MUSIC 心地よい音楽を。
音楽家、音楽プロデューサー 冨田ラボ・冨田恵一さんが選ぶ土曜の朝と日曜の夜の音楽。vol.4June 27, 2025
June.27 – July.03, 2025
Saturday Morning

ペドロ・マルチンスがブラジルの天才若手ギタリストと呼ばれるようになってから久しい。1993年生まれ。16歳で初リーダー作をリリース、2015年にはモントルー・ギター・コンペティションにて優勝、現代ジャズ・ギターの巨匠カート・ローゼンウィンケルの名作『Caipi』を共同でプロデュースしたのは2017年のことだ。その辺りまでは頻繁に名前を見かけたが、ほぼすべてに“天才若手”であることが謳われていた。間違いのない評価ではあるが、この枕詞は音楽内容に紗をかけてしまう場合がある。
“天才若手”の枕詞なしのマルチンスに偶然再会したのは2022年、ルイス・コールのライブ動画であった。クレジットを見ぬまま、もともとはギター・パートのない曲に、効果的で硬質なリフを的確に絡めるギタリストに着目した——それがマルチンスだった。ソロプレイはもちろん技巧的にも素晴らしかったが、それ以上に、楽曲にとってのベストを念頭に置いたバッキングに、ギタリストに留まらない音楽家としての素養を見た。普通の“天才”を感じたのだ。
選曲はマルチンスのコンポーザー、音楽家としての資質にフォーカスした2023年作品。フィーチュアリング・ゲストのサンダーキャット、JD・ベックの個性を尊重しながら、マルチンスの音楽性が遺憾なく発揮されている。彼の音楽を聴いて、開放的な気分で週末を過ごしたいですね。
アルバム『Rádio Mistério』収録。
“天才若手”の枕詞なしのマルチンスに偶然再会したのは2022年、ルイス・コールのライブ動画であった。クレジットを見ぬまま、もともとはギター・パートのない曲に、効果的で硬質なリフを的確に絡めるギタリストに着目した——それがマルチンスだった。ソロプレイはもちろん技巧的にも素晴らしかったが、それ以上に、楽曲にとってのベストを念頭に置いたバッキングに、ギタリストに留まらない音楽家としての素養を見た。普通の“天才”を感じたのだ。
選曲はマルチンスのコンポーザー、音楽家としての資質にフォーカスした2023年作品。フィーチュアリング・ゲストのサンダーキャット、JD・ベックの個性を尊重しながら、マルチンスの音楽性が遺憾なく発揮されている。彼の音楽を聴いて、開放的な気分で週末を過ごしたいですね。
アルバム『Rádio Mistério』収録。
Sunday Night

ジャズ・コンポーザーの中でベストのひとりです。一般的知名度はそれほど高くないが、1996年6月1日に亡くなるまで、彼は多くのジャズミュージシャン、さらにはポップアーティストからも多大な信頼を得ていました。ピアニスト、コンポーザー、アレンジャー、プロデューサーとして、彼ほど周囲の信頼、そして尊敬を集めていた人物をあまり知りません。
“レス・イズ・モア”という言葉を聞かれたことがあると思います。“少ないことはより豊かである(ことを表現する)”といった意味で、音楽制作の場でも“無駄な多音が曲の真意を曇らせる”場面でときどき使われます。しかしこのスローガンに基づき、シンプル過ぎてつまらない作品が量産されているのも事実。本当に繊細なジャッジが必要なんですね。イメージとは裏腹に、この言葉は劇薬です。
グロルニックは特にコンポーズに置いて“レス・イズ・モア”を体現した音楽家です。本当にまったく無駄がない。加えて、作曲コンセプトが明確なので、ダイレクトにそれが伝わってきます。48歳没という若さでしたが、この上なく美しい曲を何曲も残してくれたことには感謝しなくてはなりません。
まずは選曲イントロの美しさをご堪能ください。続くマイケル・ブレッカーのサックスによるテーマ、ソロを含め、楽曲全体にわたり“レス・イズ・モア”が体現されています。そして、楽曲全体の“美”が30秒足らずのピアノ・イントロに凝縮されていることには驚かされます。
タイトルは「後悔」という意味ですが、この曲を聴くと、何があろうとやり直せる人間の強さと善性を信じたくなるんです。
アルバム『Hearts And Numbers』収録。
“レス・イズ・モア”という言葉を聞かれたことがあると思います。“少ないことはより豊かである(ことを表現する)”といった意味で、音楽制作の場でも“無駄な多音が曲の真意を曇らせる”場面でときどき使われます。しかしこのスローガンに基づき、シンプル過ぎてつまらない作品が量産されているのも事実。本当に繊細なジャッジが必要なんですね。イメージとは裏腹に、この言葉は劇薬です。
グロルニックは特にコンポーズに置いて“レス・イズ・モア”を体現した音楽家です。本当にまったく無駄がない。加えて、作曲コンセプトが明確なので、ダイレクトにそれが伝わってきます。48歳没という若さでしたが、この上なく美しい曲を何曲も残してくれたことには感謝しなくてはなりません。
まずは選曲イントロの美しさをご堪能ください。続くマイケル・ブレッカーのサックスによるテーマ、ソロを含め、楽曲全体にわたり“レス・イズ・モア”が体現されています。そして、楽曲全体の“美”が30秒足らずのピアノ・イントロに凝縮されていることには驚かされます。
タイトルは「後悔」という意味ですが、この曲を聴くと、何があろうとやり直せる人間の強さと善性を信じたくなるんです。
アルバム『Hearts And Numbers』収録。
音楽家、音楽プロデューサー 冨田ラボ・冨田恵一

冨田ラボとして、これまでに 7 枚のオリジナルアルバムを発表。最新オリジナルアルバムは『7+』は20 名の豪華アーティストが参加。 長年に渡り冨田恵一のソロプロジェクトとして親しまれてきたが、2025年 新メンバーとして、Arche、北村蕗、Santa、 ヨウという 4 人のボーカリストが加入。新体制後初の楽曲「the birds of four」をリリース。2025 年 4 月には今年 デビュー30 周年を迎える UA をフィーチャーした新曲「あはは feat. UA」をリリース。自身初の音楽書『ナイトフライ -録音芸術の作法と鑑賞法-』は横浜国立大学の入学試験問題に採用された。オフィシャルファンサイト「冨田ラボスタジオ」では、 日々の音楽生活が豊かになるオリジナルコンテンツ情報が満載。