音楽家 Meadowさんが選ぶ土曜の朝と日曜の夜の音楽。vol.1March 01, 2024

中学生の頃、CDコンポで朝のアラームをかけるのが流行っていた。思春期に聴くさまざまなポップスもその中にはあったけれど、朝の音楽にとりわけお気に入りだったのが、実家にあった Virginia Astrayのアルバムだった(坂本龍一プロデュースとは後々知ることになる)。アルバムの一曲目「Some Small Hope」 。やってくる休日土曜日の朝を心待ちに、金曜日の夜、眠る前にベッドの横のコンポにCDをセットする。翌朝。窓の外の朝日を感じながらあったかな布団の中で聴くあのイントロと彼女のウィスパーヴォイスは、至福以外の何ものでもなく、一人で浸る数分間、 広い世界へと連れ出してくれた。自分自身、わりと社会(学校)での顔があったと記憶しているけれど、彼女の声は不思議に本当の自分に寄り添ってくれるような気がした。思い返してみると、 様々な音楽に些細な瞬間を支えてもらっていたと気づく。大人になって音楽とともに生きている今の自分にも色鮮やかに影響を与えてくれる一曲。個人的には冬が深まった寒い朝に特に似合う一曲だと思っているが、淡い春の始まり、新しい場所や人との出会いとともに別れの季節でもある3月に、若いあの頃と今をつないでくれた気がする。共に歌うデヴィット・シルヴィアンの声もまた素晴らしい。アナログのA面を「morning」、B面を「afternoon」と名付けられたヴァージニアのインストのアルバム『From Gardens Where We Feel Secure』も最高に好きで本当に迷ったのだけど、特に思い入れの深い「Some Small Hope」を紹介させてもらいました。
アルバム『Hope In a Darkened Heart』収録。