田舎の空き家をリノベーション。奈良の小さな「森の家」ができるまで。June 04, 2026





THINGS FOR BETTER LIFE #182 田舎の空き家をリノベーション。奈良の小さな「森の家」ができるまで。
田舎の空き家をリノベーション。奈良の小さな「森の家」ができるまで。June 04, 2026
テレンス・コンラン卿を祖父に持つフィリックスさんと、パートナーのエミリーさん、イギリスからやってきた二人が移住したのは奈良の山間の小さな村。築140年の荒れ果てた小屋が、モダンで快適な住宅へと生まれ変わるまでのストーリーと、小さな家に詰まったデザインのアイデアを紹介してもらいました。
「THINGS FOR BETTER LIFE」、今回のテーマは「田舎の空き家をリノベーション。奈良の小さな「森の家」ができるまで」。
Index
- 奈良・東吉野村に移住した理由。フィリックス・コンランとエミリー・スミス、奈良の小さな「森の家」ができるまで。#1
- 田舎の空き家をリノベーションして、モダンな住まいへ。フィリックス・コンランとエミリー・スミス、奈良の小さな「森の家」ができるまで。#2
- 自ら手がけた家具が彩る、日本様式の趣を残したリビング。フィリックス・コンランとエミリー・スミス、奈良の小さな「森の家」ができるまで。#3
- デザイン性と利便性を兼ね備えたキッチン&ダイニング。フィリックス・コンランとエミリー・スミス、奈良の小さな「森の家」ができるまで。#4
- 緑の景色とひと続きに感じるバスルーム。フィリックス・コンランとエミリー・スミス、奈良の小さな「森の家」ができるまで。#5
- 天窓から自然光が差し込む、春色に包まれたベッドルーム。フィリックス・コンランとエミリー・スミス、奈良の小さな「森の家」ができるまで。#6
- 伝統工法の機能美を宿した外観。フィリックス・コンランとエミリー・スミス、奈良の小さな「森の家」ができるまで。#7

奈良・東吉野村に移住した理由。フィリックス・コンランとエミリー・スミス、奈良の小さな「森の家」ができるまで。#1
INTERIOR 2026.5.29奈良県東部の山間に、ひっそりある東吉野村。深い緑の山々が連なり、清らかな川が流れる。その眺めはまさに日本の原風景といえるもの。人口はわずか1300人足らず。列車も高速道路も通っていない静かな村は近年、移住事業に積極的なこともあり、国内外のクリエイターを中心とする移住者も数多い。フィリックス・コンランさんとエミリー・スミスさんもイギリスから村へ移り住んだ。 フィリックスさんは、デザイン界の巨匠であり『ザ・コンランショップ』の創業者、テレンス・コンラン卿を祖父に持ち、若くして父と家具ブランド〈メーカー&サン〉を立ち上げ、デザイナー 兼経営者としてグローバル企業へと成長させてきた。そのセンスは祖 …

田舎の空き家をリノベーションして、モダンな住まいへ。フィリックス・コンランとエミリー・スミス、奈良の小さな「森の家」ができるまで。#2
INTERIOR 2026.5.30二人が移住を決めて下見に訪れた際には、建物の中に入ることはできず、外側のサイズだけを測りロンドンへ帰国。戻るとすぐにフィリックスさんはリノベーションのスケッチ(p.131上)を描き上げた。広さは約75m²。けっして広くはないものの、ロケーションに魅了された二人にとって家の大きさは最優先事項ではなかったという。 実際に改装を始めると、壊せない柱があるなど想定外の多くの問題が発生。「いったんすべてをリセットし、まず考えたのは家の中にいながら周囲の自然と一体化するような、窓を多く作ること」とフィリックスさん。シンボルツリーの柿の木が玄関から見えるように窓を配置。床には〈ハ・パートナーズ〉が手がける …

