長田佳子の季節のハーブを愉しむお菓子。

スパイシーな香りがそっと広がる
「ローリエとジンのスペキュロス」 長田佳子の季節のハーブを愉しむお菓子 vol.34January 21, 2023

自然からのいただきものであるハーブの力を取り入れて、心と体に優しく寄り添う「レメディ」のようなお菓子を作る〈foodremedies〉として活動する菓子研究家の長田佳子さん。砂糖にはない甘さやほのかに感じる苦味、鼻をくすぐるいい香り——。ハーブはそのときの心と体の状態によって、五感で感じ取るものが繊細に変化する奥深さを秘めた暮らしに役立つ植物です。そんな季節のハーブを使った長田さんオリジナルのお菓子のレシピを紹介するこの連載。第34回は「ローリエとジンのスペキュロス」をお届けします。

This Month's Herbal Sweets

「ローリエとジンのスペキュロス」

スパイシーな香りがそっと広がる <br>「ローリエとジンのスペキュロス」 <i>長田佳子の季節のハーブを愉しむお菓子 vol.34</i>

好きな絵柄で作ってみたくなる、ベルギーの伝統菓子「スペキュロス」。

ベルギーの伝統菓子のひとつであるスペキュロスは、スパイスの効いたバターたっぷりの薄くてサクサクしたクッキーのこと。木型を使うのが本場の作り方です。型を持っていない人は、生地を好みのカタチにカットして作ってもいいですが、少し足を延ばして、蚤の市やアンティークショップに出向いて、好みの木型を探しに出かけてみてはいかがでしょう。 

そうしたひとつのアクションがお菓子作りの面白さを広げてくれるように思います。好きな絵柄があしらわれたクッキーは、より一層、愛着が増しますし、大切な人へのギフトにしたいという優しい想いが芽生えるはず。

そして今回の味の決め手となっているのが、ローリエの風味。ローリエをジンに漬け込み、抽出したエキスを生地に練り込みました。ローリエの優雅で上品な香りとジンの爽やかでスパイシーな香りがブレンドされたエキスは、少しの量で十分に行き渡ります。葉を折って生地に入れてみるとより深めに香りづけができます。さらに、チャイミックススパイスも加えて。黒糖も使っているので、しっかりとした味に仕上がります。こうしたひと手間を加えるだけで、クッキーを噛み砕くたびに、口の中にスパイシーな風味がそっと漂うささやかな幸せを味わうことができるもの。2枚目にいただくクッキーは、コーヒーに浸して食べるなど、味に変化をつけてみても。繰り返される日常は、そうしたちょっとした愉しみに支えられているようにも思うのです。

スパイシーな香りがそっと広がる 「ローリエとジンのスペキュロス」 長田佳子の季節のハーブを愉しむお菓子 vol.34
ローリエ
クスノキ科ゲッケイジュ属の常緑高木である月桂樹。地中海地域の代表的なハーブです。葉には精油成分が含まれていて、葉を乾燥させると香りが強くなるという特徴が。そのため、スープ、煮込み料理や肉料理の香りづけや臭み消しとして用いられています。米びつの中に入れておけば虫除け対策にも。

レシピ15枚程度 

・ローリエ1枝分
・ジン適量※ローリエが浸るくらい
・バター35g
・黒糖10g
・きび砂糖40g
・塩かるくひとつまみ
・全卵1/3個分
・薄力粉125g
・ベーキングパウダー2g
・チャイミックススパイス1g

下準備
・バターは室温に戻す
・黒糖ときび砂糖をふるいにかける
・天板にオーブンシートを敷く
・オーブンを160℃に予熱する

How to cook

1.ローリエをジンに漬けて数日置いておく(ジンに色がついてきたら抽出されています)。
1.ローリエをジンに漬けて数日置いておく(ジンに色がついてきたら抽出されています)。
2.ボウルにバターときび砂糖と黒糖と塩を入れ、ゴムベラで押しながらなじませる。
2.ボウルにバターときび砂糖と黒糖と塩を入れ、ゴムベラで押しながらなじませる。
3.「2」に卵を加え同じようになじませ、薄力粉、ベーキングパウダー、スパイスを入れ、切るように混ぜる。
3.「2」に卵を加え同じようになじませ、薄力粉、ベーキングパウダー、スパイスを入れ、切るように混ぜる。
4.「3」に「1」で作ったエキス10mlを加え混ぜ、生地がひとまりになったらオーブンシートに挟み、麺棒で3mm程度の厚さにのばす。
4.「3」に「1」で作ったエキス10mlを加え混ぜ、生地がひとまりになったらオーブンシートに挟み、麺棒で3mm程度の厚さにのばす。
5.木型に生地がくっつかないように型に強力粉(分量外)をつけて生地に模様を押し付ける。模様のまわりを抜き型で抜き、一度冷蔵庫で冷やしたら天板に並べ160℃のオーブンで15〜20分を目安に焼く。
※余った生地は、再びまとめて同じように最後まで型を抜く。
5.木型に生地がくっつかないように型に強力粉(分量外)をつけて生地に模様を押し付ける。模様のまわりを抜き型で抜き、一度冷蔵庫で冷やしたら天板に並べ160℃のオーブンで15〜20分を目安に焼く。 ※余った生地は、再びまとめて同じように最後まで型を抜く。
スパイシーな香りがそっと広がる 「ローリエとジンのスペキュロス」 長田佳子の季節のハーブを愉しむお菓子 vol.34

photo:Hiroko Matsubara edit & text:Seika Yajima
ハーブ:まるふく農園 キッチンクロス提供:FLUFFY AND TENDERLY
器:ヨーロッパアンティーク 木型:umanohanamuke


菓子研究家 長田 佳子

レストラン、パティスリーなどでの修業を経て、YAECAフード部門「PLAIN BAKERY」でメニュー開発、お菓子の製造を担う。2015年に独立。〈foodremedies〉という屋号でハーブやスパイスなどを使ったまるでアロマが広がるような、体に素直に響くお菓子を研究している。著書に『季節を味わう癒しのお菓子』(扶桑社)、『全粒粉が香る軽やかなお菓子』(文化出版局)などがある。2021年7月より登録制による動画配信のお菓子教室を開催。

foodremedies.jp

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