小林エリカの文房具トラベラー
レースペーパー小林エリカの文房具トラベラーvol.32&STATIONERY / May 17, 2022
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生クリームがたっぷりかかった苺ケーキ、キウイやパインを挟んだフルーツサンド、焼きたてマドレーヌに、ブランデー入りチョコレート。それらをレースペーパーに載せた姿を思い浮かべるだけでうっとりする。
真っ白な(時にはゴールドやシルバーの)レースペーパーの繊細な切り抜きの中に浮かび上がるバラの花や、型押しされた蔓草模様の美しいこと――それが百円ショップの品だろうとも! ――一度レースペーパーを使えば、もうポテトチップスからフライドチキン、遂には柿の種やらさきいかまで、あらゆる食べ物をその上に載せたい誘惑に駆られてしまう。そうしながら私は、世のおばあちゃんたちがドアノブからピアノや黒電話まで、みんなレース編みで覆ってしまう気持ちを理解する。そう! レースはいとも簡単(ピース・オブ・ケイク)な魔法なのだ。レースさえあればどんなものも、醜いものさえ美しく見える(はず)。
私は今日もレースペーパーの上に載せる品々を妄想しながらいつしか、載せるを凌駕し、何もかも包んで覆いたくなってくるのかもしれないと、考える。
![左・中/ボストンのマーケットで見つけたシルバー(ゴールドもあり)のFancy DOILIESとRoyal Lace。王室風なイメージですがどちらもアメリカ製。右/エストニアのスーパーマーケットで購入したフィンランド製∅10㎝。 左・中/ボストンのマーケットで見つけたシルバー(ゴールドもあり)のFancy DOILIESとRoyal Lace。王室風なイメージですがどちらもアメリカ製。右/エストニアのスーパーマーケットで購入したフィンランド製∅10㎝。](https://img.andpremium.jp/2021/12/28232428/033_p000-000_carstationary_01-1024x682.jpg)
edit : Kisae Nomura
※この記事は、No.33 2016年9月号「&STATIONERY」に掲載されたものです。
作家・マンガ家 小林 エリカ
![](https://img.andpremium.jp/2019/09/30181038/kobayashierika-300x300.jpg)
シャーロック・ホームズ翻訳家の父と練馬区ヴィクトリア町育ちの四姉妹を描いた『最後の挨拶 His Last Bow』(講談社)発売中。2021年夏、はじめての絵本『わたしは しなない おんなのこ』(岩崎書店)が発売。