〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、寺社仏閣の風景

涼しげな小川を写す、寒天の一皿。
―賀茂別雷神社 (上賀茂神社) 水面―〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、寺社仏閣の風景 vol.18August 27, 2023

〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、自社仏閣の風景
〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、自社仏閣の風景
京都で和菓子を制作する〈御菓子丸〉が、四季折々の寺社仏閣の風景を、独創的な菓子と文とで表現。京都の風景に思いを馳せたくなる、美しい一皿を紹介します。
賀茂別雷神社 上賀茂神社 水面 御菓子丸

賀茂別雷神社(上賀茂神社)
水面(みなも)

 

 賀茂別雷神社、通称上賀茂神社は、鴨川デルタからさらに賀茂川沿いを上がった、京都市内でも北のエリアに位置する。世界文化遺産としても名高く、たくさんの観光客が訪れる神社だ。
 時には白無垢姿の花嫁や、七五三の子どもの姿も見られ、境内の白砂の輝きがハレの人々を一層眩しく照らす。一方で、近隣の大学生の駐輪場になっていたり、夏には地元の子どもたちが小川のほとりで涼む姿も見られたりと、地域の人々の日常に欠かせない場所でもある。生い茂る木々が影を作り、夏の日差しから逃れられるこの小川。さらさらと流れる川底には石が転がっており、その影響を受けて水面が乱反射し、美しく輝く。そして、川の水はとても冷たくて気持ちが良いのだ。
 まだ暑さの残るこの時季に、小川を写した寒天菓子を作ることにした。川を覆う木々の香りを閉じ込めた透明の寒天の下に、川底を想起させる黒糖の寒天。とても柔らかく仕上げた寒天菓子は、冷たく冷やして食べると、まるで小川の水を口に含んでいるかのようだ。景色を食べたいという思いからまた、新たな菓子が生まれた。

『賀茂別雷神社(上賀茂神社)』京都市北区上賀茂本山339 ☎075-781-0011 参拝5時30分〜17時、楼門・授与所8時〜16時45分 無休

photo : Yoshiko Watanabe
*『アンドプレミアム』2023年10月号より。


和菓子作家 杉山早陽子

1983年三重県生まれ。老舗和菓子店での修業を経て、2006年から和菓子ユニット〈日菓〉として活躍。2014年から〈御菓子丸〉を主宰。

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