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選・文 / 本屋ロカンタン / July 16, 2020 本屋が届けるベターライフブックス。
『フレームの外へ 現代映画のメディア批判』赤坂太輔 著(森話社)

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2019年刊。現代映画の紹介に努めてきた批評家による、真に待たれた単著。あらゆる「映像」が包囲する現代社会において、「映画」が為しうることとは何か? 喫緊ともいうべき問いに対する著者の答えは明瞭である。それは、フレーム=画面の「外」を想像させることである——。フレームの外部には、世界が、現実が、拡がっている。だからこそ「映像」と呼ばれるメディアは、世界=現実を見せないようにすることもできれば、それを観客に想起させることもできる。「映画」と「映像」と「動画」とが、なし崩しに溶け合うかのようにみえるいま、本書はその輪郭をくっきりと明らかにしてくれる。


選・文 / 本屋ロカンタン / July 09, 2020 本屋が届けるベターライフブックス。
『映画という《物体X》フィルムアーカイブの眼で見た映画』岡田秀則 著(立東舎)

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ところであなたは、かつての映画フィルムが何によってできていたかを知っているだろうか。正解は、爆薬と牛である。これは映画界隈でも案外と知られていない事実であったようで、私の周辺のライター諸氏も、みな一様にこの箇所に驚いていた。『風と共に去りぬ』や『東京物語』をはじめとする錚々たる名作群も、これら可燃性フィルムで撮られたという。けれど観客は、何のことはない、等しく爆薬の上に牛の体内物質を塗りつけたものを観ていただけなのである(!)。著者は国立映画アーカイブで、映画フィルムとその周辺資料の保存と活用に勤しむ映画アーキビスト。いまや映画はほぼデジタルへと移行しつつあるが、だからこそその重要性はいや増す。20世紀という時代の特殊性は、後年、これらの「物体X」たちが静かに証言してくれるだろう。


選・文 / 本屋ロカンタン / July 02, 2020 本屋が届けるベターライフブックス。
『映画を穫る[増補改訂版]ドキュメンタリーの至福を求めて』小川紳介 著 山根貞男 編(太田出版)

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映画の真髄に触れる本、というお題を頂戴して、まっさきに浮かんだのはこの本である。ドキュメンタリー映画作家・小川紳介のことばはとにかくずば抜けている。映画本篇を見れば、彼がひたすら喋りまくる人間だというのはすぐさま診てとれるが、本書にはその息遣いと威勢の良さがまるごと収録されている。何度も読んでも震えがくる「ドキュメンタリーの至福を求めて」の一節。「グーッと回りだすんですよ、被写体の世界が。……明らかに記録映画は「劇」なんですよ。絶対に事実じゃない」。カメラをあたかも触媒にして、「被写体の世界」が「劇」として回り始める——。その瞬間をひたすら待ち、寿ぎ、収穫するのがドキュメンタリーなのだと彼はいう。映画は撮るものではない、「穫る」ものなのだ、と。


選・文 / 本屋ロカンタン / June 25, 2020 本屋が届けるベターライフブックス。
『映画術』フランソワ・トリュフォー、アルフレッド・ヒッチコック 著 山田 宏一 、蓮實 重彦 訳(晶文社)

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定番中の定番。ザ・映画の本。以上。——では紹介の体を成していないので、改めて。サスペンスの神様・ヒッチコックの「映画術」のすべてがここにある、といっても過言でない一冊。幼年時代に始まり、無声映画期、そしてハリウッドに渡って『サイコ』『めまい』『鳥』といったマスターピースを撮るに至るまでが語られる。その聞き手は、仏ヌーヴェルヴァーグの旗手・トリュフォー。収録時間は50時間におよんだという。なんと贅沢な時間であることか。「サスペンス」と「サプライズ」の違いを、爆弾を例に明快に説いてみせた名高い一節など、本書を脇にヒッチコックを見ると何倍も面白い。図版や附録も充実、一生楽しめる大著。


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JR中央線・西荻窪駅南口より徒歩6分。映画文筆家の店主・萩野亮の自宅を兼ねたささやかな本屋。人文・芸術分野を中心に新刊、古書、ZINE、映画輸入盤などを取り揃える。
東京都杉並区西荻南2-10-10 KUビル102
電話:090-6165-6248
営業時間:12:00~20:00
定休日:火曜、木曜、第四水曜
https://www.roquentin.tokyo/