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動物言語学者・鈴木俊貴さんに聞いた、いい仕事をするために大切にしていること。常識にとらわれないアプローチをするには。June 15, 2026
さまざまな分野で活躍する人の働く姿勢や生き方を尋ねた&Premium151号(2026年7月号)「仕事と生き方」より、動物言語学者・鈴木俊貴さんの「いい仕事をするために、大切にしていること」を紹介します。
世界の誰も気づいていないことを、五感をフル活用して探る。
—人間だけが言葉を話すという常識を覆し、鳥が言葉を話すことを見つけた鈴木さん。シジュウカラの言葉について教えてください。(ピーツピピーツピ、という鳥の鳴き声)
鈴木俊貴 ほら、警戒している!
—え?
鈴木 今のはシジュウカラのオス。知らない人間が縄張りに入ってきて怖がっているんです。「ピーツピ」という声は「警戒しろ」で、「ヂヂヂヂ」は「集まれ」。合わさった「ピーツピ・ヂヂヂヂ」は「警戒して集まれ」という意味です。
—すごい。文章みたいですね。
鈴木 シジュウカラはいろいろな声を出しますが、誰もその意味を探っていなかった。これまで言葉を持つのは人間だけで、鳥や動物の鳴き声は単なる感情の表れでしかないと決めつけられていたんです。でも、僕はシジュウカラがどんな状況でどんな声を出すのか観察を続けているうちに、一つ一つの鳴き声に意味があることや、組み合わせて文章をつくることに気づきました。
—よくそんなことを発見できましたね。
鈴木 とにかくフィールドに出て、じっくり観察することを大切にしているからだと思います。大学では、「まず仮説を立て、それを検証するために研究対象の動物や植物を選んで調べなさい」と教えがちですが、僕はまったく逆です。
—観察から気づきを得て、後から仮説を立てる。
鈴木 そう。僕は頭で考えてから現場に行くんじゃなくて、現場で考えるんです。そうしないと、誰かが本や論文に書いた知識という狭い枠の中で考えることになる。それでは狭いことしか思いつかないし、二番煎じ、三番煎じになってしまいます。
—それは研究者に限らず、どんな仕事にも言えるかもしれませんね。
鈴木 そうだと思いますよ。今は情報にアクセスするのが容易になっていて、わからないことがあるとすぐ検索したり、AIに聞いたりする。便利ですが、そこから得られるのは誰かが見つけた情報にすぎないんです。身近なシジュウカラだけでもこんなにわかっていないことがあったんだから、世界には誰も気づいていないことがまだまだたくさんあるはず。それを知るためには、頭の中をまっさらな状態にして、五感を使って探っていくしかない。ただぼーっと見ていてもわからないし、「鳥は感情を表しているだけで言葉は持っていない」と思いながら観察したら、そう見えてしまう。
—先入観が見え方を変えてしまう。
鈴木 本やインターネットで得た知識と、実際に自分が見たものの違いに気づくことが大事なんです。そのために必要なのが、自分にしかないインプットをつくること。僕の場合は、他の人がやっていない実験をする、他の人が見ていない部分までじっくり観察する。そうすると、自分だけの気づきが生まれてくる。これは研究じゃなくても同じで、日常生活の中にも仕事に生きてくる気づきが眠っていたりします。何も気づけないのは、その材料が足りず、解釈を導けないだけ。だから、インプットをとにかく増やすことだと思います。
—自分だけの気づきを信じて突き進むのは、勇気がいりませんか。
鈴木 もうね、「おもしろい」が勝っちゃうんです(笑)。研究に没頭しすぎて大学の次のポジションに応募するのを忘れていたこともありました。他人がつくった基準や、社会が多数決でつくった謎の基準に縛られて、自分にしかできないことに集中できなくなるのはもったいない。「自分にしかできないことをやってるんだもん」って吹っ切れればストレスないですし、一番楽しいですよ。
—「自分にしかできないことなんてない」と思う人は?
鈴木 それは気づいていないだけだと思います。やっぱり自分がやりたいこと=得意なことで、実は他の人にはない部分だったりする。何でもかんでもできるようにならなくていい。自分が好きで、自分にしかできないことを見つけたら、人はすごく強くなれるし、そこに絶対需要はあります。だって、鳥の言葉に需要があったんだもん。(ヒヒヒ、という鳥の鳴き声で空を見上げる)
—あ!
鈴木 エナガがオオタカを見つけて鳴いた!
—わかりました!警報っぽく聞こえました。
鈴木 それが鳥の感覚!これでもう空からの攻撃は避けられます。ね、こうして観察していれば、鳥の言葉もわかるようになるものなんですよ。
鈴木俊貴動物言語学者
1983年東京都生まれ。東京大学先端科学技術研究センター准教授。シジュウカラに言語能力を発見し、動物たちの言葉を解き明かす新しい学問、「動物言語学」を創設。著書に『僕には鳥の言葉がわかる』(小学館)など。
photo : Eriko Nemoto text : Midori Ohmuro


































