長田佳子の季節のハーブを愉しむお菓子。

甘さ控えめな
「リンデンのアップルバターケーキ」 長田佳子の季節のハーブを愉しむお菓子 vol.32November 19, 2022

自然からのいただきものであるハーブの力を取り入れて、心と体に優しく寄り添う「レメディ」のようなお菓子を作る〈foodremedies〉として活動する菓子研究家の長田佳子さん。砂糖にはない甘さやほのかに感じる苦味、鼻をくすぐるいい香り——。ハーブはそのときの心と体の状態によって、五感で感じ取るものが繊細に変化する奥深さを秘めた暮らしに役立つ植物です。そんな季節のハーブを使った長田さんオリジナルのお菓子のレシピを紹介するこの連載。第32 回は「リンデンのアップルバターケーキ」をお届けします。

This Month's Herbal Sweets

「リンデンのアップルバターケーキ」

甘さ控えめな「リンデンのアップルバターケーキ」 長田佳子の季節のハーブを愉しむお菓子 vol.32

リンデンの香り立つ、やわらかなりんごが主役のバターケーキ。

秋冬はりんごが旬。一年中、スーパーで見かけるけれど、さまざまな品種が多く並ぶのは、秋から冬にかけて。なので、旬の味をしみじみと味わえる「リンデンのアップルバターケーキ」をぜひ、作ってもらいたいと思います。りんごがぎっしりと詰まっていてボリュームがあり、バターを使っていることもあって、コックリとした味わいを想像する人もいるかもしれません。けれど、実際はマフィンのような軽さもあり、あっさりと食べられるので、おやつのみならず、ちょっとした朝ごはんにもおすすめのケーキです。

今回使ったリンデンというハーブは、ヨーロッパ原産のハーブで昔から薬草として親しまれてきました。リンデンの花の甘い香りは、人をリラックスさせる力を持っています。りんごを砂糖と水で炒めるときにリンデンを一緒に加えることでより香りがふくよかになり、食べたときにほのかにいい香りを感じることができるはず。また、生地には、はちみつも入れることで味にふくらみが生まれます。そのまろやかな甘さがリンデンとよく合うのです。

やわらかなりんごのソテー、香ばしいカリッとした食感のくるみ、ふわふわとした質感の生地。3つの異なる食感の重なり合いに思わず心が弾んできます。
ペアリングには紅茶やミルクティー、浅煎りのコーヒーを。窓を開け、凛とした空気を部屋に迎え入れて、自分自身を労わるお茶の時間を過ごしてみては。

甘さ控えめな「リンデンのアップルバターケーキ」 長田佳子の季節のハーブを愉しむお菓子 vol.32
リンデン
シナノキ科、シナノキ属。クリーム色の小さな花の甘い香りが特徴。ヨーロッパでは「千の用途を持つ木」と呼ばれ、重宝されてきた歴史があります。街路樹、公園樹として使われることも。花と苞部分をドライにして砕いたリンデンフラワーティーは、精神的なストレスを緩和する効果が期待できます。緊張して眠れない夜に飲むのもおすすめです。

レシピ 4〜5人分 (W18×D8×H7cm) 

・りんご1個(250~300g)
・きび砂糖50g
・水20ml
・卵2個 (Mサイズ)
・はちみつ15g
・無塩バター60g
・米油15g
・リンデンふたつまみ
・薄力粉70g
・くるみ30g

下準備
・りんごの皮をむき、櫛形にカットする
・オーブンを170℃に予熱する
・くるみを170℃のオーブンで8分程度ローストする
・型にオーブンシートを敷く
・バターを溶かす

How to cook

1.フライパンにきび砂糖と水を入れ、砂糖が溶けて泡がぶくぶくしてきたら、
りんごとリンデンを入れ、香りづけしながら表面をこんがりするまで中弱火で炒める。
1.フライパンにきび砂糖と水を入れ、砂糖が溶けて泡がぶくぶくしてきたら、 りんごとリンデンを入れ、香りづけしながら表面をこんがりするまで中弱火で炒める。
2.ボウルに卵とはちみつをいれ、もとの2〜3倍量のクリーム色になるまで立てたら、米油を少しずつ加えバターも加え混ぜる。
2.ボウルに卵とはちみつをいれ、もとの2〜3倍量のクリーム色になるまで立てたら、米油を少しずつ加えバターも加え混ぜる。
3.薄力粉をふるいながら加えボウルにゴムベラを添わせるようにして大きく混ぜる。
3.薄力粉をふるいながら加えボウルにゴムベラを添わせるようにして大きく混ぜる。
4. 型にりんごのソテーとくるみを入れ、上から生地を流し170℃のオーブンで25分を目安に焼く。
※焼き上がったケーキの全面に刷毛でブランデーを塗ると一層おいしくなる。
4. 型にりんごのソテーとくるみを入れ、上から生地を流し170℃のオーブンで25分を目安に焼く。 ※焼き上がったケーキの全面に刷毛でブランデーを塗ると一層おいしくなる。
甘さ控えめな「リンデンのアップルバターケーキ」 長田佳子の季節のハーブを愉しむお菓子 vol.32

photo:Hiroko Matsubara edit & text:Seika Yajima
器:ヨーロッパアンティークほか


菓子研究家 長田 佳子

レストラン、パティスリーなどでの修業を経て、YAECAフード部門「PLAIN BAKERY」でメニュー開発、お菓子の製造を担う。2015年に独立。〈foodremedies〉という屋号でハーブやスパイスなどを使ったまるでアロマが広がるような、体に素直に響くお菓子を研究している。著書に『季節を味わう癒しのお菓子』(扶桑社)、『全粒粉が香る軽やかなお菓子』(文化出版局)などがある。2021年7月より登録制による動画配信のお菓子教室を開催。

foodremedies.jp

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