自ら手がけた家具が彩る、日本様式の趣を残したリビング。フィリックス・コンランとエミリー・スミス、奈良の小さな「森の家」ができるまで。#3
INTERIOR 2026.5.31かくして築140年の家は梁にその面影を残しつつも、モダンな住居へと生まれ変わった。大きなガラス扉の玄関から入ってすぐにあるのがリビングだ。中央には囲炉裏をイメージした暖炉が置かれ、ダイニング&キッチンとを緩やかに区切る役割を果たしている。「かつて家の中心にあった囲炉裏は、暖房や調理場を兼ねた日本の生活の象徴。とても大切な存在として捉え、センターに置くことを決めました」とフィリックスさん。ここにも日本で受け継がれてきた生活様式を、新たな形で未来へと引き継ぐ気概が顔を覗かせる。 「家の裏手にある柿の木は、この家のシンボルツリー。植えた人に思いを馳せ、これから先も続いていく気持ちを大切にしたくて …

デザイン性と利便性を兼ね備えたキッチン&ダイニング。フィリックス・コンランとエミリー・スミス、奈良の小さな「森の家」ができるまで。#4
INTERIOR 2026.6.1 New料理を作るのも食べるのも大好きだという二人。とりわけ週末には昼から夕方までキッチンに立って料理を作り、そのあと夜までゆっくり食事するのが楽しみだという。住まいにキッチンの占める割合が大きくなったのも、そんなライフスタイルを反映すれば当然のこと。高火力のオーブン付きガスコンロや、数多くの調理道具が整然と並ぶ様子からも、二人の料理への愛が伝わってくる。 この日は、エミリーさんが森で手に入れた紫陽花が窓辺に彩りを添えていた。自然はいつも身近にあり、暮らしとの間に境目はない。「山菜やきのこを長い歴史のなかで上手に生活に取り入れてきた文化があるのも、日本に惹かれた理由のひとつ」とエミリーさんはいう。 …

緑の景色とひと続きに感じるバスルーム。フィリックス・コンランとエミリー・スミス、奈良の小さな「森の家」ができるまで。#5
INTERIOR 2026.6.2 New「イギリス人はシャワーで済ませる人が多いけれど、私たちはお風呂が大好き」とエミリーさんは目を輝かせる。そんな二人が作り上げたのは、周囲の森とひと続きに感じられるようなコーナー窓と緑のタイルの浴室だ。「ピンクの壁とグリーンのタイルは、桜と葉をイメージしたもの。タイルは、高級品やいろいろな国のものもたくさん見ましたが、日本製の手頃なものに落ち着きました」とフィリックスさん。浴槽の蛇口には庭の散水に使われるものを取り入れたのも、気が利いている。踏み台には岩を使い、祖父から受け継いだサイドテーブルに植物を生けるしつらえもまた、ナチュラルな印象を際立たせていた。そしてなんといっても見どころは、シャワー …

天窓から自然光が差し込む、春色に包まれたベッドルーム。フィリックス・コンランとエミリー・スミス、奈良の小さな「森の家」ができるまで。#6
INTERIOR 2026.6.3 New意外にも畳に布団というベッドルームは、優しいピンクの壁に鮮やかなグリーンの畳。バスルーム同様に桜が咲く春を思わせる。窓の外には畑から続いていく山の景色が広がり、室内にいながら自然を心ゆくまで感じられる空間となっている。布団に横になり、新たに取り付けた天窓から見る星空は「最高の眺め」と二人は口を揃える。 吉野杉を使った壁収納は、エアコンを隠したルーバー、クローゼット、小さな引き出しなど役割を分けた収納スペース。畳の組み方をモチーフにデザインされており、6畳が壁に敷いてあるようなデザインだ。フィリックスさんが手がける床の木製タイルのサイズもまた、ちょうど畳1枚の12分の1。畳を基準に考えるデザ …

伝統工法の機能美を宿した外観。フィリックス・コンランとエミリー・スミス、奈良の小さな「森の家」ができるまで。#7
INTERIOR 2026.6.4 Newフィリックスさんを介して、いにしえと現代の職人によるコラボレーションのような改装を終えた家は、その外観においても、モダンな印象に反して日本の伝統工法がちりばめられている。外壁には板を少しずつずらして張る鎧張りを採用。一般的には120mmの板幅を3倍の360mmにすることで、通気性を高めている。一方で東の寝室側の壁には屋根材と同じガルバリウムを使用。隣地の畑に面するこの壁には強い雨風が吹きつけるため、外観デザインにアクセントを加えつつ、雨風をしっかりとしのげるようにした。 ダイニングの窓から続く屋外スペースは東屋のような仕立て。森の倒木を利用した柱を石で支え、屋根は耐衝撃性と透明性に優れたポ …