EVENT いま訪れたい場所、見たいもの。
森と木の文化を、もっと身近に。木工家・三谷龍二が監修する企画展「森と、暮らし」が、岐阜・飛騨高山『遊朴館 HIDA GALLERY』にて開催中。October 30, 2026

木の器を、森と暮らしを繋げる入り口に。
名古屋から特急列車ひだ号に揺られ、深い森の中を走ってたどり着いたのは、岐阜・飛騨高山。
訪ねたのは、この地域で100年以上続く木工家具メーカー〈飛騨産業〉。無垢の木を蒸して成形する高い木工技術・曲木の家具づくりで知られ、エンツォ・マーリや柳宗理など数々のデザイナーと協業してきた老舗である。その歴史を辿りながら、実際にオリジナルブランド〈HIDA〉をはじめとした家具に触れられる旗艦店『HIDA高山店 森と暮らしの編集室』やカフェのプロデュースなどを通じて、森や木とともにある豊かな暮らしを提案し続けている。
なかでも四半世紀にわたり、郷土の作家を紹介するギャラリーとして愛されてきたのが『遊朴館 HIDA GALLERY』。2025年にグランドオープンし新たに生まれ変わったこの場所では現在、木工家・三谷龍二さん監修による企画展が開催中だ。
3回目となる企画展の今年のテーマは「森と、暮らし」。木工の道で40年以上生きてきた三谷さんが木工を始めたきっかけは、小さな木の匙だったという。しかし今、「身の回りを見渡すと、天然の木のものはほとんど見当たらなくなってしまった。人の手によって手間暇かけた木工から感じられる時間の厚みや揺らぎが切り捨てられ、少しずつ森との関わりを失っているようです。小さな庭が遠い森の入り口であるように、木工作品や木の古道具が自然への入り口になると思っています。実際の木肌に触れることで、私たちが身体の深いところで自然を求めていたことを思い出して欲しい」と三谷さん。
三谷さんの呼びかけに応え、今回の企画展に参加するのは、愛知県・豊田市を拠点に木の器を制作している木工家の紀平佳丈さんと、名古屋市で骨董の店『喫茶 古参』を営む、古物商の古田隼人さん。三谷さんと紀平さんが、飛騨地域の多様な木材が集まる拠点『柳木材』で素材から選び制作した器と、古田さんが各地で選び抜いてきた古今東西の木の古道具が並ぶ。
三谷さんと紀平さんそれぞれの作品の違いも見どころ。三谷さんの作品に使用されているのは、飛騨の木材会館で敷台として使われてきた樹齢200年前後のミズメ材。広葉樹特有の綺麗な目の詰まりや、温かみのある色を活かし、ボウルなど暮らしの道具として再生されたもの。一方の紀平さんは、水に強く古くから桶などに使われてきたネズコと呼ばれる針葉樹を用いた生活道具を提案。実はネズコは、傷がつきやすかったり、反ってしまう可能性がある素材。少し気を配りながら使う必要があるからこそ、程よい緊張感が愛着を生んでいくのではないか、という考え方が、その背景にあるそうだ。
古道具を通じて、身近な素材から必要なものを生み出してきた知恵や工夫、人々の営みを辿ったのは古田さん。地域や時代を超えた古道具は、「人は木で何をつくってきたのか?」という問いとともに、木工の歩んできた歴史を幅広く見てほしいという思いで、選ばれたものばかり。
身近な森の恵みで、住まいや生活道具を作ってきた、木の文化が息づく日本。3人がそれぞれの思いで作り上げた展示は、その豊かさを改めて思い起こさせてくれる。
また、ギャラリーの1階にある『CAFE & TABLE 工』では、”食と工芸”が静かに交差する空間で過ごすひとときを。三谷さんがデザインした〈3r-h furniture〉の椅子に腰掛け、三谷さんの他にもガラス作家の安土草多さんなどこの地域で活躍する作り手の器で、飛騨の旬の食材を活かした食事を楽しめる。
自然を身近に感じる暮らしからは離れていても、手仕事や木工とのつながりが、遠くの森に想いを馳せる行為となる。それはまた、自分の心も安らげるきっかけにもなる。3名の作品に込められた小さな願いを感じられる期間に、「木工の聖地」とも呼べる飛騨高山への旅へ出かけてみてはどうだろうか。
Event Information「森と、暮らし」
会期:開催中。2026年11月15日(日)まで。
会場:遊朴館 HIDA GALLERY 2F ギャラリー(岐阜県高山市上一之町26)
時間:10:00〜18:00
会期中定休日: 水曜・第2木曜
入場料:無料
























































