MUSIC 心地よい音楽を。

土曜の朝と日曜の夜の音楽。 今月の選曲家/ピーター・バラカン vol.4August 26, 2022

August.26 – September.01, 2022

Saturday Morning

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Title.
Jarabi
Artist.
Toumani Diabate
爽やかな朝を迎える時のサウンドトラックとして、この曲が発表された1988年からずっと愛聴盤のままです。トゥマニ・ジャバテは西アフリカの音楽大国マリの出身で、コラというハープに近い澄んだ音色の弦楽器の名人です。代々この楽器を奏でる家に生まれ、この曲が入っているアルバム「カイラ」を作った時点で23歳でしたが、普段は歌の伴奏役を努めるコラの独演として初めての試みだったはずです。ゆったりとしたリズムを保ちながら即興のフレイズをどんどん展開し、多重録音の一切ない一人だけの演奏であることを言われなければ時々3人いるような錯覚に陥るほどの名演です。
アルバム『Kaira』収録。

Sunday Night

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Title.
Round Midnight
Artist.
Thelonious Monk
1ヶ月終わって、お疲れさまの気持ちでワインをちびちびたしなみながら、この曲がいいですね。セローニアス・マンクの全くユニークな和音の感覚が一度好きになったら他のピアニストは少し物足りなく響くことがあります。知らない人がいないようなこの「Round Midnight」はマンク本人も何回も録音した曲ですが、かつて友だちからアナログのシングル盤でもらったヴァージョン、1960年にサン・フランシスコのブラック・ホークというジャズ・クラブで演奏したものを聞きましょう。彼の良き相棒だったサックス奏者チャーリー・ラウスのソロもなかなか味わい深いです。
アルバム『At The BlackHawk』収録。



&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場し、土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする人気連載をまとめた「&Music」シリーズの第2弾。 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全200曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付き。

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ブロードキャスター ピーター・バラカン

1951年ロンドン生まれ。ロンドン大学日本語学科を卒業後、1974年に音楽出版社の著作権業務に就くため来日。現在フリーのブロードキャスターとして活動、「バラカン・ビート」(インターFM)、「ウィークエンド・サンシャイン」(NHK-FM)、「ライフスタイル・ミュージアム」(東京FM)、「Going Back - 音楽と世界」(らふくしまFM)、「ジャパノロジー・プラス」(NHK BS1)などを担当。著書に『ピーター・バラカン式英語発音ルール』(駒草出版)、『Taking Stock どうしても手放せない21世紀の愛聴盤』(駒草出版)、『ロックの英詞を読む〜世界を変える歌』(集英社インターナショナル)、『わが青春のサウンドトラック』(光文社文庫)、『ピーター・バラカン音楽日記』(集英社インターナショナル)、『魂(ソウル)のゆくえ』(アルテスパブリッシング)、『ラジオのこちら側』(岩波新書、電子書籍だけ)、『ぼくが愛するロック 名盤240』(講談社+α文庫、電子書籍だけ)などがある。2014年から小規模の都市型音楽フェスティヴァル「Live Magic」のキュレイターを務める。

peterbarakan.net

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