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旅とつまみ。台南の夜市で出合った、完璧な三杯鶏(サンベイジー)。写真と文:桑原亮子 (料理家) #1June 08, 2026
このたび、「〇〇とつまみ」というテーマでコラムを書かせていただくことになった。
なんでつまみ?と思われるかもしれないが、そこに深い意味はあんまりなく、私が単なる酒飲みだからだ(そして酒に関してマニアックなこだわりがあるわけでもない)。
単につまみのレシピを載せるのでは面白くないので、視点を変えつつ書いてみようと思っている。お気に入りの一杯を片手にゆるく付き合っていただけると嬉しい。
近年は台湾にちょくちょく出かけている。 食べ物も美味しく、治安も良く、何より日本から近いので、そんなに気合いを入れずに肩の力を抜いて付き合える感じが心地よい。 亡くなった祖父が台湾の方と仕事をしていたこともあり、台湾について知りたくなったというのもある。そんなことを思うようになったのも私が歳をとったからか。
何度か訪れた中でも、台南の夜市で食べた三杯鶏(サンベイジー)は忘れられない思い出だ。その日、夕飯を終えた我々は、まだ飲み足りないメンバーを募って夜市に繰り出すことにした。 夜市に着いた我々は、なぜかサバヒー(台湾料理でよく使われる魚)の粥を食べた。 大概の酒飲みならわかるだろうが、粥と酒のシナジーは著しく低い。 そのうえ、台湾料理の汁ものや麺、粥は一般的にかなりやさしい味付けで、酒を飲みに来たはずの我々の酒はまったく進まなかった。 粥が悪いわけではなく、そもそもメニューのチョイスが間違っていたのだ。
「やっぱり、粥と酒とは合わなかったね」なんて、ちょっとしょんぼりしながらも、これじゃ終われない!と気を取り直して、食堂に入り食べてみたかった三杯鶏をオーダーした。
三杯鶏とは、台湾料理によく使われる九層塔(台湾バジル)と鶏肉を合わせて炒めたものだ。九層塔はミントのような清涼感がある香りが特徴で、台湾ではサンドイッチのバジルペーストにもこのハーブが使われていた。 市場でもよく見かけたな。
厨房にいるのは、腕にタトゥーがガッツリ入り、金のネックレスをじゃらじゃら着けた若いお兄ちゃん。本当にこのヤンチャそうなお兄ちゃんに三杯鶏を任せて大丈夫なのかと、私は何度も厨房を覗いた。 20分ほど経って、出てきた三杯鶏を見て我々はとても驚いた。照りも香りも、盛り付けの美しさも、すべてが完璧だったのだ! 味付けの濃さもばっちりで、油と九層塔の香りが圧倒的に食欲と飲酒欲をそそる。 夢中で食べて、台湾ビールを流し込んだことを覚えている。
お兄ちゃんに対して邪な気持ちを持っていたこともちょっと反省した。
ごめんよ、お兄ちゃん。
お兄ちゃんに三杯鶏がとても美味しかったことを伝えると、一生懸命Google翻訳に熱心に何かを書き始めた。 作り方か何かコツを教えてくれるのかと、ワクワクしながら待つこと30秒ほど。 彼は「鶏」とだけ書かれた画面を我々に誇らしげに向けてくれた。 鶏であることは重々承知している。 「鶏肉の処理が全てである」と言いたかったのか、「鶏肉の質がすべて」と言いたかったのかは謎である。 我々は顔を見合わせ、そのときのことを大笑いしながら、ほろ酔い気分で帰路に着いた。
今でも三杯鶏を作ると、この夜のことを思い出す。 そして出来立ての三杯鶏をつまみながら、この夜の話をしながら、みんなとお酒を飲むのが好きなんだ。
三杯鶏(サンベイジー)

〈材料〉2人分
鶏もも肉...1枚(300g程度)
ニンニク...2片
ショウガ..2片
バジル...たっぷり
ごま油...大さじ2
醤油...大さじ2
酒...大さじ2
砂糖...小さじ2
〈作り方〉
1.ひとくち大に切った鶏もも肉に醤油小さじ2(分量外)をもみ込んでおく。
2.フライパンにごま油を入れて、薄切りにしたニンニクとショウガを入れて香りを出す。
3.鶏もも肉を入れて色が変わるまで炒める。
4.醤油、酒、砂糖を加え、照りが出るまで強火で炒める。
5.バジルを加えて炒め合わせる 。
料理家 桑原亮子
























