北欧で見つけた美しいデザインと、心地よい部屋づくりのヒント。

機能を土台に、時間と記憶を育む住まい。セラミックアーティスト・森 昭子さんが北欧に移住して学んだ、部屋づくりのヒント。August 27, 2026

自分にとって〝居心地のいい部屋〞を追求した人々を訪ねた&Premium154号(2026年10月号)「わたしの部屋ができるまで」より、セラミックアーティスト・森 昭子さんの住まいを紹介します。

機能を土台に、時間と記憶を育む住まい。セラミックアーティスト・森 昭子さんに聞いた北欧に移住して学んだ、部屋作りのヒント。セラミックアーティストの森昭子さんの住まいは建築家レイマ・ピエティラが手がけた集合住宅。ポール・カドヴィウスのシェルフをはじめ、デンマークのヴィンテージ家具も多い。 | セラミックアーティストの森昭子さんの住まいは建築家レイマ・ピエティラが手がけた集合住宅。ポール・カドヴィウスのシェルフをはじめ、デンマークのヴィンテージ家具も多い。
セラミックアーティストの森昭子さんの住まいは建築家レイマ・ピエティラが手がけた集合住宅。ポール・カドヴィウスのシェルフをはじめ、デンマークのヴィンテージ家具も多い。
機能を土台に、時間と記憶を育む住まい。セラミックアーティスト・森 昭子さんに聞いた北欧に移住して学んだ、部屋作りのヒント。キッチンと子ども部屋は隣り合い、開口部越しに互いの気配を感じられる。家具や家に置くものは目に入ったときの感触のいいものだけ。日本の道具も愛用。 | キッチンと子ども部屋は隣り合い、開口部越しに互いの気配を感じられる。家具や家に置くものは目に入ったときの感触のいいものだけ。日本の道具も愛用。
キッチンと子ども部屋は隣り合い、開口部越しに互いの気配を感じられる。家具や家に置くものは目に入ったときの感触のいいものだけ。日本の道具も愛用。
機能を土台に、時間と記憶を育む住まい。セラミックアーティスト・森 昭子さんに聞いた北欧に移住して学んだ、部屋作りのヒント。子ども部屋から見たキッチン側。完全に仕切らず、開放感のある空間。 | 子ども部屋から見たキッチン側。完全に仕切らず、開放感のある空間。
子ども部屋から見たキッチン側。完全に仕切らず、開放感のある空間。

光と影、経年変化が生む「目ざわりのよい」美しさ。

「フィンランドに来る前は休日になると『どこへ出かけよう』とばかり考えていました。でも今は『家でどう過ごそう』と考えるようになりました」。そう語るのは、セラミックアーティストの森昭子さん。東京では、話題の新店舗や展覧会など「行かなければ」と焦る気持ちがあったが、刺激の少ないフィンランドでは家で過ごす時間そのものを楽しめるようになったという。厳しい冬でも地域熱暖房で一日中暖かく保たれる空間が完備され、心地よさが重なる。

「まず暮らしを支える機能があり、その上に美しいデザインがある。アルヴァ・アアルトや彼が創業した〈アルテック〉はアート&テクノロジーの思想から名付けられていて、その考え方に通じていると思います」
 
 森さんの住まいは建築家のレイマ・ピエティラが設計した1969年築の集合住宅。前の所有者によるオリジナルへの敬意が払われた内装やリノベーションを引き継いで暮らしている。家具やインテリア選びの基準は「目ざわりがいいもの」。それは祖母が使っていた言葉で「目に触れたときに心地よい」という意味だ。

「たとえば、ラッカー塗装された椅子はやすりをかけ、あえて艶を落としました。12年が経った今、オーク材は味わい深い飴色に変化し、やさしい〝目ざわり〞になっています」
 
 照明も空間をつくる重要な要素。夕暮れにはスイス出身の夫の習慣にならい、まずキャンドルに火を灯す。先に電灯を点けると、繊細な光を感じられなくなるからだ。さらに低い位置に明かりを置くことで、壁に長い影が生まれ、部屋に奥行きが出る。

「天井照明はコードを長いものに替えて、部屋の端に低く垂らすようにしました。私の作品も影は重要な要素であり、光だけでなく影もデザインすることを大切にしています」
 
 夫婦で共有する理想は日本の「古い寺の廊下」のような空間。手入れを重ね受け継がれてきた清潔な古さに惹かれ、経年で色艶を深める無垢材を選ぶ。また、実用性を重視しつつも、部屋には暮らしに必要ないものもたくさん置いてあると森さん。

「〝思い出のトロフィー〞として、博物館の収蔵品のように、手に入れた年や贈り主、記念として覚えておきたい出来事をメモして貼っています。手に取ったときにその思い出が蘇ってくる。少しずつ増やして、いつか家族の歴史博物館のような部屋になったらいいなと思っています」

機能を土台に、時間と記憶を育む住まい。セラミックアーティスト・森 昭子さんに聞いた北欧に移住して学んだ、部屋作りのヒント。ハンス・J・ウェグナーやイサム・ノグチなどミッドセンチュリーの家具や照明を愛用。壁には森さんの作品。グリッド状の陶は内部の空間や影も楽しめる。 | ハンス・J・ウェグナーやイサム・ノグチなどミッドセンチュリーの家具や照明を愛用。壁には森さんの作品。グリッド状の陶は内部の空間や影も楽しめる。
ハンス・J・ウェグナーやイサム・ノグチなどミッドセンチュリーの家具や照明を愛用。壁には森さんの作品。グリッド状の陶は内部の空間や影も楽しめる。
機能を土台に、時間と記憶を育む住まい。セラミックアーティスト・森 昭子さんに聞いた北欧に移住して学んだ、部屋作りのヒント。リビングには照明デザイナー、インゴ・マウラーによる和紙と竹のウォールランプ。日本の団扇から着想を得たデザインで、気に入り同じものを2つ揃えた。 | リビングには照明デザイナー、インゴ・マウラーによる和紙と竹のウォールランプ。日本の団扇から着想を得たデザインで、気に入り同じものを2つ揃えた。
リビングには照明デザイナー、インゴ・マウラーによる和紙と竹のウォールランプ。日本の団扇から着想を得たデザインで、気に入り同じものを2つ揃えた。
機能を土台に、時間と記憶を育む住まい。セラミックアーティスト・森 昭子さんに聞いた北欧に移住して学んだ、部屋作りのヒント。1969年築、9階建ての集合住宅。78.5㎡の空間にキッチン、リビングダイニング、子ども部屋、書斎、寝室という構成。
1969年築、9階建ての集合住宅。78.5㎡の空間にキッチン、リビングダイニング、子ども部屋、書斎、寝室という構成。
機能を土台に、時間と記憶を育む住まい。セラミックアーティスト・森 昭子さんに聞いた北欧に移住して学んだ、部屋作りのヒント。

森 昭子セラミックアーティスト

1976年生まれ。シンガポール、スイスを経て、2015年よりヘルシンキを拠点に活動。建築への興味から着想を得た陶のオブジェ《Grid Series》を手がける。

photo : Chikako Harada edit & text : Chizuru Atsuta cooperation : Eri Shimatsuka

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