LIFESTYLE ベターライフな暮らしのこと。
循環する暮らしに不可欠な居場所。古作なつみさんの築80年の古民家。October 15, 2026
限りあるスペースや、年月を経た古い家など、一見ネガティブにも捉えられる条件とどう向き合い、居心地のいい場所をつくりだすか。その創意工夫のプロセスも「整える」ことのひとつ。これまで本誌で取材してきた、狭さや古さにとらわれずにベターライフを楽しんでいる36組の実例集を一冊にまとめた2026年10月8日発売「住まいと心を、整える」MOOKより、絵描き・古作なつみさんの住まいを紹介します。
土に近い場所で営む、根源的な生活。
茶畑が広がる、山と川に囲まれた静岡県の浜松エリアに、築80年の古民家が佇む。母屋のほかに蔵や小屋もあり、昔ながらの農家のつくりを残している。ここに、夫と子ども3人と8年前に引っ越してきた古作なつみさん。それまでは東京で暮らしていたが、東日本大震災をきっかけに、消費するのではなく、生産する暮らしをしたいと、この地に移った。
「実家がここから20㎞ほど離れた場所にあるんです。本当は九州辺りでもいいと思っていたのですが、実家に身を置きながら物件探しをしているうちに、気づいたらここに。古民家ばかりを扱っている不動産屋さんに紹介してもらいました」
この家を見つけるまで20軒は内見を繰り返したという。決め手となったのは、まずはロケーション。
「街からもそれほど離れていないけれど、川が目の前にあって景色が広がっているのがすごくいいな、と思って。また、屋根や床が落ちていなくて、そのままでも住める環境だったのも大きいです」
古民家にこだわっていたわけではないが「中途半端な合板や新建材を使っていない物件を探していたら、この選択になりました」とのこと。
住める程度には壊れていなかったとはいえ、DIYをしながら改修もした。現在、土間になっている廊下と台所には床が張ってあったが、それを剥がして通り土間を復元。床の水平も取れていなかったのでジャッキアップして根太(ねだ)も増やした。さらに、二間を残して、畳をフローリングに。2023年には点検口からしか入れなかった屋根裏の養蚕部屋を生活できる空間に作り替えた。建具も大工にもらったり、蔵にあったものを活用して、だんだんと自分たちらしい家へ。台所のカラフルなタイルも蔵に残っていたものを洗って色別に分け、自分たちで張ったという。
「目の前に畑があるので作物を育て、果樹も植え、循環する生活も徐々に形になってきました。井戸も復活させたし、ここでは春夏秋冬ごとにやるべきことがたくさんあるんです」
そんな古作さんの根源的な暮らしを、代々、大切にされてきた痕跡が残る家が、どっしりと支えている。


古作なつみ絵描き
〈hopename おなま絵〉の屋号で活動するほか、身近な自然物や漂流物を使って文字や顔を作る〝かおをみつける〞ワークショップを各地で開催。
photo : Ayumi Yamamoto edit & text : Wakako Miyake









































