長田佳子の季節のハーブを愉しむお菓子。

あったかい濃厚チョコが溢れ出す
「クローブとゆずのフォンダンショコラ」 長田佳子の季節のハーブを愉しむお菓子 vol.35February 18, 2023

自然からのいただきものであるハーブの力を取り入れて、心と体に優しく寄り添う「レメディ」のようなお菓子を作る〈foodremedies〉として活動する菓子研究家の長田佳子さん。砂糖にはない甘さやほのかに感じる苦味、鼻をくすぐるいい香り——。ハーブはそのときの心と体の状態によって、五感で感じ取るものが繊細に変化する奥深さを秘めた暮らしに役立つ植物です。そんな季節のハーブを使った長田さんオリジナルのお菓子のレシピを紹介するこの連載。第35回は「クローブとゆずのフォンダンショコラ」をお届けします。

This Month's Herbal Sweets

「クローブとゆずのフォンダンショコラ」

あったかい濃厚チョコが溢れ出す「クローブとゆずのフォンダンショコラ」 長田佳子の季節のハーブを愉しむお菓子 vol.35

赤ワインを合わせたくなる、ビターでスパイシーなフォンダンショコラ。

冬は妙にチョコレートが恋しい季節。それは、寒さから体を守るために動物的な感覚が研ぎ澄まされるからなのかもしれません。そうした“体の声”によく耳を澄ましてお菓子を作る時間は、ちょっとした“実験”のようにも思えて心ときめくものです。

そんな想いを胸に作ってみたのがこの「クローブとゆずのフォンダンショコラ」。「フォンダンショコラ」と聞いたそばから、口の中にじんわりと広がるチョコレートの濃厚な甘さを想像される方も多いかもしれません。「チョコレート好き」な人が食す“偏愛スイーツ”という印象も強いですが、苦手な人でも食べられるビターな味わいを意識して、砂糖を使わず、チョコレートの素材の甘さを感じられるようにしました。

ベースには栄養価の高い高カカオチョコレートを。そして、スパイスとして、体の内側の冷えにアプローチしてくれるクローブ、栄養成分がたくさん含まれたゆずを加えて。一番のポイントは何といっても、焼き加減。焼き込みすぎないようにすると、中が生チョコのような半生状態になるんです。さらに、焼きたての瞬間は、クローブのスパイシーな香りがほのかに立ち上がるというつくり。一見すると、とても素朴な見た目のケーキですが、カットして中からチョコレートがトロリと溶け出す景色は、なかなかに高揚感があります。

甘さ控えめな味わいなのでチーズやナッツといった、おつまみのような感覚で食してみるのも良さそうです。ペアリングドリンクは、軽めの赤ワインや紅茶がベター。冷蔵庫で冷やして1日寝かすと、甘さが凝縮します。その“違い”をぜひ、確かめてみてほしいです。

あったかい濃厚チョコが溢れ出す「クローブとゆずのフォンダンショコラ」 長田佳子の季節のハーブを愉しむお菓子 vol.35
クローブ
フトモモ科の常緑高木「チョウジノキ」の花蕾を乾燥させたもの。スパイスや生薬として使われており、防腐・殺菌力が強く、食品の保存・味付けに適しています。また、体の内部の冷えからくる不調に対する漢方処方にも用いられています。胃腸を温めたり、消化を促したりする作用が期待できます。ストレートティー、ミルクティー、チャイなどに加えるのもおすすめです。

ゆず
ミカン科ミカン属の常緑小高木。酸味と香りが特徴的で、香辛料、薬味、調味料に使われることが多いハーブです。ゆずの皮の香りに含まれる「リモネン」という成分には、巡りをサポートしてくれる作用があるため、寒さ対策のために取り入れてみても。また、ゆずに多く含まれるポリフェノールの一種「ヘスペリジン」は、血管を強化する作用があるといわれています。

12×4.5cmのセルクル1個分 

・チョコレート(カカオ70%) 60g
・バター 50g
・卵 (M) 2個
・生クリーム 50ml
・薄力粉 20g
・クローブパウダー小さじ1/2
・ゆずの皮と汁 小1個分

[下準備]
セルクル型にオーブンシートを敷いておく。
オーブンを220℃に予熱しておく。

How to cook

1.ボウルにチョコレートとバターを入れ、湯煎で溶かし泡立て器で混ぜたら、生クリームも加え混ぜる。
1.ボウルにチョコレートとバターを入れ、湯煎で溶かし泡立て器で混ぜたら、生クリームも加え混ぜる。
2.別のボウルに卵を入れ、ハンドミキサーでしっかり泡立てる。
2.別のボウルに卵を入れ、ハンドミキサーでしっかり泡立てる。
3.「1」に「2」を加え大きくさっくり混ぜたら、薄力粉とクローブパウダーをふるい入れ、ゴムベラに持ち替え大きくゆったり混ぜ合わせ、ゆずの皮を削り汁も加えたら再び軽く混ぜる。
3.「1」に「2」を加え大きくさっくり混ぜたら、薄力粉とクローブパウダーをふるい入れ、ゴムベラに持ち替え大きくゆったり混ぜ合わせ、ゆずの皮を削り汁も加えたら再び軽く混ぜる。
4.型に流し210℃のオーブンで12分を目安に焼く。
4.型に流し210℃のオーブンで12分を目安に焼く。
あったかい濃厚チョコが溢れ出す「クローブとゆずのフォンダンショコラ」 長田佳子の季節のハーブを愉しむお菓子 vol.35

photo:Hiroko Matsubara edit & text:Seika Yajima
キッチンクロス提供:FLUFFY AND TENDERLY
器:フランスアンティーク ほか


菓子研究家 長田 佳子

レストラン、パティスリーなどでの修業を経て、YAECAフード部門「PLAIN BAKERY」でメニュー開発、お菓子の製造を担う。2015年に独立。〈foodremedies〉という屋号でハーブやスパイスなどを使ったまるでアロマが広がるような、体に素直に響くお菓子を研究している。著書に『季節を味わう癒しのお菓子』(扶桑社)、『全粒粉が香る軽やかなお菓子』(文化出版局)などがある。2021年7月より登録制による動画配信のお菓子教室を開催。

foodremedies.jp

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