長田佳子の季節のハーブを愉しむお菓子。

vol.4 桃のコンポートとラベンダーのゼリーHerbal Sweets / July 22, 2020

自然からのいただきものであるハーブの力を取り入れて、心と体に優しく寄り添う「レメディ」のようなお菓子を作る〈foodremedies〉として活動する菓子研究家の長田佳子さん。砂糖にはない甘さやほのかに感じる苦味、鼻をくすぐるいい香り——。ハーブはそのときの心と体の状態によって、五感で感じ取るものが繊細に変化する奥深さを秘めた暮らしに役立つ植物です。そんな季節のハーブを使った長田さんオリジナルのお菓子のレシピを紹介するこの連載。第4回は「桃のコンポートとラベンダーのゼリー」をお届けします。

This Month's Herbal Sweets

「桃のコンポートとラベンダーのゼリー」

桃とラベンダーのゼリー

甘く柔らかな桃を、ラベンダーのゼリーで優しく包み込んで。

透き通った美しい湖のようにキラキラと輝くのは、ラベンダーのゼリー。夏の暑さでざわめく心を静めてくれるような、爽やかな香りがほのかに漂います。ゼリーからうっすらと透けて見えるのは、桃のコンポート。薄い砂糖水の中にフレッシュなレモンバーベナを浮かべて、ハーブティーの中に桃を漬け込むようなイメージで香りづけしてみましょう。果肉からはふんわりとレモンに似た清涼感のあるいい香りが感じられて、作っている間も幸せな気分に。五感を研ぎ澄ませ、一つ一つの素材と向き合う濃密な時間を過ごしているうちに、自然と心が静かに整っていくものです。出来上がったら、つるんとした桃のコンポートのまるいフォルムのかわいらしさを愛でつつ、ゼリーと絡ませながらいただきましょう。淡い色彩のロマンティックなスイーツを眺めていると、いつか見た美しい景色の記憶が蘇り、ノスタルジックな気持ちに浸れるかもしれません。そして、口の中ではじけるゼリーのひんやりとした心地よい食感や薄甘い柔らかな桃のくちどけを楽しむ時間は、きっと疲れた体と心を癒やしてくれるはず。「今日は食欲がない」「もしかしたら夏バテかも」なんて、夏の暑さに負けてしまいそうなときこそ、ぜひ作ってみましょう。あまったシロップは、製氷皿に注いで冷凍庫で冷やし、一口サイズの氷アイスにしてみても。「桃のコンポートとラベンダーのゼリー」を作る小さなチャレンジが、爽やかな夏の扉を開けてくれるでしょう。

左/ラベンダー
左/ラベンダー

原産地は地中海沿岸。古代から薬用植物として使われていたハーブです。ラベンダーという名前は、ラテン語の「ラヴァレ」(洗う)という言葉に由来しているといわれていて、入浴時にラベンダーを使用していた慣習と関係しています。甘く爽やかな芳香は、不安や緊張をほぐしてくれる作用が。また、殺菌や防虫効果もあるので、ドライにしてポプリやサシェなどの芳香剤や入浴剤、石けんに使われています。ハーブティーの茶葉としての人気も高く、さまざまな茶葉とブレンドしたり、蜂蜜を加えたりすることで、より飲みやすい味わいに変化します。

右/レモンバーベナ

17世紀に原産国の南アメリカからスペイン人によってヨーロッパにもたらされたといわれるハーブ。細い葉はレモンのような清涼感があり、料理や飲料の風味づけとして使用されることが多いのが特徴です。また、ハーブティーとしてドライでもフレッシュでもレモンの香りや酸味を楽しめます。高ぶった気持ちを静める作用があるので、神経をリラックスさせたいときや風邪や片頭痛のときの一杯にしてみても。消化器の働きにも作用があるといわれていて、食欲不振や消化不良の改善にもおすすめです。
 

レシピ 2人分

● コンポート

・桃1 個

・水500 ml

・きび砂糖80g

・レモン汁15ml

・フレッシュレモンバーベナひとつまみ



● ゼリー

・水150 ml

・きび砂糖5g
・フレッシュラベンダー小さじ1/2杯、飾り用 少々

・粉ゼラチン3g

・蜂蜜5 g

How to cook

1.コンポートを作る。桃を優しく洗い、ナイフで縦半分に切り込みを入れてスプーンで種を取る。
1.コンポートを作る。桃を優しく洗い、ナイフで縦半分に切り込みを入れてスプーンで種を取る。
2.鍋に水ときび砂糖、レモンバーベナを入れて火にかける。沸騰したら弱火にし、桃の皮部分を下にして2分煮る。
2.鍋に水ときび砂糖、レモンバーベナを入れて火にかける。沸騰したら弱火にし、桃の皮部分を下にして2分煮る。
3.桃を裏返しレモン汁を加える。さらに2分煮たら火を止めボウルに移し、粗熱が取れたら皮をそっとはがす。
3.桃を裏返しレモン汁を加える。さらに2分煮たら火を止めボウルに移し、粗熱が取れたら皮をそっとはがす。
4.ゼリーを作る。鍋に水ときび砂糖とラベンダーを入れて火にかけ、沸騰したらゼラチンを加えてよく混ぜ、粗熱が取れたら網でこし、蜂蜜を加え冷蔵庫で固める。
4.ゼリーを作る。鍋に水ときび砂糖とラベンダーを入れて火にかけ、沸騰したらゼラチンを加えてよく混ぜ、粗熱が取れたら網でこし、蜂蜜を加え冷蔵庫で固める。
5.器によく冷やしたコンポートの半分と桃を煮たシロップを入れ、上から崩したゼリーをかけてラベンダーを飾る。
5.器によく冷やしたコンポートの半分と桃を煮たシロップを入れ、上から崩したゼリーをかけてラベンダーを飾る。
桃のコンポートとラベンダーのゼリー

photo: Hiroko Matsubara edit & text : Seika Yajima
ハーブ:まるふく農園 キッチンクロス提供:FLUFFY AND TENDERLY 器:坂口恭平

菓子研究家 長田佳子

<プロフィール>

菓子監修 長田佳子〈foodremedies〉
菓子研究家。レストラン、パティスリーなどでの修業を経て、YAECAフード部門「PLAIN BAKERY」でメニュー開発、お菓子の製造を担う。2015年に独立。〈foodremedies〉という屋号でハーブやスパイスなどを使ったまるでアロマが広がるような、体に素直に響くお菓子を研究している。著書に『foodremediesのお菓子』(地球丸)、『全粒粉が香る軽やかなお菓子』(文化出版局)などがある。

Pick Up おすすめの記事

Latest Issue 最新号

Latest Issuepremium No. 126窓辺に、花と緑を。2024.04.19 — 930円