〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、寺社仏閣の風景

由岐神社熱の味〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、寺社仏閣の風景 vol.11October 19, 2022

〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、自社仏閣の風景
〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、自社仏閣の風景
京都で和菓子の制作する〈御菓子丸〉が、四季折々の寺社仏閣の風景を、独創的な菓子と文とで表現。京都の風景に思いを馳せたくなる、美しい一皿を紹介します。
由岐神社 熱の味 御菓子丸

由岐神社
熱の味

 

 京都三大奇祭の一つに数えられる鞍馬の火祭。独特な風習を残すことから〝奇祭〞と呼ばれるそうだ。私が最後にこの祭りを訪れたのはもう随分と前だが、今でも「サイレイヤ、サイリョウ」というかけ声とともに、大きな松明(たいまつ)が火の粉を散らしながら、狭い集落を進んでいく様を鮮明に思い出せる。他の祭りにはない熱気と、この土地に深く根付いていることが感じられる体験だった。
 火の温度と人々の熱気が交わり、熱くなっていくこの祭りにふさわしいお菓子を想像したとき、どうしても甘い味わいを作ることに違和感を覚えた。代わりに思い出したのは英語の”hot”という単語。熱いときにも辛いときにも使われる”hot”。辛味から火の温度を連想させる味わいが頭に浮かんだ。固めた餅をスライスし、水分を飛ばすために乾燥させる。それを油で揚げ、仕上げに唐辛子、胡椒、塩で”hot”な味わいを表現する。出来上がったあられはどこか火を感じる見た目にも仕上がり、そして、食べると水が欲しくなるほどに舌の温度が上がる。このあられを片手に、火祭を味わってみたいと思った。

「鞍馬の火祭」は毎年10月22日開催。▷『由岐神社』 京都市左京区鞍馬本町1073 ☎075-741-1670 拝観自由 授与所9時〜15時頃(季節で変動)

photo : Yoshiko Watanabe
*『アンドプレミアム』2022年11月号より。


和菓子作家 杉山早陽子

1983年三重県生まれ。老舗和菓子店での修業を経て、2006年から和菓子ユニット〈日菓〉として活躍。2014年から〈御菓子丸〉を主宰。

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