&EYES あの人が見つけたモノ、コト、ヒト。
海、山、緑、大きい公園、おおらかに大の字で寝る。写真と文:笹本菜月(ガラス作家)#2August 14, 2026
富山ガラス造形研究所に通っていた頃の生活は、思い返すと決して順風満帆ではなかった。
初めての一人暮らし、ガラス漬けの毎日、ままならない日々のそんな最中、友人たちの存在が心の支えだった。
遠方からはるばる来てくれる友人たちをもてなすとき、まずは寿司をたらふく食べた。古い喫茶店でコーヒーを啜り、ひと休みした後は海辺に向かい、心ゆくまで水平線の先を眺める。そして温泉に浸かって、一日の疲れを癒す。これがお決まりのコースだった。
帰りにはスーパーで刺身を買い、家でささやかな宴会を開いた。市場の近くで蟹を丸ごと買った時には、うれしくて踊り狂った。
富山はご飯が美味しい。海の幸と季節の果物を酒の肴に、一晩中くだらない話をすれば心がすっと軽くなった。
ところで昨年、初めて一人でイギリスを旅行した。滞在先とおおまかなプランだけ決めて、あとは気ままに過ごしたのだが、結果的に私はほとんどの時間、自然公園にいた。ラッキーなことに滞在中ずっと天気が良かったので、とにかく広く大きい公園を逍遥し、木陰に寝そべっては芝生の上を自由に走り回る犬をぼんやりと目で追ったり、池からゆっくり上がってくる水鳥の親子を静かに見守ったりした。
日頃抱える悩みや不安が、広大な自然を前にたいそうちっぽけなものに思えた。
そしてなぜか脳裏に浮かぶのは、富山で過ごしたあの豊かな日々だった。
自然に触れ、心穏やかに過ごすことが直接的に作品のアイデアにつながることはあまりないけれど、日常が窮屈に感じたり何かに行き詰まったとき、自分を解放する方法をいくつか持っておくことは、一つの物事を続けるうえでも大事なのかもしれない。
ガラス作家 笹本菜月

1999年東京生まれ。武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科ガラス専攻を卒業後、富山ガラス造形研究所に進学。その後、2023年からガラス作家として神奈川を拠点に活動し、やわらかな揺らぎのあるチェック柄をモチーフにテーブルウェアやオブジェ、ランプなどを制作している。




















































