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台湾から届く『瀬戸内海的風』と蜜蜂のこと。海辺の本屋の日々と本。写真と文:あかしゆか(編集者・『aru』店主)#4September 25, 2026

ある日、Instagramのストーリーズを見ていたら、台湾に旅行をしている友人の投稿が流れてきた。そしてその友人が「本屋で素敵な写真集を見つけた」という文言とともにアップしていた写真集の表紙が、私がいつも見ている瀬戸内海の景色にそっくりだったので、驚いた。拡大してタイトルを見ると、『瀬戸内海的風』とある。調べてみると、台湾の写真家であるKKlivehigh(以下、KKさん)さんと、グラフィックデザイナーの傅文豪(フー・ウェンハオ)さんの共作で、ふたりが瀬戸内を旅した6日間の記録をまとめた写真集であることを知った。

台湾から届く『瀬戸内海的風』と蜜蜂のこと。海辺の本屋の日々と本。写真と文:あかしゆか(編集者・『aru』店主)#4
『aru』から見える海と同じで驚いた。

内容紹介を見てみると、直島、豊島、小豆島、犬島――そして、『aru』の位置する児島や隣町である宇野の写真も載っているという。

これは店にぜひ置きたい、と思ってKKさんのInstagramを見つけて連絡をしてみると、とても丁寧な返事をいただいて無事に取り扱いできることに。そうして数週間後、海を渡ってうつくしい写真集が届いた。想像よりもすこし小ぶりで、瀬戸内海のような淡い青色をした上製本。

その本は今では店の人気商品となっていて、瀬戸内旅行のお土産として買っていく方や、プレゼントとして購入される方、「将来こんな写真集を作ってみたい」と参考として買われる方などさまざまな理由でお客さんの手に渡っている。本の取り扱いをきっかけにKKさんとはSNS上でゆるやかな交流が続いていて、なんとこの秋、台湾に行き、KKさんに台北の独立書店を案内していただくことになった(!)

彼らの瀬戸内の旅が本になる。その本を、台湾へ旅した私の友人が見つけて購入する。私はそれを知って、その本を瀬戸内の本屋に並べる。いろんな人が手に取ってくださる。交流が生まれ、私が台湾へ旅をする──。

作り手、買い手、売り手。その三者があってこそ成り立つ本をめぐる心地よい連鎖と新たな出会いを経験して、私はふと、蜜蜂のことを思い出した。

蜜蜂は、花の蜜を吸って移動する。その時、体についた花粉が運ばれてほかの植物と受粉をし、また新しい花が咲く。地球上で豊かな生態系が保たれるためには蜜蜂の存在は欠かせない。

本も同じだ。本という花が生まれ、本を買う人が蜜蜂となって花の蜜を運び、その中にある感動という花粉がいつかどこかで別のあたらしい花を咲かせ、豊かな思考や感性の生態系が生まれていく。

私にできることは、店に来てくれる人たちがその時に必要だと思える蜜に出会えるように、いい花の咲く心地よい庭であり続けるための努力をすることなのかもしれない。そして訪れてくれた方々が受けとった蜜が、いつかどこかで新しい花が咲くきっかけになりますようにと願い続けることなのかもしれない。

そんなことを、『瀬戸内海的風』を見るたびに考える。そして、いつもどこかに素敵な花がないかなと探しながら、今日も海辺のちいさな庭を、せっせと整えるのだ。

台湾から届く『瀬戸内海的風』と蜜蜂のこと。海辺の本屋の日々と本。写真と文:あかしゆか(編集者・『aru』店主)#4
本屋は庭だと思うようになった。

編集者・本屋『aru店主』 あかしゆか

あかしゆか
1992年京都生まれ、岡山在住。東京での会社員生活を経て独立。2021年に本屋『aru』を岡山県倉敷市児島で開業し、現在2店舗を経営している。Web、出版、イベント、場づくりなど、媒体を問わず「ことば」に関する編集に携わる。

→ instagram.com/akyskaa

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