Music土曜の朝と日曜の夜の音楽。

January 06, 2017 今月の選曲家 寺尾紗穂

January.06 – January.12, 2017

Saturday Morning

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Title.
Vocalise, Op. 34, No. 14
Artist.
Natalie Dessay
中学から声楽を何年か習った。祖母の従妹のおばあちゃん先生。先生がコンサートのアンコールでたまにやるラフマニノフのこの曲が好きだった。ナタリーは少し先生の声質に似ているので。いつかカバーしてみたいが、ピアノ譜を見るとそんなに簡単ではない。自分なりに崩しつつ原曲の微妙な和音感を再現してみたいという欲が出る。弦での演奏は音圧が強く感じるが、先生のソプラノのヴォカリーズはもっとはかなげだった。声楽の発声ではなく、静かな、凛とした声で歌えたら素敵だろうと思う。澄み切った湖面の朝のように。
アルバム『The Miracle of the Voice』収録。

Sunday Night

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Title.
潜水艦の中のうみ
Artist.
マヒトゥ・ザ・ピーポー
マヒトゥの音楽には、闇とか底がよく出てくる。それは、光をはらむものでもあるんだけれども、彼の音楽の持つ引力の強さを考えると、やはり夜に聴くべき音楽かなと思う。アコースティックギターは静謐で、たきぎの燃える音がする。漆黒の空の下、音の、人間の、存在の悲しみがあふれだす。けれど、これは夜明けの歌でもある。だから私は闇の中で、いつも安心してマヒトゥの世界にたゆたうことができる。
アルバム『沈黙の次に美しい日々』収録。

シンガーソングライター、エッセイスト寺尾紗穂

1981年、東京生まれ。2006年に『愛し、日々』でソロデビュー。セカンドアルバム『御身』は坂本龍一、大貫妙子らから高い評価を得た。大林宣彦監督作品『転校生 さよならあなた』や、安藤桃子監督『0.5ミリ』(安藤サクラ主演)の主題歌を担当した他、 CM(資生堂、ユニクロ、出光など)、文筆の分野でも活躍中。著書に『評伝川島芳子 男装のエトランゼ』(文春新書)、『原発労働者』(講談社現代文庫)、『南洋と私』(リトルモア)などがある。現在は文芸誌「すばる」(集英社)で「あのころのパラオをさがして」、「ウェブ平凡」(平凡社)で「山姥のいるところ」、「ウェブ本の雑誌」(本の雑誌社)で「私の好きなわらべうた」、「ウェブ花椿」(資生堂)で「銀座時空散歩」のほか「高知新聞」でのエッセイ執筆など連載多数。最新アルバムは日本各地で歌い継がれてきた“わらべうた”をリアレンジした2016年リリースの『私の好きなわらべうた』。