&EYES あの人が見つけたモノ、コト、ヒト。
好奇心のままに作った、沖縄と金沢の宿。写真と文:室田啓介 (内見家) #4May 25, 2026
東京生まれの僕にとって、"故郷"という感覚は縁遠いものだった。沖縄出身の妻と那覇の実家に帰省するたびに、光も風も、人も建物も、すべてが日常の景色と違って見えた。「いつかは沖縄に別荘を」と夢見る僕を、「そんな余力がどこにある?」ともう一人の僕が打ち消す。その問答を何度繰り返したことか。
〈Airbnb〉の誕生が転機だった。世界中に暮らす人たちの個人的な空間に泊まれるというのは夢のようなサービスで、僕も面白そうな遊びに加わりたいと思った。これは沖縄に別荘を持つ言い訳……いや、夢を叶えるチャンスだ、と。
妻の実家近くの那覇で物件を探していたはずが、かわいい古民家に惹かれて初めて訪れた今帰仁村(なきじんそん)で、感性の針が大きく揺れた。ゆっくりと流れる時間と飾らない風景。「まだ、ここはバレてない」その直感をもとに、初めて訪れた土地でその日に家を買った。
数か月に一度、今帰仁に帰ると、友人たちが「おかえり」と声をかけてくれる。歩いて30秒先には、料理家の根本きこさんと店主の西郡(にしごおり)潤士さんが営むカフェ『波羅蜜』がある。イベント時には宿の椅子を貸し、潤士さんは焙煎した珈琲豆を宿に届けてくれる。宿の食卓には村の友人たちが集まり、遅くまで酒を酌み交わす。宿ができて早7年。今帰仁はすっかり、僕の"故郷"になった。
もうひとつの宿を始めたきっかけは、2021年のある日、世界の主要都市を旅してきた知人が今帰仁に訪ねてきたときのことだ。「どこでも宿をやれるなら、どこでやりたい?」と尋ねると、返ってきたのは金沢・主計町(かずえまち)という茶屋街の名だった。3か月後、僕は知人とともにその路地に立っていた。緊急事態宣言下で誰一人歩いていない夜だったのは、今思えば運が良かったのかもしれない。その街並みはまるで映画のセットのようで、「これ、映画美術の人と宿を作ったら面白いんじゃない?」と思いついた。
どうやら僕は"好奇心"が唯一の燃料らしい。”人生の転機”を自ら作れる不動産というホビーに、しばらくは飽きそうもない。この連載で出会った人たちも、きっと感性の針が揺れる瞬間を信じて動いた人たちだ。どこで暮らすか、何を選ぶかに「正解」はない。"縁"と"運"と"勘"。それだけを頼りに、人生は面白い方向へ転がっていく。
『ホビー不動産』代表/内見家 室田啓介





















































