Music

土曜の朝と日曜の夜の音楽。 今月の選曲家/ピーター・バラカン vol.3August 19, 2022

August.19 – August.25, 2022

Saturday Morning

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Title.
I Must Be In A Good Place Now
Artist.
Bobby Charles
知られざる名盤の類いです。1972年にルイジアナ州出身のソングライター、ボビー・チャールズは事情あってニューヨークの郊外に当たるウッドストックに滞在していました。そこで知り合ったミュージシャンは強者ばかりで、ザ・バンドのメンバーやユニークなギターを聞かせるエイモス・ギャレットなどは、疲れた神経を優しく撫でてくれるようなボビーのソフトでかつ骨のある歌声を見事に引き立てます。これを聞いているとまるで森林浴のような効果があって、毎年夏には必ず聞きたくなるレコードです。「きっといいところにいるに違いない」という素朴なタイトルも完璧です。
アルバム『Bobby Charles』収録。

Sunday Night

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Title.
Goodbye Pork Pie Hat
Artist.
Toots Thielemans Meets Rob Franken
これはつい最近発表されたアルバムからの曲ですが、録音は1982年です。ハーモニカの名人トゥッツ・ティールマンスはすでに世界的に有名でしたが、彼はさほど知られないオランダのエレクトリック・ピアノ奏者ロブ・フランケンと知り合って、感性が合うので何度も一緒にセッションをしていました。その多くがBGMとして録音したもので、アルバムとして発表されたことはなかったようですが、その落ち着いた演奏は意外なほどよくて、特に日曜日の夜などには最適かも知れません。チャールズ・ミンガスのこの名曲をハーモニカとフェンダー・ローズの涼しい響きで聴くと清涼剤になります。
アルバム『Toots Thielemans Meets Rob Franken Studio Sessions 1973-1983』収録。



&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場し、土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする人気連載をまとめた「&Music」シリーズの第2弾。 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全200曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付き。

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ブロードキャスター ピーター・バラカン

1951年ロンドン生まれ。ロンドン大学日本語学科を卒業後、1974年に音楽出版社の著作権業務に就くため来日。現在フリーのブロードキャスターとして活動、「バラカン・ビート」(インターFM)、「ウィークエンド・サンシャイン」(NHK-FM)、「ライフスタイル・ミュージアム」(東京FM)、「Going Back - 音楽と世界」(らふくしまFM)、「ジャパノロジー・プラス」(NHK BS1)などを担当。著書に『ピーター・バラカン式英語発音ルール』(駒草出版)、『Taking Stock どうしても手放せない21世紀の愛聴盤』(駒草出版)、『ロックの英詞を読む〜世界を変える歌』(集英社インターナショナル)、『わが青春のサウンドトラック』(光文社文庫)、『ピーター・バラカン音楽日記』(集英社インターナショナル)、『魂(ソウル)のゆくえ』(アルテスパブリッシング)、『ラジオのこちら側』(岩波新書、電子書籍だけ)、『ぼくが愛するロック 名盤240』(講談社+α文庫、電子書籍だけ)などがある。2014年から小規模の都市型音楽フェスティヴァル「Live Magic」のキュレイターを務める。

peterbarakan.net

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