小林エリカの文房具トラベラー

ポストカード小林エリカの文房具トラベラー &STATIONERY vol.35June 07, 2022

小林エリカ 文房具トラベラー
小林エリカ 文房具 トラベラー ポストカード

 旅行へ行くと絶対に買うのがポストカードだ。旅先から友人宛にお手紙を……なんていうのはかなり乙だが、そんな心の余裕が無くても必ず買う。
 しかし、正直、このポストカード、どんなシチュエーションでいったい誰に送ればいいんだろう、と頭を悩ませる種類のものもある。でも、それでも私は買う。
 ポーランドのナチスドイツ、アウシュビッツ強制収容所の「ARBEIT MACHT FREI」(労働は自由をもたらす)のゲート写真ポストカード、フランスのノジャン=シュル=セーヌの原子力発電所の煙突から煙が上がる光景ポストカード(因みにこれは私の仕事デスクの前に貼っている)、アメリカのニューメキシコ州ロスアラモスの原爆開発歴史博物館の原子爆弾のキノコ雲写真ポストカード、等が私の送れないコレクションである。
 駅で、売店で、ホテルのロビーでひっそりと埃をかぶって売られているポストカードを持ち帰る。旅先でも自分では滅多に写真を撮らない故、見返すのは決まって、誰にも送られなかったポストカードだ。

こちらは珠玉の送れるポストカードブック。左/NYで手に入れたライアン・マッギンレー「Olympic Swimmers」。中/ノルウェーの写真家ウナ・フンデリの「Happy End of the World」。右/リトルモアのポストカードブックシリーズ。kvinaの『Mi amas TOHOKU 東北が好き』。小林エリカ 文房具 トラベラー
こちらは珠玉の送れるポストカードブック。左/NYで手に入れたライアン・マッギンレー「Olympic Swimmers」。中/ノルウェーの写真家ウナ・フンデリの「Happy End of the World」。右/リトルモアのポストカードブックシリーズ。kvinaの『Mi amas TOHOKU 東北が好き』。

edit : Kisae Nomura
※この記事は、No.36 2016年12月号「&STATIONERY」に掲載されたものです。


作家・マンガ家 小林 エリカ

シャーロック・ホームズ翻訳家の父と練馬区ヴィクトリア町育ちの四姉妹を描いた『最後の挨拶 His Last Bow』(講談社)発売中。2021年夏、はじめての絵本『わたしは しなない おんなのこ』(岩崎書店)が発売。

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