まい手に尋ねることが出来たら、きっと今後の部屋づくりに役立つはず。そうして、各々の「わたしの部屋ができるまで」を取材する特集が生まれました。

余談を重ね、最後に自分の家の現状を振り返ります。2024年の夏にようやく全ての家具が揃ったものの、その秋に子どもが生まれ、一度出来上がったインテリアを3ヶ月も経たないうちに崩すことになります。目まぐるしく過ぎる育児の日々のなかで、部屋は荒れに荒れていきました。しかし2歳を前にした近頃、ようやく、子どものいる生活にインテリアを適応させられるようになってきました。一度快適さを失った空間が少しずつ蘇り、家造りの楽しみが再燃してきたところです。

(本誌編集部/松崎彬人)

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