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はじめての熱海で、祖父を思う。写真と文:長瀬ほのか (エッセイスト) #3July 22, 2026

 熱海の商店街を歩いていると、なにやら人だかりができていた。近づいてみると、カメラを持ったテレビクルーが見えた。どうやらロケの撮影をしているらしい。その集団の中にホリケンらしき人がいたので、「ホリケンだ!」と興奮気味に夫の肩を叩いたが、よく見るとその人はカメラの画角の外にいて、ホリケンに似ているだけのスタッフだった。無駄にはしゃいでしまった。

 そろそろ甘いものでも、というタイミングで、大人気店らしい『熱海ばたーあん』が現れた。私はさほど甘党ではなく、あんこへの興味も薄い方なのだが、バターと言われると話が変わってくる。そんなのおいしいに決まっているからだ。実際に食べてみるとやはりバターの力は絶大で、あんこの甘さとしっとりしたパンの食感がよく合い、大変おいしかった。

 こうして時たま、おいしいあんこのお菓子に出合うと、祖父のことを思い出す。父方の祖父は5年前に、母方の祖父は今年のはじめに亡くなった。二人とも甘いものが好きで、よくあんこのお菓子を食べていたイメージがある。「こういうのをお土産にしたら、きっと喜んだだろうな」と、あまりマメに会いに行きもしなかったくせに思ったりもする。まあそんなことを言っても今更どうにもならないので、私がおいしくいただくのみである。祖父二人にはあの世でよだれをたらしてもらうほかない。祖母二人は幸いまだそれなりに元気なので、今度帰ったら熱海に行ったことを話そうと思う。

はじめての熱海で、祖父を思う。写真と文:長瀬ほのか (エッセイスト) #3 | 薄皮のパン生地の中に粒あんとバタークリームが詰まった「熱海ばたーあんパン」。
薄皮のパン生地の中に粒あんとバタークリームが詰まった「熱海ばたーあんパン」。
はじめての熱海で、祖父を思う。写真と文:長瀬ほのか (エッセイスト) #3 | おいしいに決まっている。
おいしいに決まっている。

エッセイスト 長瀬ほのか

プロフィール写真
1988年北海道生まれ。東京都在住。古生物学者の夫との暮らしを記したエッセイ「古生物学者の夫」がnote主催の創作大賞2024で双葉社賞エッセイ部門を受賞。同作を収録した初のエッセイ集『わざわざ書くほどのことだ』(双葉社)を2025年に刊行。https://x.com/nagase_h

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