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言葉が呼び覚ます旅の記憶。編集後記「旅と、本と」June 19, 2026

屋久島を代表する滝のひとつ「千尋の滝」を前に。雄大な大自然を前に、思わず息をのむ瞬間でした。
屋久島を代表する滝のひとつ「千尋の滝」を前に。雄大な大自然を前に、思わず息をのむ瞬間でした。

最新号の特集は「旅と、本と」。あの物語の舞台となった場所を歩いたり、詩人の残した言葉からその足跡を辿ったり、多くの本に包まれる場所を訪ねたり……。テーマを持って本と旅する日本の美しい町案内を中心に、旅へと誘う言葉やアートブック、旅好きの読書家に聞いたとっておきのひとり旅プラン、全国47都道府県のいい本屋が案内する“旅が楽しくなる”ブックガイドなど、旅の経験をより豊かにしてくれる本の存在について深く考えた一冊です。

思い出深い取材の一つが、鹿児島・屋久島への旅。40歳を前にして家族と共に東京からこの地へ移住し、田畑を耕しながら詩を綴り、自然にとって人間とは何かを問い続けた詩人・山尾三省。以前から、彼の言葉や考え方が、価値観の転換を迫られる現代にも多くのヒントを与えてくれるように感じていたため、今回の取材となりました。

屋久島は、1993年に日本初の世界自然遺産に登録された、神秘的な大自然が広がる島です。樹齢数千年の屋久杉や、壮大な滝、車で通り過ぎる僕たちを全く恐れることなくリラックスした姿を見せてくれる鹿や猿たちが、島の伝統と文化を大切に暮らす人々と共生している様子が印象的でした。山も海もあって、多様な植物が生き生きと育っている。勝手なイメージとして「自然は美しいけど、訪れるにはなかなか過酷な環境かも…」なんて少し不安に思っていましたが決してそんなことはなく、僕たち旅人にも優しく、それでいてツーリスティックになりすぎていない雰囲気も、とても居心地がいいなぁと思いました。

西部林道の車道でくつろぐ猿の姿。
西部林道の車道でくつろぐ猿の姿。
山尾三省さんの書斎『愚角庵』で見た、三省さんの蔵書の一部。
山尾三省さんの書斎『愚角庵』で見た、三省さんの蔵書の一部。
旅先へ持っていったのは山尾三省の代表作の一つ、『火を焚きなさい 山尾三省の詩のことば』(野草社)。
旅先へ持っていったのは山尾三省の代表作の一つ、『火を焚きなさい 山尾三省の詩のことば』(野草社)。

山に夕闇がせまる子供達よ
ほら もう夜が背中まできている
火を焚きなさい
お前達の心残りの遊びをやめて
大昔の心にかえり
火を焚きなさい

-『火を焚きなさい 山尾三省の詩のことば』(野草社)より

自然と共に生き、家族と共に暮らすことを常に考えていたことが伝わる山尾三省の有名な詩の一節です。東京へ戻った後も、彼の言葉に触れると、屋久島での体験が鮮明に思い出される気がします。

お気に入りの一冊を携えて、または特別な一冊と出合うために。この夏、旅へ行きたくなる一冊ができました。ぜひ手にとっていただけたら嬉しいです。

(本誌編集部/利根正彦)

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