Music

土曜の朝と日曜の夜の音楽。 今月の選曲家/勝沼恭子+三宅純 vol.1January 03, 2020

January.03 – January.09, 2020

Saturday Morning

Title.
Abu Ata
Artist.
Morteza Mahjoubi
ゆっくりと時間をかけて覚醒したい土曜日の朝に、こんな不思議な響きはいかがでしょう? 弾き手の耳に聴こえている音階が、平均律ではなくクォータートーン(4分音)だとしたら、そんな風に調律してしまえばいいじゃないか、という潔い発想の即興演奏。もしキーが変わったらせっかくの調律もやり直しなのかなぁ、と要らぬ心配をしてるうちに、モスクの中でキリコの絵に出会ったような、影の長い迷路に引き込まれていく。「やはり世の中は不条理からできている」と確信してから起きあがる朝があっても良いのだ。(三宅純)
アルバム『Persian Piano 2』収録。

Sunday Night

Title.
Persian Love
Artist.
Holger Czukay
ペルシャのピアノで目覚めた週末は、ペルシャへの愛で締めくくる手もあるかもしれません。短波放送からサンプリングしたペルシャ(イランの古名ですね)の歌手のフレーズを、シンプルなビートに散りばめたコラージュ的な作品だが、様々な時代や国籍や宗教が交錯し、相入れぬ音色、音楽様式が絶妙に絡み合って、不思議な浮遊感を生んでいる。1979年発表……たしかにその時代を象徴する電子楽器の音が聞こえてくる。普通ならそれが自分のことのように気恥ずかしくなったりするのだけれど、この奇妙な配合の中では違和感がない。うーん、でもやっぱり……僕ならその音だけこっそり入れ替えちゃうかもなぁ。(三宅純)
アルバム『Movies』収録。



&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場し、土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする人気連載をまとめた「&Music」シリーズの第2弾。 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全200曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付き。

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ミュージシャン 勝沼 恭子 + 三宅 純

勝沼恭子
10 歳の時、在籍合唱団の選抜により、NHK みんなのうたにてレコードデビュー。15 歳で海外公演(ギリシャ)を経験する。昭和音楽大学短期大学部ピアノ科卒業と同時に CM 音楽制作会社に入社。音楽制作を学びつつ、ヴォーカリスト、ナレーターとして三宅純、菅野よう子、中川俊郎、近田春夫、鈴木慶一らの作品に参加。2019年に三宅純のプロデュースにより、ファーストアルバム『COLOMENA』をリリース。
http://www.kyokokatsunuma.com/

三宅純
日野皓正に見出され、バークリー音楽大学に学び、ジャズ・トランぺッターとして活動開始。作曲家としてピナ・バウシュ、ヴィム・ヴェンダース、フィリップ・ドゥクフレ、ロバート・ウィルソン、ジャン=ポール・グード、大友克洋らの作品に楽曲提供、異種交配を多用した個性的なサウンドが国際的賞賛を受ける。05年秋よりパリにも拠点を設け、アルバム『Stolen from strangers』『Lost Memory Theatre Act-1 』『Lost Memory Theatre Act-2』はヨーロッパの音楽誌で「音楽批評家大賞」「年間ベストアルバム賞」などを連続受賞。ヴィム・ヴェンダース監督作品『Pina』で 11 年ヨーロッパ映画賞のベスト・ドキュメンタリー賞受賞、12 年米・英のアカデミー賞にノミネート。CM、映画、アニメ、ドキュメンタリー、コンテンポラリーダンス等多くの作品に楽曲を提供。
https://www.junmiyake.com/

Photo by Bishin Jumonji

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