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不動産を自分らしく楽しむ。 写真と文:室田啓介 (内見家) #1May 04, 2026
僕の寝室の壁一面を、ビカクシダが覆っている。品種により様々な個性を持つこの植物の沼にはまり、気づけば壁が見えなくなるほどの数になった。毎日のわずかな成長に、一人でニヤニヤしている。
オフィスでは、壁一面のファイル棚に、お気に入りの古物を勝手に並べてしまった。おまけにバルコニーには盆栽が70鉢くらいある。スタッフには小言を言われるけど、パソコンから目を上げた瞬間に飛び込んでくる景色は、ファイルより古物や盆栽のほうがずっといい。
ところで、僕は「内見家」と名乗っている。不動産を愛でたり、見立てたり、暮らしを想像することが好きだから。不動産は僕にとって仕事であり遊びだ。自分が心から惚れ込んだ物件に「まあ、この物件でいいか」なんて言われたら、こちらからお断りしてしまうこともある。この家を本気で面白がってくれる人が、絶対にどこかにいるはずだから。
最近、不動産が”資産価値”の名のもとに金融商品のように語られていて、ちょっと待って、と言いたくなる。引っ越しという人生の節目に、不動産は高い、工事費も高い、賃料も上がってもう無理、と途方に暮れている人が本当に多い。”価値”と名付けられた情報が、物件選びに”正解”があるかのように錯覚させ、人をますます焦らせる。いやいや、肩の力を抜いて、ギュッと狭くなったその視野を、もう一度フワッと広げてみるのはどうだろう。
なにに価値を感じるかなんて、本当は一人一人まったく違っていいはずだ。なのに、どうして他人のものさしに自分の選択を委ねてしまうんだろう。料理好きな人が、惚れ込んだうつわと道具に囲まれた、自分にぴったり馴染む台所をついに手に入れたとする。それだけでもう、毎日が違って見えるはずだ。
人生の多くの時間を過ごす自宅や職場は、植物にとっての土と同じくらい大切な場所。「感性」という植物は、よい土でこそ、よく育つ。人のものさしでその土を選ぶなんて、もったいない。内見で頼りになるのは、たったひとつ。その空間に立った自分の心が、どれくらい「好きかも!」と揺さぶられているか。そのメーターの針の振れ方だ。
この連載では、内見家として出会ってきた、その人だけの感性がまっすぐに息づいている暮らしを紹介していく。あなたの感性の針が、ぐらりと揺れる瞬間に出合えますように。
『ホビー不動産』代表/内見家 室田啓介








































