喧嘩しながらDIYしたキッチンの使い心地って?『&Premium』No. 79 2020年7月号より立ち読み / June 10, 2020

2020年5月20日発売の『&Premium』最新号の特集は、「使い勝手のいい、台所と料理道具」。

今回は16組の料理上手たちの台所を訪ねました。みんなが使いやすいようオープン収納にしたり、業務用やオフィス用キャビネットを採用して堅牢で実用的にしたり、それぞれに工夫やアイデアが詰まった台所が満載です。

ここでは、特集本編から、 〈工房正島〉を構える正島克哉さん、正島智恵さん宅のキッチンを紹介します。

DIYで叶えた斜めカウンターキッチン。

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築54年の古い家を自分たちでリノベーションした正島克哉さんと智恵さん。部屋が分かれて いたダイニングキッチンと和室の壁を取り払い、15畳のリビングダイニングキッチンに。

"ちょうどいい心地よさ"を探るためのDIY。

 克哉さんが器制作、智恵さんが布小物の制作を担当し「工房正島」という屋号で活動する二人。2016年に福岡県から岡山県の総社市に引っ越したのを機に、DIYで自分たちのキッチンを拵えたという。
「古い家を購入し、二人で解体作業を頑張りました。まず、リビングの扉から入ってくる人の様子やダイニングテーブルの風景を眺められるような繋がりが感じられる空間にしたくて、壁付けだったキッチンを移動させて斜めに配置したい、というアイデアが浮かんだんです」
 そんな克哉さんの考えに対して、当初、智恵さんは反対だったそう。 「単純に落ち着かなさそうに感じて しっくりこないな、と。疑問を感じ、たびたび喧嘩になりましたね。結果的には、主人の主張に負けて、斜め 45度のカウンターキッチンにしましたが、いまは使いやすさを感じています」と微笑む智恵さん。
 限られた予算で理想のキッチンを作るために、克哉さんは独学で電気工事士の資格を取得。しばらくの間、 二人でホームセンターに通い詰める日々が続いたという。 「キッチンのカウンターには、水に強いヒノキ材を。それ以外は安価な野地板を張って、サンドペーパーをかけて。壁は漆喰の粉を練って、自分たちでゼロから塗りました。途中、手を痛めることもありましたが(笑)」
 そう当時を振り返る二人は、口を揃えて「大変だった」と言うが、その作業をやり切った人にしか感じら れない充実感に満ちたキラリと輝く笑顔をしている。
「キッチンは制作のイメージを膨らませたり、自分が作ったものを確認したりする場でもあります。だから、 自分で作った器が美しく見えるように、古道具屋で購入した棚の背板や棚板を白く塗ってアレンジして壁から吊るしています。そんな作業が楽しいし、器制作もキッチンのDIYも 遊んでいるのと変わらない感じですね」と克哉さん。
 自分たちにちょうどいい心地よさを探るために、試行錯誤を重ねて手作りする。日々、"工夫したい何か" と向き合いながら、これからもキッチンを育てていくことだろう。

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独特の質感が気に入ったブリキ板を壁に張り、調理道具を定位置に整理整頓。
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型板ガラスのレトロな雰囲気の窓辺に棚を自作。塩壺や調理道具などを配置した。
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カウンターの脇には、克哉さんが愛する酒と、掃除道具を取り出しやすいように整理。
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克哉さん作の耐熱器の「平パン」を 2 個使いすることで、調理の効率がアップ。
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余った木材でりんご箱風に作った収納棚。壁に掛けてデッドスペースを有効活用した。
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健康のために酵素玄米を週 1 で炊く習慣が。 おいしく保存できる「保温ジャー」を愛用。
間取り
天井を抜いて梁を出して、開放感のある LDKに。窓側にあったシンクを移動し、 斜め45度に配置。作業台は業務用を選んだ。

正島克哉 正島智恵 〈工房正島〉
Katsuya & Tomoe Shoujima

陶芸家・佐藤烓に師事後、1997年に独立した克哉さん。〈工房正島〉として"日々の生活を楽しむ"器制作に励み、智恵さんが布小物の制作を担う。

photo : Masako Nakagawa edit & text : Seika Yajima

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