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選・文 / エトセトラブックスBOOKSHOP / September 15, 2022 本屋が届けるベターライフブックス。『あめふり』『やまのぼり』さとうわきこ作・絵 (福音館書店)

This Month Theme女性の生き方を考える本。

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生活はどんな人にもついて回ることだ。
料理、掃除、裁縫といった家事を、社会は主に"女性"に担わせ、献身的なイメージを重ねてきた。が、今では"素敵なライフスタイル"を送るための能力として、ジェンダーを問わずできておいたほうがいい、と考える人が増えているように思う。
長く愛されてきた絵本"ばばばあちゃん"シリーズは、家事能力というものを、本人の欲求を満たし、日常を愉快なものにするスキルとして描いている。どんなときも、ばばばあちゃんの手さばきには迷いがない。
『あめふり』では火を起こし、スパイスを駆使して長雨への不満を解消。『やまのぼり』ではカーテンを縫い合わせ驚きのアイデアで家を山にし、森の友だちとピクニックを楽しむ。
自ら手を動かし、自分で状況を切り開くことの面白さ、満足度の高さを教えてくれる。こんなふうになれたら、と思う。


選・文 / エトセトラブックスBOOKSHOP / September 08, 2022 本屋が届けるベターライフブックス。『欲望の鏡 つくられた「魅力」と「理想」』リーヴ・ストロームクヴィスト著 よこのなな 訳 (花伝社)

This Month Theme女性の生き方を考える本。

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SNS時代における"美しさ"や"理想の自分"への欲望について、スウェーデンのコミック・アーティスト/フェミニストの著者が、勢いのある言葉とカラフルなイラストで描いていく。今をときめくインフルエンサーのアカウント、歴史的人物のエピソード、哲学者の言葉など、著者が出会い吸収してきた事柄を、独特な思考で繋げ開陳してくれる様が楽しい。
しかしこの問題は、SNS登場前から、ずっと続いてきたことでもある。「白雪姫の母」という章では、王冠をつけた50代と70代の女性が次々と登場し、それぞれが"美"について語っていく。容姿への評価に影響され、うまく付き合おうと試み、年齢を重ね現時点での結論を持つに至るまでの物語だ。話し終えたあと、5者5様の表情で無言で鏡を見つめる大ゴマに虚を突かれる。読み手は自らが格闘してきた"美"にまつわる経験に思いを馳せることになるだろう。
どんな生き方を選ぶにしても、逃れられないことなのだろうか。考える一助になる本だ。


選・文 / エトセトラブックスBOOKSHOP / September 01, 2022 本屋が届けるベターライフブックス。『水の出会う場所』魚住陽子 著 (駒草出版)

This Month Theme女性の生き方を考える本。

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中篇集。どの物語にも植物と水の気配がある。「緑の擾乱」の主要登場人物は子を産まなかった姉タキ子と本家を継いだ妹ウタ子、甥カイとその妻の今日子(彼女もまた子を産まない)。季節ごとの恵みをくれる美しい庭や果樹園に流れるヴィヴァルディの音色に乗せ、墓守娘と周囲の人生が交錯する。カイは「憎み合っている」と思い込んでいるが、実際はそうでもない、しかしそれぞれに苦しんでいる女たち。終盤でタキ子が甥に言う「子を産む女だけが守ることができるものは、なくなったっていい」につまった、彼女の長い長い時間を思う。ラスト、カイと今日子の行動が周囲に風を通す。
「水の上で歌う」は夫を看取り娘も巣立った家に、気が合うわけでもない女性を間借りさせている60代の女性が主役。かつての女友達との思い出を胸に日々を生きる彼女が、別離のあとに“自分ひとりの部屋“を見つけるシーンは晴れ晴れとしている。
"イエ"から離れ、一人の人として生きる/生きようとするとき、女は真正面から女を想うことができる。そんな大人の女性たちが印象的な2篇だ。


選・文 / エトセトラブックスBOOKSHOP / August 25, 2022 本屋が届けるベターライフブックス。『流れのほとり』神沢利子 著 瀬川康男 画 (福音館書店)

This Month Theme女性の生き方を考える本。

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『くまの子ウーフ』などの児童文学で知られる著者の自伝的作品で、炭鉱技師の父親の赴任地である樺太で過ごした幼少期を綴る。北方民族との交流や大自然の描写も魅力だが、読んでみると思いがけず、主人公の麻子が周囲を観察しながら「女性」について考える様子に惹き込まれる。
父の言動に振り回される母、長男というだけで甘やかされる兄。身体の成長とともに大人しくなってしまう、凛々しかった姉。華やかに化粧した置屋の女たちを蔑む人々への疑問。ひとり自然のなかでくつろぐ時間に、通りすがりの男たちから卑猥な言葉を投げつけられ怖い思いをする場面……。
落馬し亡くなった近所の女性を「男の真似をするからだ」と言う男たちに「男だって馬から落ちるよ」と言い返しながら麻子は、「なぜ女はこんなに行動に制限が多く、体はからかいの対象になるのか」と問う。女学校に入学するところで終わるこの物語の終盤で、麻子が自分の生き方を決める場面は胸にせまる。幼いなりに社会に疑問をもち、考えてきたからこそたどり着いた言葉だろう。


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雑誌『エトセトラ』『フェミニズムはみんなのもの』など、フェミニズムに関する様々な本を届ける出版社「エトセトラブックス」が経営するフェミニストのための書店。
住所:東京都世田谷区代田4–10−18 ダイタビル1F
営業時間:12:00 – 20:00
定休日:月火水日 *時々、こちらの曜日に営業することもあるのでSNSにて確認を。

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