伝統的な岩塩とハーブ療法をヒントに生まれたバスソルト。&Beauty キレイの理屈 〈クナイプ〉December 26, 2022

　入浴剤で知られる〈クナイプ〉、実は131年もの歴史を誇るブランドだということをご存じだろうか。創始者は神父でもあるセバスチャン・クナイプ。ドイツでは歴史の教科書に載るほどの人物で、ブランドともどもよく知られている。
　貧しい家庭に生まれたクナイプは、肺結核を患いながら神父の勉強を続け、これからというときに病に倒れる。そして、運動で温めた体を川の冷水で短時間冷やし、また温めるという、寒冷療法で病気を克服したとされている。その自然治癒力を高める「水療法」は「クナイプ療法」とも呼ばれ、広く知られるようになった。同時に取り入れていたのが多くのハーブ。「人は自然の一部で、自然に多くのものを与えられている」というホリスティックな考えを、当時から提唱していた。
　その後1891年に、彼の思いに共感した薬剤師レオナルド・オーバーホイザーと出会い、手軽に「クナイプ療法」を取り入れられる製品を開発したいという思いで〈クナイプ〉を誕生させた。
　日本には1985年に上陸、豊かな香りと芯から温まるバスソルトはたちまち人気に。その秘密は、クナイプ社指定の製塩所、ルイーゼンハル社の地下460ｍから汲み上げる古代海水からとれる岩塩にある。深い地層ゆえ現代の化学汚染の影響を受けておらず、ミネラルが豊富。伝統的な釜炊きで製塩された岩塩は結晶が大きく、ボコボコに穴があいているため、エッセンシャルオイルが染み込みやすく、香りも持続。ロングセラーの香り「ホップ＆バレリアン」は、安眠ハーブとも呼ばれているが、特にバレリアンは実はものすごいクセがある。これを独自のブレンド技術で素晴らしい香りに仕立てている。一見鮮やかすぎるバスソルトの色も、カラーセラピーの観点から心休まる色を選び、フードレベルの安全性に優れた色素を選んでいるという。すべてにおいてナチュラルな素材を最大限に生かし、製品化しているのである。
　自然環境への配慮も当時から当たり前で、マイクロプラスチックフリーにし、海水を汚さないために非常に厳しい自社基準を設定し、遵守。サステナビリティ活動の評価機関であるエコバディスの最高ランクであるプラチナを獲得している。
　クナイプ神父の信念はこれからも変わらず、製品を通しながら、受け継がれていくのだろう。

※この記事は、No. 110 2023年2月号「&Beauty」に掲載されたものです。