MUSIC 心地よい音楽を。

ミュージシャン 西寺郷太さんが選ぶ土曜の朝と日曜の夜の音楽。vol.4August 28, 2026

August.28 – September.3

Saturday Morning

Title.
まぶしがりや
Artist.
キリンジ
 ついに最終回ですね。素晴らしい執筆陣の中に名を連ねられて光栄です。前回連載を担当された原田郁子ちゃん、堀込泰行くん、堀込高樹さん、冨田恵一さん、など、ざっと見ただけでも昔からの仲間や先輩が沢山で。キリンジとクラムボンは、〈ワーナー・ミュージック〉仲間でほぼ同期なんです。来年が、僕のバンド、ノーナ・リーヴスにとって3人編成でメジャーデビューしてから休まず30周年イヤーなんで、皆、大体同じ感じなはずで、長い仲です。泰行くんとは大学生の頃から縁がありましたし(最初に聴いた宅録デモから天才でした!)。

 キリンジをプロデュースされていた冨田恵一さんには、初期にプロデュースして頂きました。つい最近、’90年代後半の曲ばかりをセットリストにした公演を有楽町で行って、冨田さんと一緒に作った曲も2曲セレクトしたんです。あの時の冨田さんは自分たちにとって「大先輩」って感じだったんですが、まだ30代だったと思うと本当にすごいですね。皆さんのコラムも読ませてもらいましたが、高樹さんが選ぶジョージ・ハリスンの「Love Comes To Everyone」や、ポール・マッカートニーの「Let ’Em In」は、僕も世界で一番好きな曲のひとつなので嬉しかったです。三浦透子さんの選ばれたコリーヌ・ベイリー・レイの「Put Your Records On」も大好きで。挙げ始めたらキリがないですが、こういうプレイリスト的な連載は本当にいいですね。まとめて読んで、聴いてみようと思います。

 ノーナ・リーヴスのメンバーは、3人それぞれ個人活動を並行しつつ、これまで日々を重ねてきました。ドラムの小松シゲルは、佐野元春さんとの THE COYOTE BAND の一員としてだけでなく多数のセッション、レコーディング、ライヴに参加、藤井風さんの「真っ白」というシングルでも彼独特のタイトでグルーヴィーなリズムを刻むなど、出会った学生時代からスーパーなドラマーでしたが、年々グルーヴの深度、心地よさ、アドレナリン上昇度数が上がっていることに素直にリスペクトしています。最後の土曜の朝は、’90年代からこれまでの長い想い出も込めて、キリンジで小松が初めてドラムを叩き、なぜか僕もスタジオまで見学に行ったというエピソードもある「まぶしがりや」を。

 去年、高樹さんと一緒にノーナ・リーヴスで、カヴァーが出来て感激しました。
アルバム『OMNIBUS』収録。

Sunday Night

土曜の朝と日曜の夜の音楽。
Title.
Gordon’s Gardenparty
Artist.
The Cardigans

 つい先日、5年ぶりのシングルが配信リリースされました。タイトルは「BAD Beauty!」。今、メンバー3人で協力して新作アルバムを作っている最中です。今年の頭から僕の自宅スタジオに集まり、久しぶりにたくさん共作した曲のうちの一曲が、まず世に出た、という感じです。
ドラマーの小松シゲルだけでなく、ギタリストの奥田健介も、多くのアーティストを支えるミュージシャンとしても活躍しています。つい先日、『渋谷クラブクアトロ』へ観に行ったカジヒデキさんのソロデビュー30周年記念ライヴでも、彼がギターを担当していたんですが同じバンドのメンバーながら改めて感動しました。

 ゲストとしてカヒミ・カリィさんが登場され、数曲歌われたんですが、’90年代からそのままタイムスリップしてきたような圧倒的なカリスマ性と、ささやくような小さな歌声に改めて心を動かされて……。ともかく、歌声だけでなく喋る声も小さすぎて、会場中が息を潜め、彼女の一挙手一投足に集中する感じが楽しかったです。美しさ、存在感も半端なくて、彼女の周りの皆が圧倒されていました。

 『&Premium』読者の方には、’90年代のいわゆる「渋谷系」が自分の青春時代だ、とおっしゃる方も多いのではないでしょうか。この日は小西康陽さんもDJと弾き語りで登場されました。特に小西さんの弾き語りは、まるでバート・バカラックが自分で自分の歌を歌っていたステージのようで、それはそれは素晴らしいので、ぜひ一度体感していただきたいです。10月には僕も小西さんと一緒に弾き語りをします。

 夏の始まりに、リチャード・リンクレイター監督の『ヌーヴェルヴァーグ』という映画が公開され観に行きました。ジャン=リュック・ゴダールが『勝手にしやがれ』を撮影する現場を、脚色を交えながら再現した作品で、次の日にオリジナルのゴダール版も観たくなり映画館へ。何年かおきに何度か観ているので、途中でちょっとだけ寝てしまいましたが(笑)。当時のパリで若い仲間たちが競い合うように監督デビューし、スキルも経験も十分じゃないなか、それまでのルールを変えながら奮闘していく姿が、’90年代、日本で「渋谷系」と呼ばれた若いミュージシャンやカメラを持った女の子たちの姿と重なりました。
カジ君のライヴの楽屋やステージも、まさにあの時代の仲間たちが再集結したような輝きに満ちていて。僕は少し後の世代ではあるんですが、’90年代を東京で過ごし、ミュージシャンになった人間なので素晴らしい体験が出来たなと、今、振り返っています。ひとりひとり、仲間との出会いに感謝しかありません。あの時代に出会ったアーティストやミュージシャンが「2020年代半ば」の今もアクションを続けていることの奇跡を味わいながら、自分たちも前進していきたいと思いました。

 最後の「日曜日の曲」は、カジ君にも縁の深いトーレ・ヨハンソンのプロデュースで、僕が個人的に最も「’90年代」を感じるバンドのひとつ、カーディガンズの「Gordon’s Gardenparty」。
本当にありがとうございました。
アルバム『LIFE』収録。

edit : Seika Yajima


ミュージシャン 西寺郷太(NONA REEVES)

西寺郷太
1997年にNONA REEVESのシンガー、メイン・ソングライターとしてデビュー。 以後、音楽プロデューサー、作詞・作曲家としても少年隊、SMAP、V6、YUKI、岡村靖幸、A.B.C-Z、鈴木愛理などの多くの作品、アーティストに携わる。 バンド以外でも小説家、脚本家、ライター、MCや自身のYouTube チャンネルNishidera Gota Channel(NGC)では映画『Michael』の劇場公開に合わせたマイケル・ジャクソンの解説動画が100万以上の再生数を記録。これまでにソロとしてカバーアルバムを含め4枚をリリース。弾き語りなどソロライブも定期的に実施。

x.com/gota_nonareeves

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