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映画監督・今泉力哉さんに聞いた、いい仕事をするために大切にしていること。チームをまとめあげるためには。June 13, 2026

さまざまな分野で活躍する人の働く姿勢や生き方を尋ねた&Premium151号(2026年7月号)「仕事と生き方」より、今泉力哉さんの「いい仕事をするために、大切にしていること」を紹介します。

Q.チームをまとめあげるために、大切にしていることは?

A.なるべく対等に意見を交わし、楽しい現場にすること。

 

映画監督・今泉力哉さんに聞いた、いい仕事をするために大切にしていること。東京の仕事場にて。今年の1月期に放送され、話題を呼んだ『冬のなんかさ、春のなんかね』。今泉さんが腰を掛ける私物の椅子を劇中で使用した。 | 東京の仕事場にて。今年の1月期に放送され、話題を呼んだ『冬のなんかさ、春のなんかね』。今泉さんが腰を掛ける私物の椅子を劇中で使用した。
東京の仕事場にて。今年の1月期に放送され、話題を呼んだ『冬のなんかさ、春のなんかね』。今泉さんが腰を掛ける私物の椅子を劇中で使用した。
近作の台本。中面には小さく「楽しむ」と書いた、おまじないのようなメモが。
近作の台本。中面には小さく「楽しむ」と書いた、おまじないのようなメモが。

いい仕事は、対話でゆっくり育つ。

—今泉作品に多数出演している若葉竜也さん、成田凌さん、杉咲花さんをはじめとした、魅力的な役者との関係性が濃いように感じています。制作において「俳優の魅力を引き出すこと」を念頭に置いている今泉さんにとって、俳優との対話において、大切にしていることを伺いたいです。

今泉力哉 現場でその都度、ベストなジャッジをするのが監督の役割。だけど、決して上から指示する感じではなくて、なるべく対等に会話ができるように心がけています。撮影するまでの工程で芝居には「段取り」「テスト」「本番」という3つの段階があります。まず「段取り」といって、座る位置や動きを固める作業があり、その後にどういうアングルで、何カットで撮るかを考えるカット割りの確認をします。そして、カメラを据えたら本番同様の体勢で最終的な確認をしながら演じてもらう「テスト」。そして「本番」という流れ。私は段取りのときに「ここはこういうシーンで、こういう気持ちで、こう動いてください」と指示を出さずに、まずは俳優が考えてきたことを一度自由にやってもらうようにしています。自分が考えていることよりも俳優が考えてきたアイデアのほうが面白い可能性があるのでそれを潰したくないんです。ズレがあったら「今ってどういう気持ちで演じたのですか?」と聞く。原則として否定しないことを大切にしています。俳優に限らず、自分のアイデアを「それは違う」と言われたらやる気がなくなっちゃうので。

—場をコントロールしすぎると予定調和になってしまうこともありそうですよね。

今泉 そういう部分はあると思います。人の弱さやダメさ、だらしなさを〝人間の魅力〞と捉えられる感覚を持っている俳優が好きですね。

—撮影時に、スタッフとのやり取りにおいて心がけていることはどんなことでしょう。

今泉 助監督、カメラマン、各部署のトップは、基本的に自分が指名した人にお願いするようにしています。それぞれ、技術的な能力の部分のみではなくて、人として尊敬できる人、楽しい人と組みたいという気持ちがあります。例えば、他人のミスを許容できる人たちとか。多くの人が集まっているので、現場では本当にいろんなことが起きます。日々ミスも失敗もあります。でも、私は怒る必要はないと思っていて。ミスした人ってその時点で反省しているから「気をつけてね」で済む。自分自身、完璧な人間じゃないですしね。怒らないのが前提です。ミスが起きたときに、結果だけを重視するのではなくて、どういう考えで取り組んでいたか、その過程を知っていたら怒らずに済むかなと。何か注意するにしても、みんなの前でやらず、相手と二人だけの場をつくるようにしています。でも、疲れてきたときとかに自分も声が荒くなってしまったり、誰かをみんなの前で注意してしまったりするときもある。そんなときは、その日のうちに、または翌日には謝る。「もう少し優しく伝えたら良かったんだけど……」と次の日に持ち越さないようにしています。あと、私は撮影もできないし、衣装やメイク、美術も録音も照明もできない。助監督の仕事もできません。それぞれの仕事にお互いがリスペクトを持っていることも大切なことだと思います。自分が一緒に仕事をしているスタッフには、現場が良くない空気になりそうなときに早めの段階で察して、優しく制してくれる人もいて。とても心強いですし、いい環境でいい作品をつくるために、とにかく話し合うことは大切にしています。

—お互いにリスペクトがある現場には、とても美しい景色がありそうです。俳優や現場スタッフがすごく素晴らしい芝居と感じていても、監督として「気がかり」な部分があったとき、どんなふうに向き合うのでしょうか。

今泉 一番いい芝居が10点だとして。現場にいる皆の空気が「これは素晴らしい。OKだろうな」と思っている際に、自分だけが「これは9.5点だな、もう一回やりたいな」と思うときがある。もう一回やったら、きっと「あと0.5出るな」と。そう気づけたら「もう一回」と伝えます。もちろんスタッフ、キャストの疲労具合も見つつですが。その一回を妥協する人だったら、それまでの人だと思われますしね。私は他の監督より全然即決できないタイプ。監督がOKしたら終わりなので、永遠に迷い続けることもしばしば。でも出来上がった作品を見たら皆、納得してくれると信じています。私は自分の仕事仲間がとても好きですね。

今泉 力哉映画監督

1981年福島県生まれ。『愛がなんだ』『街の上で』『窓辺にて』など恋愛をテーマにした映画作品を多数手がける。ドラマ『冬のなんかさ、春のなんかね』(日テレ系)も話題に。ドラマ『クロエマ』がPrime Videoにて6月12日より配信開始。

photo : Takeshi Abe edit & text : Seika Yajima

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